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おや? 鍛冶師の様子が?

「この俺様が、鍛冶ギルドのグランドマスター。

 ドヴォルバーク・タルフォードだ」



 そう自己紹介した彼はとてつもない筋肉をその身に宿した小柄な男、どこからどう見てもドワーフだ。

 いい感じの髭を生やし、堂々としたその立ち振る舞いはまさに貫禄を感じさせる。

 鍛冶ギルドの長にして、このゲームでは錬金術ギルドのグランドマスターと双璧をなす最高の制作職の片方。

 ドヴォルバーク・タルフォード、鍛冶師のクラスはカグヤ曰く963という伝説級の人物だ。



「お久しぶりです、ドウォルさん。

 ここの支配人をさせて頂いているカグヤです」

「初めましてだな、俺はここのオーナーだ。

 好きに呼んでくれて構わん」

「おめぇがチーフォスの倅の言ってたバケモンか……」



 俺が仮面越しに適当にクール系を気取って挨拶をすると、目の前の男は俺をジーッと鋭い目付きで睨み付けた。



「ほう? おお……すげぇなお前さん。

 この俺様が逆立ちしても勝てそうにねぇ相手はこれで3度目だぜ」

「強さを測るスキルでも持っているのか?」

「ドヴォルさんは『王眼』という魔眼を持っていまして、未来が見えるらしいです」

「未来が見えるか……」



 その魔眼超欲しいんだが。

 戦闘でそんな魔眼があればほぼ100%勝てるし、戦闘以外でももちろん色々と役に立つ。

 カジノとかに入ったらマジで無双できそうな能力だ。



「おうよ! まあ、制限も多いんだがこの魔眼があれば実際に戦わなくても相手の強さが分かるんだぜ? 

 しかも実際に戦ったわけじゃねぇって事は何回でもチャレンジできる。

 つまりはほんの僅かでも勝てる可能性がありゃあ100%勝てる能力だ」



 なんだそのチート能力。

 いや、たしかにそうかもしれない。

 1秒でも先の未来が見えるのであれば相手に勝つことなんか容易いだろう。



「先程の間に一体何回試したんだ?」

「1024回、その全てにおいてお前さんの勝ちだ」

「当然です、オーナーは最強ですから」

「よし決めた、この俺様がここの専属鍛冶師になってやるぜ」

「んん!?」



 え! 

 マジで!? 

 最強の鍛冶師が専属になってくれんの!? 



「それだけ徒手空拳ができりゃ、お前さんには武器は要らねぇな? 

 ガントレットとレギンス、ついでにその仮面とローブももっといい奴を作ってやるぜ。

 雇用条件は諸々の費用の代金として頭に30万ガルン、あとはそうだな……お前さんが持ってるはずの『ワニの宝玉』と『白蛇の魔眼』それと、月にそこの嬢ちゃんと同額ありゃあいい」



 30万ガルン、3億円。

 ……雇うか。

 雇おうか。

 そうするか……。



 たしかに3億円はデカいが、100%ここを逃したら手に入らない人材だ。

 間違いなく値段以上の働きはしてくれる筈だし、今の俺は地球とは違ってかなりのレベルな大富豪だ。

 ここは雇っておくべきだろう。



「分かった、雇おう」

「はっ、さすがは大金持ちだな」



 [ポーン]

『ドヴォルバーク・タルフォードが極東商会に雇用を申し出でいます』

 ______________


 契約形態:終身雇用

 雇用形態:正社員

 業務内容:鍛冶に関する業務

 出勤休日:週5日勤務、土日は休みとする。

 勤務時間:9時~18時まで(内休憩1時間を含む)

 基本賃金:月5000ガルン

(初月は契約初めにこれとは別に30万ガルンと『ワニの宝玉』、『白蛇の魔眼』が必要)


 [YES/NO]

 ______________



 YESだ。

『雇用契約が完了しました!』


「これから色々とよろしくな」

「ああ、こちらこそ頼むぜ」

「それで、鍛冶ギルドの総本部にあるドヴォルさんの工房はどうするんですか?」

「ん? もちろんこっちに引っ越すに決まってるだろ。

 あれを引っ越すためにこんな多額の費用が必要なんだぜ?」



 ああ、それで3億円か。

 って、この世界で引越しに3億かかる工房ってどんな工房だよ!? 

 この世界には引越しというシステムも当然の如く用意してあり、それを使えば楽に引っ越す事ができる。

 宿屋を建てる時や引っ越す時には、建築の神である『トウ・フー・ジュタク』という神に金銭を捧げる事で家を建ててもらっているという設定らしく、基本的にボタン1つで家が達し、家ごと丸っと引っ越しが完了する。

 トウ・フー・ジュタク、豆腐住宅……相変わらずひっどい名前である。

 家を建てるにはそれなりの金銭が必要になるのだが、引っ越しは建てるのに使用した金銭の0.5%で済む。

 つまりは1000万円の家を買えば5万円で家ごと引っ越せるのだ。



 引越しに3億円使う工房、つまりは600億円、6000万ガルン。

 転移の広場が6個も買えるとかどんな工房だよ!? 



「早速引越しするが横の土地貰っても別に構わねぇよな?」

「別に構わんぞ」



 俺はこの宿屋を作る時に少し多めに土地を買い取ってあり、現実では左隣がただの仮設倉庫と化している。

 ちゃんとした倉庫もあるし、殆ど使われていないので完全に無駄スペースという訳だ。



 善は急げと言わんばかりに、早速仮設してある倉庫とその中の物を本倉庫へと移すとドヴォルバークは引っ越しの準備を始めた。

 準備とは言ってもシステムコンソールを出して画面を表示するだけなのだが。



「じゃあ引っ越すぜ?」

「やってくれ」



 彼がボタンを押すと、そこそこの工房がどこからともなくPON! と現れた。

 家ごとの引っ越しが一瞬で終わるとかまさに神の力と言った感じだ。

 だが、見た感じでは到底600億円もする工房には見えない。



「これ本当に引越しに30万ガルンもかかるのか?」

「おうよ、まあ、正確には29万8996ガルンだがな。

 端数は負けてくれるんだろ?」

「それはいいんだが、これのどこに6000万ガルンも掛かったんだ?」

「はっ、問題は中だぜ。外見なんぞ所詮は飾りだからよ」



 そう自信満々に言うドヴォルバークの後をカグヤと一緒について行くと中は2点を覗き普通の工房といった感じだった。

 まさにアニメや漫画で見た鍛冶師の工房だ。

 奥にある炉と金床が【アルトロステ鋼】で出来ていなければだが。



 アルトロステ鋼とはこのゲームにおける最強の金属であると神変態が明言している金属だ。

 特徴的な少し青みがかった綺麗な緑色の金属光沢を放った物質であり、破壊不能という特性を持つ。

 設定上の融点15万1224.182K、覚え方は『1番コイツ強いヤツ』だ。



「か、加工できたのかソレ……」



 α版の時はゲーム初期頃のイベントで一度だけ【アルトロステ鋼の塊】というアイテムが登場し、それを取り合って戦う大規模PVPイベントはかなりの人が熱狂して取り組んだ。

 ゲームの終盤に全プレイヤーVS変態☆紳士という状態になり、彼が参加して敗者となった数少ないものの一つだ。

 戦っている間に盗賊系のスキルでを奪われたらしく、【アルトロステ鋼の塊】入手したプレイヤーは加工して最強の武器を手に入れれ、一気に上位プレイヤーの仲間入り…………かと思われた。

 しかし、残念ながらアルトロステ鋼は素材アイテムのタグが付いていながらも、どんだけ頑張っても加工できなかったらしい。



「まあ、少しズルだがな。

 素材だけ用意してそれを使って家を建ててやればあら不思議ってな。

 究極の金属だろうがなんだろうがこの方法を使えばあらかた加工できるってもんよ。

 本物の神様には神話級の金属も叶わねぇってな」



 すげぇな。

 まさかこんな方法があるなんて思い持つかなかった。

 材料も何もかも基本的に不要で金さえあれば家がポンと出てくるので素材を持ち込むなんてことを考えた事もなかった。



「もしかして、この方法を使えばアルトロステ鋼の剣でも作れるのか?」

「いや、無理だ。 壁や床と同じで動かせねぇ固定アイテムになっちまう。

 だが、この金床とコイツと俺様、3つが合わされば加工できるぜ?」



 そう言って取り出したのは緋色に輝く赤い金槌。

 何かバチバチとしたオーラがそのハンマーから迸っており、見るからに凄そうなアイテムだ。

 ハンマー、バチバチ、雷、雷神、ミョルニル……うん、あれだな。



全金を工む神王の鎚ワールドエンド・ファンターシェ……さすがドヴォルさんですね」

「ん? わーる、なんだ? 

 100%ミョルニルだと思ってたんだが……」

「戦鎚と金鎚を一緒にするんじゃねぇぞ。

 こいつは代々世界で最も鍛冶の上手い奴のみが使う事を許された、全金を工む神王の鎚ワールドエンド・ファンターシェ、まあ、どんな金属でも加工することができるという神の金鎚だ」



 ワールドエンド・ファンターシェ。

 幻想世界の果て、もしくは幻想世界の終わりか? 

 名前を聞く限りこれを手に入れる事自体が1つのエンドコンテンツみたいな感じがする。

 本当にどんな金属でも加工できるのならば、鍛冶師ならば誰もがこれを手にすることを夢見るレベルのアイテムな事は間違いないだろう。



「それとその金槌があればなんでも加工できるのか?」

「いや、欲を言えばアンビル・オブ・ジ・アンリミテッドが欲しいな」



 おお、出たぞ『アンリミテッド』シリーズ。

 あのクビナシの仮面しか見た事は無いが、恐らく破壊不能でかなりのスペックを誇る金床(アンビル)なのだろう。

 あのクビナシの仮面もステータスが下げられてあれだったしな。



「分かった、そのうち見つけてきてやる」

「おお、さすがお前さんだな。

 まあ、今のこの設備でもアルトロステ鋼程度なら加工できるぜ? だが、今の俺様にできるのはせいぜいSランク止まりだと思ってくれ。

 この俺様の見立てならお前さんなら直ぐにSSランクが必要な領域に辿り着く筈だ、そういった時に必要なのが最強の金床ってわけだ」



 なるほど、ってSランクアイテムが作れるなら大丈夫じゃないか? 

 今の所、俺が必要なのはガントレットとレギンスくらいのものだ。

 それさえあれば火力も速度も段違いになってくる。



「おっといけねぇ、早速俺様はガントレット作りに勤しむが何か要望はあるか?」

「そうだな、火力重視でAGIかSTRに補正が掛かるとなお良いって感じか?」



 VITとかDEFとか欠片もいらないからな。

 俺のHP的に考えて必要なものはそう言った装甲じゃあないからな。

 死ぬ危険性が無い以上は速さと筋力があればいい。



「よーし、分かったぜ。 まあ、3日ほど待ってろ驚くものを見せてやるぜ」



 ドヴォルバークはそういうと、早速仕事に取り掛かるのだった。

評価を、感想を、どなた……か…………(ガクッ)

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