パーティー
俺は地面の上で正座をさせられていた。
何故かって?
そりゃあミオンを弄りすぎたせいだ。
「というわけで俺のミオンに関する発言は全て嘘でミオンは19歳の成人、つまりは合法ロリというわけだ」
「そうです、私はこれでも成人なんです」
「でも信じられねぇよな、どこからどう見ても……おっと」
ミオンが全力で眼力を込めて睨みつけると、剣士の少年はそこから先を言うのを辞めた。
うん、いい判断だ。
睨まれてもジト目が可愛いだけなのだが。
しばらくは小さいとかロリとか幼女とか全部禁句だなこれは……。
「えー、うぉっほん。改めてじゃあこっちも自己紹介を。
まず俺が剣士役件、盾役件、パーティリーダーのレンです。
リアルでは高校ニ年生で趣味はネトゲって感じです」
黒髪黒目のイケメン剣士、恐らくリアルからそのまま持ってきたんだろうって感じがバリバリする日本人顔だ。
装備は初期装備を店売りの剣に変えて盾を付けた感じで、この序盤ではありふれたスタイルだ。
絶対にもてるなこいつ。
「俺はフォースハルト、レンと同じ高校の一年生で後衛を担当してます。
趣味はネトゲと料理と読書、弓道部所属で使い慣れてるからVR版では弓使いを選択しました」
もう1人の方は金髪の男で、キャラメイクかα版の方から取ってきたのだろう。
弓道部だからといって弓を使う必要はないのだが、慣れている分だけプレイヤースキルが高くなりやすい。
「私はルアって言います。
このパーティのシーフになる予定ですが、今はただの短剣使いです。
同じ高校の二年生で、趣味はネトゲ?」
ミオンに話してた短剣の少女。
背は低い方なのだが、ミオンよりは当然高い。
黒髪黒目で、日本人顔なのでこちらもリアルから持ってきた可能性が高い。
容姿はそれなりに整っている方で、可愛らしい系の少女だ。
「か、カオリです。 同じ高校の一年生で、趣味はゲームです」
最後のは簡潔な自己紹介。
銀髪のロングと緑色の瞳をしたプリーストの少女で、パーティの回復役を務めている。
こっちは可愛いと言うよりも綺麗という言葉が似合う感じの少女だ。
若いとは思っていたが全員同じ高校のメンバーか……それも男女のペア2つ。
間違いなくリアルは充実してる系だな。
「魔法使いのミオンです」
「さっきも言ったが俺はシオン、育神流合気柔術の師範、というのは嘘でただのゲーマーだな」
「お兄さんほんとにただのゲーマーなの?
さっきの凄かったよ?」
「まあ、それなりに強いゲーマーってところか?」
[ぽぽぽーんっ]
『第一層、南エリアのボスが討伐されました!
討伐したパーティは「変態☆紳士と愉快な仲間たち」、「北風と南風」、「殴り呪い師連合」、「しばぞう特攻隊」、「絶剣」、「解放者達をぶっ飛ばし隊」、「邪神教異端審問会」、「聖神教を広めようの会」、「アサバコーポレーション」、「ソピアちゃんをぺろぺろし隊」、「貧乳万歳」、「伝説の情報屋の伝説」、「肉体言語研究会」、「魔術師ギルドを作ろう会」、「魔術師ギルドを作ろう会つー」、「たぴおかみるくてい」以上の16パーティです』
あれ? 南エリアの攻略って明日じゃなかったけ?
というかパーティの名前酷いのがいくつかあるんだが……。
解放者達をぶっ飛ばし隊はさっさとあいつらを吹っ飛ばしてくれると助かる。
「あれれ? パーティ名って放送されない仕様になったんじゃないの?」
「あ、本当ですね。 東の人は放送されてなかったですよね」
「確か東の聖人ってソロなんだろ?
ならパーティだけが表示される仕様なんじゃないか?」
「ん? βの時だと変態さんが単身クリアした時にも放送されたって聞いたぞ」
レイドならパーティ選べないとかそういう事もないだろうし、Wikiにも確か選べるって書いてあった気がする。
「あれは放送するかどうかっていうのは選べるんだぞ?」
「さすがお兄さん、詳しいね」
「そういえば、極東の聖人さんってどんな人なんでしょうか?」
「普通にβテスターじゃないのか?
未経験であのスピードは無理だろ」
「βテスターじゃないみたいですよ」
「え? βテスターじゃないのかよ」
「情報屋の人がβテスター全員に聞いて回ったらしくて、βテスターじゃないみたいですよ」
「いや、よく何処にいるかも分からない1000人を訪ねて回っれたな……」
「βテスターじゃないならどんな人なんでしょうか?」
「お兄さん知ってたしない?」
「……」
うん、どう答えようか。
無難にはぐらかしても良いのだが、NPC考察でも投げてみるか。
「恐らくだが、ゲームマスターの神変態本人による演出だと思うな。
ほら、最近アニメやってた某デスゲームものでも一番強いプレイヤーがゲームマスターだったろ?」
「えと、自分で作ったゲームを自分で攻略するんですか?」
「んー、ミオンも横で人がやってるゲームを見てるだけってめっちゃやりたくなってくるだろ?
それにこのクオリティだからな、自分でもやらなければ明らかに損だろうよ」
「確かにそういう考察もあるよね。
でもそれなら商会とか作らないと思うし、解放者達に困ったりもしないんじゃないかな?」
おお、賢い。
これに対する反論とか無いんだよな。
適当に答えてみるか。
「……それも自分はプレイヤーですよっていう演出かもしれないだろ?
大多数の人がプレイヤーだと信じた時に『実はおいらが極東の聖人だお!』とか言ってラスボスとしてプレイヤー達を待ち受ける可能性も十分にある。
可能性は無限だから考えても仕方がないんだが、色々と考察するのって楽しいよな」
「そうだよね、情報も仮面とローブを身にまとった拳闘士って事しか分かってないし」
「あれ、拳闘士なのか? そんな情報あったか?」
「あ、レン! せっかくカマかけてみようとしたのに……」
うぉぉ、あっぶねぇ。
俺が疑われてたのか……全然気が付かなかった。
ありがとうレン、お前の事は忘れないぜ。
この隙にさっさと話をすげ替えるか。
「ああ、そうだお前ら魔法使いを一人パーティに入れるつもりは無いか?」
「え? もしかしてミオンさんのことですか?」
「見たところ外に出たばっかりであいつらに狙われたって感じだろ?
レベル帯も近いだろうし、明らかにレベル差がある俺と組んでいるよりは良いと思ってな」
「魔法の担当がいないので大歓迎ですが、シオンさんはどうされるんです?」
「んー、レベル差があるしな……俺はコーチ役かな?」
俺が参戦したらHPバーが減らないのバレるかもしれないしな。
とりあえず謎のゲーマーって感じで立ち回っとこうか。
育神流合気柔術の達人とかいう意味不明な設定よりはいいと思う。
「おお、コーチ役ですか。実際に体動かすゲームとか全然やらないですし、戦術とかも今は全く考えて無いんで助かります。
ミオンさんも、これからよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
「うし、とりあえずフレンド申請全員に送ったから登録してくれ。
HPバー見るために、俺もパーティには加入しとくが設定で経験値分配を切り分けてくれ」
「すいません、経験値分配設定ってどうやって切り分けるんですか?」
「α版と同じならパーティ、詳細設定、アイテム分配、経験値、個別設定で行けるはずだ」
少し教えてやると、できたみたいで6人パーティのできあがりだ。
パーティ名は『悲しみの向こう側』一体お前らに何があったんだ!?
「あ、あの……パーティ名変えません?
私、あのアニメ好きじゃなくて」
「えー、ダメなの?」
「お前のネーミングかよ……」
「こいつはそういうの好きなんですよね、この際ですから新しいのにしときましょうか?」
「まあ、とりあえずはこのままでいいだろ。
落ち着ける場所でゆっくりと考えればいいだろ」
「あの、レン君、MPも心許ないし一旦町まで帰らない、かな?」
「あ〜そうだな、俺も武器ヤバいし……シオンさん達もそれで良いです?」
「それで別にいいが、というかパーティなんだから敬語は無しにしないか?」
敬語は距離を開けるからな。
パーティで仲良くやっていくのなら敬語はやめておいた方がいいだろう。
「そうだよね、敬語とかいらないよね」
「ルアちゃんは敬語が苦手なだけじゃ……」
「あれ、バレてる?」
「とりあえず町まで戻るなら速く戻ろうか、時間は有限だしな」
□□
とりあえず全員で一旦宿に戻って三時に再集合という事にしたのだが、全員が全員とも極東商会の宿に泊まっているらしい。
かなり値段安く設定してるし、そりゃあ使えるものは使うか。
「なんか凄い人ですね」
「んー、極東の聖人の時も凄かったしこんな感じ普通じゃないかな?」
「これ、かなり迷惑だよな」
「転移可能な場所がここしか無いから仕方が無いといえば仕方がないんだがな」
「おい、帰ってきたぞ!!!」
人混みの中を宿に向かって歩いているとざわめきが大きくなり、何人かのプレイヤーが大きく声を上げた。
英雄の帰還である。
「俺はどこにでもいる変態、ただちょっと強くて雄々しいだけの変態だ。
遅漏くてすまんなお前ら!!!」
「「「うぉぉぉぉぉっ!」」」
変態☆紳士が拡声の魔石を使ってそう叫ぶと、大量の歓声が上がった。
ここからではあまりよく見えないが、先頭を歩いているのは男三人、女二人、オカマ一人のパーティ『変態☆紳士と愉快な仲間たち』だ。
今回は剣士1、槍1、盾1、魔法使い2、神官1のパーティみたいだ。
「やっぱり居ないか……」
俺の妹、【大聖堂】の2つ名を持つ神官の姿は見当たらなかった。
変態☆紳士と愉快な仲間たちにいないということは本格的にアイツはこの世界には来ていないのだろう。
「お兄さん、誰がいなかったの?」
「……大聖堂ユーネスだな、α版の方とパーティメンバー違うだろ?」
「ああ、そう言えば別人ですね」
「あれ? ミオンどこに行った?」
ふと気がつくと、人混みに飲まれたのかミオンがいなくなっていた。
しかも、小さいせいでどこにいるか全くわからん。
「おい、カオリもいないぞ」
「あれ? カオリもはぐれたのか」
「ほんとだ、手分けして探そっか?」
「いや、それだとさらにはぐれるだろ。
とりあえずメッセージ送って3時半までには喫茶店チョリチョリに集まるように送ったから俺らは固まって動くぞ」
あるよ、きっと評価も感想もあるんだよ!