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わずかな兆し

「お待たせいたしました。お父様」

食堂のドアをハロルドが開け、淑女の礼を取りお父様と向き合う。

お父様は穏やかな笑みを浮かべ「リアナ、待っていたよ。早く座りなさい」と着席を促す。

ハロルドが椅子を引き私はそこに座る。

「体調は問題ないかい?」

「ええ、全く問題ありません。お心を砕いていただいてありがたく思います」

私はお父様に微笑みを返す。

お父様は元々私に甘く過保護なところがあった。私が倒れてからより過保護になっている。

「大丈夫なら問題はないが…あ、ロゼリア、妹には会ったかい?」

「!会いました。大変愛らしく天使のようでした」

「だろう!リアナが産まれた時も天使が降臨したと思ったが、もう一人天使が降臨するとは思っていなかった。マリアには感謝しかないな」

お父様は興奮気味に話す。

私もお父様が事実しか話していないなと思い大きくうなずく。

そして食事が運ばれ、私もお父様も食事に集中する。

リアナとして生活した6年間があるためマナーは問題ない。

食器の音だけが食堂に響く。

前世の私の実家は兄弟が多く賑やかな食事が当たり前で思い出した今はこの食堂は少しだけ寂しく感じてしまう。

食事も終わり、食後の紅茶が配膳される。

いつもならお父様はたまっている仕事があると早々に食堂を後にするのだが、何故かそわそわしながら私を見つめる。


ー何かあったのかしら?


「リアナ、正直に答えて欲しい。もし急に弟ができると言ったら嫌かい?」


私は息をのむ。

正直、セヴィがこの家に来るのはまだ4年後だと高をくくっていた。


「私に弟が出来るのですか?」

なるべく冷静にお父様に質問をする。

「…」

「私は大丈夫です。何が合ったのかお聞かせ願えますか?」


お父様は少し苦い顔をしながら話すべきかと腕を組みぶつぶつと独り言をもらす。

「お父様、私はまだ子供で頼りないかもしれません。しかし誰にも相談せずにことをすすめればいつかは痛い目にあいます。私やお母様にも相談すべきです。弟と言うことは家族のことでしょう」

私は少し語気を強めにしてお父様に言う。

おそらくセヴィのことだろう。きちんとお母様に話さなかったからあんな家庭崩壊が起こるんだ!

お父様ははっとしたように目を見開き私に向き合う。

「そうだな…これは話すべきだ。全ては話せないが話せることはリアナにもきちんと話をしよう」

「はい」

「実はリアナが倒れる少し前に母上いやリアナにとってはお祖母様だね。母上から養子の打診があった。その子は詳しい出自は言えないんだがスコルプの血筋の子なんだ」


ーはいはい、今は亡きお祖父様の隠し子ですね。


「リアナには申し訳ないが、リアナが倒れた際に母上から“リアナが意識が戻るかわからない、次の子もどうなるかわからない。跡継ぎとしてその子を養子にしないか”と言われているんだ」


ーもしかして私が一週間意識が戻らないかったから少しだけシナリオが変わった?


「お祖母様がこのスコルプ家の存続を危惧して養子を勧められたのですね」

「それも…あるが」

「他にも理由がお有りなのですか?」

「今、彼は母上の家にいるのだが、どうも虐待されているようなのだ」

お父様は悲しそうに顔を歪めた。


ー確かにお祖母様にとっては亡きお祖父様の浮気の証ですもの良い気持ちはしないものね。


「私は弟が出来るのは大賛成ですわ。可愛い天使が増えるんですもの」

「リアナ…」


お父様は感激したように潤んだ瞳で私を見る。

攻略対象者で家庭崩壊の原因だったとしても小さい子が虐待されてるなんて知ったらほっとけないわ。


「ただし…お母様にはきちんと事情を説明してください」

私は強い口調でお父様にお願いする。

「マリアにかい?」

「ええ。今、お母様はロゼリアを育てるのに大変かもしれません。養子のことでより大変になるかもしれません。でも何も話をせずに養子を急に受け入れればその養子がお父様の隠し子と勘違いしてしまうかもしれません」

お父様はぎょっとして私に「私の子ではない、私はマリア一筋だ」と弁明する。


「勘違いしない可能性はないのですからきちんと話してくださいね」


私はそうお父様に告げると側で控えていたカロンに目配せをした。

カロンは私の近くに寄り椅子を引く。

私は椅子から降りお父様は淑女の礼を取りカロンを連れ食堂を後にした。

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