第5章私。走ります。
ある日、練習を終えて着替えながら結衣は愛美に話しかけた。
「愛美ちゃんって。結構可愛い下着はいてるね」
すると愛美は嬉しそうに答えた。
「そう?お気に入りなんだ」
しかし、愛美は結衣の方を見て、少し落ち込んだ様子を見せた。
それに気付いた結衣は心配し、愛美に声をかけた。
「大丈夫?」
すると愛美はやはり少し沈んだ声で言った。
「結衣って着やせするタイプなんだね。こんなに胸が大きいって知らなかったよ」
結衣はじっと愛美の方を見た。
(確かに。愛美ちゃんは正直、どこに胸があるのか分からないくらい小さい。でもそもそも全体的に小さいし、恥らう愛美ちゃんも可愛いから全然問題は無いけど、本人は気にしてるんだろうな。よし。取り敢えず励まそう)
そして結衣は笑顔を浮かべて言った。
「私は意外と背が高いから。それにサッカーをやる上でも邪魔なだけだよ」
すると愛美は自分に言い聞かせるように言った。
「そうだよね。胸が大きくてもサッカーに邪魔なだけだよね」
結衣は愛美をこれ以上追い詰めないように話題を変える事にした。
「愛美ちゃん。そういえば今日は先輩に会えなかったから、明日の朝会いに行こうと思うんだけど、これをやったら必ず落ちる。みたいなテクニックとかないかな?」
愛美は少し考える様子を見せた後言った。
「べただけど。登校中にぶつかるっていうのはどう?」
愛美のイメージは、いわゆる少女マンガの様な、軽い接触である。
しかし、結衣はサッカーのロングボールの競り合いの様な強い接触を想像してしまった。
「それって効果あるの?単に怪我しそうで危なくない?私それで一回、互いに頭がぶつかって気を失ったことあるんだけど。」
「随分激しくぶつかったんだね。でも私がこの前読んだ漫画だとそこから付き合ってたよ。」
そこで結衣は愛美の想像が、サッカーの接触ではなく少女マンガから来るものだと気付いた。
そして、最近でもそんな古典的な漫画があるのだと知り感心した。
しかし、いくら恋愛脳の結衣でも、ぶつかる事の危険性は身を持って知っている以上、先輩とわざとぶつかる気にはなれなかった。
「やっぱりぶつかって怪我するとまずいから、取り敢えずは先輩を朝迎えに行こうかな。」
すると愛美は何かを思いついたような様子を見せて言った。
「でも先輩って朝はランニングしてるんじゃなかった。迎えに行くより一緒にランニングしたら?デートみたいに見えるかもよ。」
それを聞くと結衣は共に走る先輩と自分の姿を想像し満面の笑みを浮かべた。
「それは良いね。でも可愛いランニングウェアが欲しいな。ちょっと見ていこうよ。」
愛美は快く頷いた。
「良いよ」
その後2人は、仲良く結衣のランニングウェアを買いに行ったのだった。




