義弟との出合い
次の日、再びロゼリアに会いに行った。
私は昨日と変わらず愛らしいロゼリアをにやにやと見ながらお姉ちゃんが必ず死亡フラグを消してあげるからねと心の中で語りかけた。
「リアナはマナーや勉学は問題ありませんか?」
「はい」
リアナは優秀みたいでマナーも勉強も現時点では全く苦ではない。
文字も日本語ではないがリアナとしての語学力もあるため本を読むのも全く問題ない。
「魔法学はまだですか?」
「数日後に鑑定のできる家庭教師の先生がいらっしゃるとお父様から聞きました。今から楽しみです」
一週間以内みたいだが勉学にマナーそれにプラスして魔法学を学ぶことになる。
魔法なんてテンションが上がっちゃうよね!
お母様は微笑みながら「頑張りなさい」と優しく声をかけてくれる。
ーこんな幸せ家族…守りたくなっちゃうよね。
「ロゼリアもお姉様を応援してくださいね」
私は小さくロゼリアに語りかける。ロゼリアは私と目が合うと満面の笑みを浮かべた。
ーはぁ…天使の微笑みよねぇ…。癒されるぅ。
しばらくロゼリアを眺めているとお母様の部屋のドアがノックされ「失礼してもよろしいでしょうか、奥様」とおそらくハロルドの声が聞こえた。
お母様はどうぞと彼を招き入れる。
ハロルドは入室するとお母様と私を見て礼をした。
「当主様がお戻りになりました。マリア様とリアナ様をお呼びでいらっしゃいます」
ー私も?
お母様は「わかったわ」と返答し、ロゼリアを近くにいた侍女に預け、私の手を取り「さあ、行きましょうか」とハロルドが開けたドアへ向かう。
ー一体なんだろう。
長い廊下を進み、ロココ調が美しいエントランスに向かう。
エントランスは広く玄関がなかなかに遠く感じる。
玄関にはお父様と私より小さくて薄汚れた赤色の髪に薄汚れた服の子供がいた。小ささもさることながら、髪も長く顔はよく見えなかった。
「ウォルター様お帰りなさいませ」
お母様がお父様に声をかける。
私もお母様に続き「お帰りなさいませ」とお父様に声をかける。
お父様は満面の笑みで私たちを見ると「ただいま」と嬉しそうに答えた。
「お父様、その子は?」
私は我慢できなくてお父様の横にいる子供のことを聞いた。
「ああ、昨日言っていたリアナの新しい弟だ」
ー早くない?えっ大分予定より早くない?
私の心の中は大パニックだが慌てた対応をして不和の原因になっては元も子もない。
私はお母様と繋いでいた手を外し、その子に向き合い手を伸ばし握手を求めながら
「私の名前はリアナ・コーラル・スコルプ。6歳。これからあなたの姉になるわ。仲良くしてね」
と挨拶をする。
しかしその子は長い前髪から見える大きな目で私を睨み付ける。
「仲良くなんかしない!!」
周りの空気が冷える。
「セヴィ!」とお父様が嗜めるように名前を呼ぶ。
ー野良猫みたいで可愛いぃ
「お父様大丈夫ですわ。きっと初めてきたばかりで警戒しているのよ」
「違うよ!お母さんのところに返して…お母さんに…会いたいよ…」
彼は泣き出しうずくまってしまった。
彼はまだ小さい。
急に母親から離され、知らない場所に連れていかれ虐待を受けまた知らない場所。
それは心が疲れてしまう。
私はそっとうずくまってしまった彼を抱き締めた。
一瞬びくりとしたが構わず抱き締める。
私は彼が泣き止むまで抱き締め続けた。
しばらくして静かになったなと思ったら彼は泣き疲れて寝ていた。
「お父様…」
「大丈夫、部屋に寝かせよう」
お父様は彼をお姫様抱っこのようにして持ち上げた。
ー何とか彼の寂しさをなくしてあげられないだろうか…。
何とも言えない気持ちで部屋へと向かうお父様の背中を見つめた。
「あの子が…寂しくないように私は何が出来るでしょうか…」
誰と言うわけではなくつい呟いてしまった。
「そうね、私たちには出きることは少ないかもしれない。時が解決してくれるかもしれない。それまで愛情をそそいであげたらいいのではないかしらね…」
とお母様が声をかけ私の手をそっととった。
その手は温かくて私も彼に家族の暖かさを与えようと心に誓った。