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【幕間】父の判断

長い廊下を靴の軽快な音が聞こえる。

靴の音の主であるウォルター・アガット・スコルプは先程娘と話したことを思い、妻であるマリア・フロスティ・スコルプの部屋へと向かう。


彼は娘の成長を感じていた。

熱を伴い1週間ほぼ意識がなく回復魔法が効かないと聞いた時は心臓が止まるかと思った。

無事に目を覚まし、後遺症もなく元気なリアナを見て安心した。

それからリアナは急に性格が大人のように落ち着いた。

リアナは元々大人しく優しい性格だったが、そこに子供にはない落ち着きが加わった。

本当はリアナには養子の話はするつもりではなかった。

しかし今のリアナを見ていると何となく話してしまう不思議な感覚に陥った。


「マリア、起きているかい?入っても大丈夫かい?」

ウォルターは妻の部屋をノックして問う。

「どうぞ」

ドア越しの声は少し籠っていたが彼の愛しい妻の声が入室を許可する。

ウォルターはドアを開け、マリアが娘を抱きながら座っている椅子へと向かう。

「ロゼリアは変わらず愛らしいねー」

デレデレと崩した笑顔でしゃがみロゼリアに視線を合わせる。

普段は公爵家当主としてキリッとしている彼だが娘と妻を前にするとただの家族バカなのである。

ロゼリアを優しく撫でる。

「マリアもお疲れ様」

「いえ、私もロゼリアを愛しておりますから苦ではありません」

マリアはロゼリアを見ながら微笑む。ロゼリアは眠くなったのか目を何度か擦ると寝息をたてはじめた。

マリアとウォルターは互いに目を合わせ幸せそうに微笑んだ。

マリアは側に仕えていた侍女を呼び、「ベッドへ」と小さい声で指示をしロゼリアを静かに侍女へ渡す。

侍女は慣れた手つきでロゼリアを抱きベッドのある部屋へと消えていった。

マリアはその姿を確認すると別の侍女へ紅茶を用意するように指示した。

ウォルターはマリアが座っていた隣の椅子へと腰かける。

「すまないね。疲れているのに」

「いえ、大丈夫です」

「実は話があってきたんだ」

「話ですか?」

「実は養子を取ろうと思う」

「養子…ですか?」

マリアは不安そうにウォルターを見つめる。

「マリアが大変な時にすまないと思っている」

「それは大丈夫なのですが…その子は…」

マリアは口をモゴモゴさせ少しだけ言いにくそうにウォルターを見つめる。

ウォルターは周りを見渡し、侍女が紅茶を目の前に置くのを確認したら侍女を全員下がらせるように指示する。

ウォルターは全員下がったのを確認しマリアと向き合い「ここだけの話にして欲しい」と再度話を始めた。

「実はその子は亡き父と現王の妹君のアンジェリカ様の庶子なのだ…」

「!?」

マリアは驚きが隠せないのか目を丸くしてウォルターを見る。

「現在、アンジェリカ様は…病に付しているためその子のことを養育出来ず、母上の元にいる状態だ。」

「それは…あまり良くない状態ですわね」

マリアは義理の母の気持ちも子供の状態も良くないだろうと考え、これは由々しき事態だと感じ取った。

「ウォルター様、私は大丈夫です。速やかにその子を引き取ることをお願いいたします」

マリアは聡明で優しい女性だとわかっていたウォルターだったが、そう返事が来たとき安堵と嬉しさが胸をすく。

「ありがとう、マリア。実は明日にでも一度、その子に会いに行こうと思っていたのだ。あまりにも状況が悪ければすぐにでも養子として迎えたいのだがかまわないだろうか?」

「もちろんです。ウォルター様の判断にお任せいたします」

ウォルターはマリアの手を取り甲にキスをした。

「ありがとう。我が愛しの妻」

二人は見つめあい微笑んだ。

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