第7章私。走りました。
結衣と先輩はかなりのハイペースで走っていた。
結衣が併走を始めてから結衣の走るペースが早いため、それに先輩が合わせたからである。
「おい。二葉。大丈夫か。大分早く走ってるけどきつくないか」
先輩は気遣うように結衣に聞いた。
しかし、結衣は平然としていた。
「大丈夫ですよ。いつもこれ位のペースで走ってますから」
その後しばらく走った後、結衣は気付いたように言った。
「もしかして先輩きついんですか?」
先輩は結衣の言葉を聞き、真剣な表情で答えた。
「そんな訳無いだろ。俺はお前を心配して言ってるんだ。」
結衣は先輩の言葉を聞くと笑顔を浮かべた。
「先輩。無理しないで良いんですよ。先輩は体力無いんですから。」
「うるさい。それ以上言うと殴るぞ」
そして2人は走りきり、先輩の家の前の公園に着いた。
「おい。二葉。ちょっとこれで飲み物買ってくれ。お前のも買っていいぞ」
先輩は疲れきったのか地面に座り込み、結衣に財布を渡した。
結衣はそれを聞いて嬉しそうな表情を浮かべた。
「はい。なんだか。デートみたいですね」
「そうか?」
そして結衣は飲み物を買ってきた。
スポーツドリンクを二つである。
結衣はそのうちの一つを先輩に渡すと、残りのもう一つを取り自分の首筋に当てた。
「ひゃー。冷たくて気持ち良いですね。」
先輩は結衣の様子にドキッとした。
しかし、その事を結衣に知られると色々面倒なので、ばれない様に必死に自分に言い聞かせた。
「二葉。お前はやっぱり凄いわ」
「何がですか?」
「スタミナだよ。さすがに毎日走りこみを欠かさないだけあるよな」
すると結衣は照れた表情を浮かべて言った。
「違いますよ。先輩をストーキングしているから体力がついただけです。」
それを聞くと先輩は笑って言った。
「何でそこで照れるんだよ。小さいときから馬鹿みたいに走ってたし、今だって休み時間や練習後に一人で走ってるだろ」
結衣はそれを聞いて先輩から顔を背けた。
「やめてくださいよ。そう言うのは私のキャラじゃないんです。営業妨害ですよ」
「それを言うならお前に散々告白される事は俺に対する営業妨害だ。」
それを聞くと二葉は鋭い目で、先輩を見た。
「その言い方。もしかして他に好きな人が居るんじゃないですか?」
しかし、先輩は呆れた表情で言った。
「居ない。居たらお前とこんな風に走ったりしないさ。」
「先輩」
二葉はそれを聞いて心底嬉しそうな顔を浮かべて言った。
「それは脈ありという事ですね。じゃあ結婚しましょう。私を先輩のお嫁さんにして下さい」
「嫌だ。何度も言ってるだろ。俺はサッカーに集中したいんだ。」
「そんなー」
「もう良いだろ。そろそろ、戻るぞ。」
先輩がそう言って立ち上がると、二葉は少し憂鬱な顔を浮かべた。
「どうした?」
先輩が尋ねると二葉は言った。
「いやー。さすがにまた3キロ走るのは嫌だなー。と思いまして」
それを聞いて先輩は呆れた表情で言った。
「しょうがないな。家に来いよ。自転車貸してやる。」
「本当ですか。やったー。」
二葉は喜び先輩の腕に抱きついたのだった。