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プロローグ
私、リアナ・コーラル・スコルプに待望の兄弟が生まれる。
私は妹でも弟でも元気で可愛ければどちらでも良いと思うのだけれどもスコルプ家は公爵家、跡継ぎのためお父様は男の子を望んでいると私専属の侍女のカロンは言っていた。
今日生まれるとお母様は言っていたけど…遅くないかな…。
落ち着かなくてつい部屋の中をうろうろしてしまう。
カロンが「お茶でも入れましょうか?」と声をかけてくれるけど…何だかそんな気分じゃなくて「いらないわ」と返事をする。
そんな時部屋のドアを叩く音が聞こえた。
「お嬢様、失礼致します」
ドアを開けたのは執事のハロルドだった。
「ハロルド、産まれたの?」
「ええ。」
「妹?弟?」
「妹君でいらっしゃいます。」
「名前は決まったの?決まっていたら教えて?」
「ええ、ロゼリア様です。ロゼリア・ルージュ・スコルプ様でございます」
「えっ?」
ーその名前、知ってる。
ー昔、聞いた。
ー悪役令嬢の名前だ。
“昔”?
“悪役令嬢”?
目の前が霞む。
遠くでハロルドとカロンの慌てた声を聞こえた。
その日の記憶はそこで途切れた。