004
「これより、一尾狐の扇と、九尾狐の紅葉の決闘を始める!」
「扇の要求は、この村での一ヶ月の睡眠、紅葉の身柄の要求。紅葉の要求は、この村から出ることである。それでは、距離を取りなさい。」
儂と九尾狐の紅葉は距離を取る。そして、
「始め!」
合図とともに一気に距離を詰めぶつかり合う。
「ただの狐では私に勝てないわよ!」
ぶつかったが、力は均衡する。
否、若干紅葉の方が押している。
ふむ、ノーマルの力じゃ勝てんの。九尾狐と、狐じゃ地力が違っているの。
一旦下がるか。
そう理解し、扇は紅葉の力を利用して退避する。
これは、二十世紀に確立した合気道の技術を用いて行なっている。
その技術を扇は、平安末期に会得していた。
急に力を流されて、驚きを表情に出すがすぐさま元に戻した紅葉。
「ふん、力も私が勝っているようね。」
あー、こやつは戦闘中に話しかけてくるやつか。いやじゃ。気が散るんじゃよ。
というか、よくあるけど、戦闘中ってどうやって会話してあるんじゃろうな?
儂にもできるかの?
「そうじゃのう。しかし、力も、といっておったが他には何も比べておらんぞ?」
ドヤッ!
意外とできるの。
しかし、力が強いから勝てる、という認識は愚かじゃな。
「力が強いから、私は勝てるわ。」
「相手の力が強いなら、弱めてしまえばよかろう。」
「なら、私はそれをさせる前にあなたを倒せばいいだけね。」
……たしかに!
紅葉はそういうと同時に、次は炎を纏いながら飛び込んでくる。
それに対して扇は、どう出る⁉︎
「いやいや、まてまて!これはおかしいじゃろ?そこは、やれるものならやってみなさい、とか言って儂にやらせるところじゃろ⁈」
……コロコロと、転がって避けていた。
じゃが、炎纏うならば人型になった方がよかろう?何故ならないのじゃ?わからんな。
紅葉は、器用にも攻撃をしながら、
「何故自分がやられた嫌なことをされなくてはならないの?私は、やられる前にやっつけろ精神で臨んでいるわ!」
と、応答。
コロコロと転がっていたせいで真っ黒になった扇は、態勢を立て直し
「たしかに!では儂も少しやろうかの。ではいくぞ。【我流結界:聖域】」
この結界術は、今まで数々の陰陽師に狙われ、撃退してきた扇だからできる技である。
この結界の効果は、指定した空間内にいる術者と指定したもの以外の、生物の力を術者が結界が発動している限り、吸収し続けるものだ。
前世ではよくやられたの。懐かしいのう。儂も力が有り余って仕方がないときに、吸収してもらいに行ったの。自分から見つかりに行って吸収してもらったのじゃが、五秒くらいで術者が死んでしまうのじゃよ。おかしな話じゃ。
これは扇の妖力が馬鹿げているだけである。
話を戻そう。この術を受けた紅葉は、驚愕に目を見開き、攻撃をやめた。
「この魔法は何⁈私に何をした⁈」
その場に座り込む紅葉、
「魔法?よくわからんな。しかしこの術の効果はなんとなくじゃがわかっておるのではないのか?」
「相手の魔力を吸収する魔法か…」
扇は笑顔で返す。
それでは、といい扇は
「【変化】」
人の姿になった。