003
「これより、一尾狐の扇と、九尾狐の紅葉の決闘を始める!」
「扇の要求は、この村での一ヶ月の睡眠、紅葉の身柄の要求。紅葉の要求は、この村から出ることである。それでは、距離を取りなさい。」
儂と九尾狐の紅葉は距離を取る。そして、
「始め!」
合図とともに一気に距離を詰めぶつかり合う。
あゝ何故このようなことになったのじゃ。
☆☆☆
何故こんなことになっているのか、説明しよう。
村に着いた扇は、
「おおやっと着いたの。もう、つけないかと思ったぞ。若干諦めておったぞ。あの忌々しい犬っころのお陰で寝不足なのじゃ。早く助けてもらって、寝るとしよう。」
と、言いなんの心配もせずに洞窟へ入ってしまった。
もう間違いはここから始まっていたのだ。
扇は十分に警戒していたはずだった、だか実際はほとんど無警戒だったわけだ。
何故ならその洞窟の入り口には、【侵入者探知】という魔法がかけられていた。
扇の前世では魔法の知識が皆無だったせい、というのもあるだろう。
しかし、微妙な違和感には気づけたはずだ。
それに気づかずに、中へ入ってしまった。
すると入った途端、入り口がふさがれて出られなくなってしまった。
「なんで閉じたのじゃ?もしかして今から自殺しようとしていたのかのう?これでは窒息死してしまうじゃろ。」
と言って、【我流神道:軻遇突智】を発動させた。
発動させたことで、入り口を塞いでいた土壁は溶けた。というか、蒸発した。
すると…こんな騒ぎがあれば、大量の九尾狐が出てくる。
「何者だ⁉︎」
「あっ、儂のことか?儂は扇じゃ。最近は犬っころのせいでまともに眠れておらん。じゃから、一ヶ月ほど寝かしてくれ。」
そして、図々しくも自分の要求を言ったのだ。
本来ならここで一斉攻撃を仕掛けて殺されるであろう。が、しかし
「お前は狐か。同胞同士で殺し合うのは愚行だ。だから、お前には決闘をしてもらう。」
「曲者ー!とかいって殺しに来ないのか。この世界は平和じゃのう。まぁ決闘くらいならしてもよかろう。殺さないように気をつけてやる。」
…もう一度言うが本来ならばもうとっくに、一斉攻撃をされているところである。
…しかし、残念なことに、ここの狐の攻撃は扇にほとんど効かないのだけれど。
「同胞だから生かしているものの…。お前は、狐だろう。」
「そうじゃのう。ここではな。」
「?ここでは?」
「気にするでない。こっちの話じゃ。」
「なんでもいいが、狐のお前にはこの村の狐と決闘させようと思ったが、我らを馬鹿にしたからお前には、この村の最強の九尾狐を当ててやろう!」
「そうか、わかった。早くしろ。儂は早く寝たいのじゃ。」
「ふん。いつまでその口が叩けるだろうかな?」
扇はそんな事は気にせずに、自分の欲求を言う。
「儂の要求はこの村での一ヶ月の睡眠と、儂が決闘する九尾狐をくれ。この二つじゃ。」
「いいだろう。この村の村長、紅桜の名において認めよう。[勝つことができたらな]。」
なんだか、勝つことができたらなところが強調されている気がしたが、扇は黙って頷いた。
☆☆☆
そして冒頭に戻るわけだ。
と、第三者視点で話してみたがの、儂ってなかなかなことを言っておったな。
直す気は無いがの。
決闘編は次回のお楽しみ!
じゃ!