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先ほど危険地帯へ行こうとしていた少女が「ヤバイやばい…」といいながら気絶した。髪の毛の色がローズゴールドから水色の髪の毛に変わる謎現象も起こった。いや、魔法か?結局髪の毛を両手でぐしゃぐしゃにしながら気絶したおかげで、床には少し切れた髪の毛が散乱している。途中止めようとして手を伸ばしたが、その後すぐに気絶してしまった。
「アルバブレッド、何があった」
門警備隊統括のアンケリセンさんだ。黒茶色の髪の毛に透き通った茶色の目。一応女性だがまあ、誰もそんなことを気にはしない。彼女は椅子で気絶している。そこにアンケリセンさんは手を伸ばし、彼女の状態を確認する。
「ブレッド…この子をお前に任せていいか?」
彼女が私のことをブレッドと呼ぶときはたいていが私的要件だ。まあ、今回は違うだろうが。
「私はご自身で面倒を見ると言い出すと思っていましたが」
「昔はそうしたかもしれないが、今は立場が立場だ。お前なら抜けても安心して任せられるし、お前の班は優秀だ。お前がいなくても安心できるやつらしかいない」
「褒められてるのか、いらないといわれているのか」
「褒めているだろう、お前が優秀だから下についた者たちもお前を見習い、盗んで成長した。いいことじゃないか」
「そうですね」
「アルバブレッド、では、現時刻をもって外壁警備班四班隊長の任を一時解任。この事情不明の少女の保護及び情報収集に当たれ」
「かしこまりました」
こうして俺は彼女の面倒を見ることになったのだ。
「外壁警備班4班に通達してくれ、隊長は一時的に解任、副隊長と補佐が一時的に指揮を取るようにっと」
「かしこまりました」
部屋の外でアンケリセンさんは指示を出している。俺は各部屋に流れている水路から水を桶に汲んで彼女の顔をふく。彼女が魔法で見た目を偽っていた可能性がある以上、他のことも偽っていた可能性もある。少しは警戒しておいた方がいいだろう。
部屋の扉を2回ノックした音が聞こえた。
「ブレッド、部屋はゲスト用の三三室だ。私以外に手を出すなよ?」
「あなたにも手は出したことないのですが」
「冗談ぐらいたまには乗ってくれ」
「あなたの言うこと半分は冗談にならなかったでしょう」
そう言うと彼女はちょっとむすっとした顔で出ていった。
さてと彼女を運ぶために布を取りに行く。二つ隣の部屋の倉庫においてあるはずだ。こんな服装の子を村の中で担いで運ぶのはさすがに変な目で見られかねない。というより他の人たちの今後の任務に支障が出たら困る。さすがにそこまで愚かな奴はいないかもしれないが。
「なんでもいいか」
結局ほこりっぽくなければなんでもいいので日に焼かれ黄色くなったぼろ布を持っていく。
部屋に戻り彼女を顔だけ出してぐるぐる巻きにして担いで運ぶ。
そのまま言われたゲストルームの三三室の椅子にすわらせる。ベットに寝かせようと思ったが彼女を蹴り飛ばし足り、吐いたりしているわけだし、何日風呂に入っていないかわからない。なので部屋備え付けの水浴び場で洗うことにした。
結論を言えば、肌着なんてなかった。着てすらいなかったのだ。ただ、肌も足も出会った時より傷が少ないように見えた。しかも足に怪我があった場所があったのだが洗い終わるころには治っていた。これも魔法なのか?不明な点が多すぎる。洗ってる間も彼女は意識を戻さなかった。しっかりと体を水で流し、ゲストルーム御用達の石鹸で頭を洗う。こちらも先ほどのけがはなかった。あんなに頭を掻きむしっていたのに頭皮はとてもきれいだった。にしても、きれいな…やめよう。
しっかりとふき取って彼女をベットへ寝かせる。ゲストルームの使用人を呼ぶ紐が机のそばに備え付けられているのでそれを二回引っ張る。十数秒でし使用人がドアをの二回ノックしてくる。
「お呼びでしょうか」
こちらの許可がない限り入ってきたりはしない。
「事情は聴いているか?」
「はい、先ほど」
「わかった。とりあえず軽い食事を半人前と普通の食事を一人前。机まで持ってきてくれないか」
「かしこまりました。机までお持ちします。十五分ほどお待ちください」
そういって使用人は部屋を離れていく。
俺に課せられた任務は『保護及び観察、可能であれば情報収集』というものだ。現状保護及び観察はできても気絶する前の彼女の状況を見ると情報収集は難しいかもしれない。起きた時の彼女の状況次第になる。
結局その日は彼女は起きることはなく頼んだ食事は自分で全部食べた。ついでに部屋の外の廊下と窓側に警備兵の配置がされた。
翌日昼になるころ彼女は突然目覚めた。無表情で上半身をベットから起こし、そのまま周囲の状況確認を行い始めた。といってもベットの上で周囲を見渡しているだけだが。
「大丈夫か?とりあえず水だ」
彼女は水を受け取って無表情のままコップを見つめながら言った、「ありがとう」と。
彼女が水をゆっくりと飲みほして私に聞いてきた。
「私はどうしたんですか?」
「さあな、いきなり頭ぐちゃぐちゃにしながら叫んで気絶した」
「そう…ですか」
彼女は私の返答を聞いてそれしか返事を返さない。さっきから飲み干したコップを手で持ったまま視線を離さない。「コップあずかろうか?」と聞いても「このままで」と返ってくるし「継ぎ足そうか?」と聞いても同じだった。
「とりあえず何か食べようか、何がいい?この中から選んでくれ」
といってメニューの書かれた羊皮紙を渡す。それでもコップは右手からはなさい。
彼女は羊皮紙を見てこう言った。「平仮名とカタカナ、記号のみ」と。なんだそれ聞いたことがない。もし羊皮紙に使われている文字のことを言っているのなら、この国では基本的に国際標準言語表記の『コクサイヒョウジュンげんごヒョウ《国際標準言語表記》』と『コクサイヒョウジュンほじょげんごヒョウキ《国際標準補助言語表記》』に加え『コクサイヒョウジュンきごうげんごヒョウキ《国際標準記号表記》』を採用している。コレジシア国は基本的に国際基準を採用することで貿易などをスムーズに進めることを主としている。彼女はそうなると他国から来た可能性があるということだ。私の今の予想があっていればだが。
「軽いのってどれ」
「これとこれだ。あとこの『コアガリブのテイオンチョウリ_サラダ』ってのは胃にやさしいって話だな」
「じゃあ『コアガリブのテイオンチョウリ_サラダ』とパン二枚で」
「わかった」
そういうと使用人を呼んで注文する。三十分ほどかかるようだが。ついでに自分のも頼んでおいた。同じタイミングで持ってくるように伝えておいた。
「私は…なんで…」
「どうした」
いきなり彼女がいきなり独り言を始めた。その後十五分ぐらい自分に対する馬頭をずっと私にぎりぎり聞こえる声の大きさでしゃべっていた。何を話しかけても一切こっちに反応しない。触って止めようとも考えたが、前回触ったら刺激してしまったのかその後気絶してしまったので食事か来ても終わらなければ触って止める気でいた。
「どうしたんだお前、最初あったときあんなに元気だったのに。今は何というか、初任務で同期が全員目の前でひどい殺され方された新人よりひどい顔だぞ」
彼女は初めてここで、この部屋に来てから初めて俺の顔を見て答えてくれた。
「私の問題です。私が弱かったがために、私が過去の行いを悔いるがために抱えつ続けて、私が自身の失態を繰り返し、恐れ、改善できずに迷惑をかけ、痛みや死という恐怖を経験し、私が私であろうとしたがために恐れを失い、それをすべて抱えたまま恐怖や恐れという感情というものを取り戻したがゆえに自身の制御ができずに一時的におかしくなっただけです。だけどもう大丈夫です。ちゃんと気持ちの整理はできましたから」
そう彼女は言って、私に笑顔を見せてくれた。しかしそんなのは嘘だ。彼女はまだ気持ちの整理などできていない。彼女はまだ恐怖という感情を受け入れられていない。まるでひどい拷問を受け、手足をもがれ、行為の回復魔法で何度も再生され、完全に心を閉ざし、思考することをやめた囚人のように私は見えてしまった。
文章でうまく表現できないのどうしたらいいのでしょうか。ちゃんと調べたりはしているのですがそれでもやっぱり文章って難しいですね。