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第4章私。詩を詠みます。

国語の時間。

教師が生徒達に向かって授業を始めた。

「皆さん。宿題で詩を作ってきてもらいましたね。しかし、中にはあまり適切ではない詩もありました。二葉さん」

「はい」

結衣は半分眠っていたが、教師に名前を呼ばれて目を覚ました。

「あなたの詩はふざけてるの?」

すると結衣は真剣な顔で答えた。

「いいえ。至って真剣です」

それを聞いて教師はため息をついた。

「そう。それは不真面目に作ったよりたちが悪いわね。」

それに対して結衣は不満げに答えた。

「何が悪いんですか?先輩への恋心を詩に込めたのに」

「良い。二葉さん。学校への宿題で恋の詩を詠むこと自体どうかとは思います。でも百歩譲ってそれは良いとしましょう。原稿用紙20枚は多すぎないかしら?」

生徒達はその発言を聞いて少しざわついた。

クラスメートからは先輩ラブのサッカー少女と思われていた二葉だが、先輩ラブのやばい奴である事が発覚したためである。

しかし、当の本人は気にする様子も無く言った。

「20枚でも相当削ったんですけどね。先生が読むのが大変だと思って。」

「そういう気遣いはもう少し別の所に向けて欲しかったわ。それとこの詩の題名、○○○―○○○○という7桁の数字の並びは何なの?」

二葉はそれを聞かれると自慢げに言った。

「先輩の郵便番号です」

「あなたにはプライバシーという概念が無いの。あと何でちょっと自慢げなのよ。」

すると二葉は開き直ったのか言った。

「じゃあ、先生。どういうのが正解だったんですか」

「そうねえ。例えばそう。日高さんの詩は凄く良かったわ。」

結衣の先輩への重い愛を知っている愛美はこの話に興味が無かったため、ノートに理想のベストイレブンを書きながら想像して一人でにやけていた。

そのため突然名前を呼ばれて凄く驚いた表情を見せた。

「日高さん。日高さんの詩をここで読んでもらえるかしら。」

「ここでですか?」

愛美は結衣と違い羞恥心を未だ残している。

そして、クラスメートの前で詩を読むというのは凄く恥ずかしい事である。

そのため愛美は詩を読む事をためらった。

すると教師もそれを察したのか言った。

「そうよね。自分で読むのは恥ずかしいわよね。」

愛美は教師の言葉を聞き少し安心した様子を見せた。

しかし、教師の言葉はそこで終わらなかった。

「じゃあ。私が読み上げましょう」

愛美はその言葉を聞き絶望した。

「白鳥       

               日高愛美

水面に佇む白鳥を見る。

息をのむほど美しい。

白い翼に優雅な姿。

心の底から憧れる。


白く美しく輝く白鳥。

赤い血潮に秘めるは情熱。

昔はアヒル、今は白鳥。

水の下では必死の努力。


今も昔も私はアヒル。

美しく魅せる余裕は無い。

だから水上も下も今日も明日も。

私は必死にもがき続ける。        」

愛美は頭を抱え「もういっそ。殺して」とつぶやきながら自分の詩が読み上げられるのを聞いていた。

すると「私はアヒル」という一説でなに

かがつぼにはまったのか委員長が笑い出してしまった。

彼女は真面目であるため、必死に笑いを堪えようとしたが、笑いは止まらない様子だった。

ところがそれを見た、クラスの少しギャルっぽい女子が言った。

「ちょっと。委員長。失礼じゃん。私は日高さんの作品好きだよ」

「ごめんなさい」

委員長は笑いを堪えて涙を流しながら必死に謝った。

すると教師も言った。

「私も大好きよ。特に、白鳥と対比して自分をアヒルに例える事が良いわね。日高さんの熱い思いが伝わってくるわ。確かサッカーのプロを目指してるのよね。頑張って」

「先生。それは内緒にしてって言ったのにー」

愛美は詩に加えて将来の夢までばらされて事で涙目になった。

するとなぜかギャルっぽい子が言った。

「日高さん。恥ずかしがる事ないわ。あんた頑張ってる。」

教師もそれに応じて言った。

「そうね。皆で頑張っている日高さんに拍手しましょう」

そして愛美にはクラス中からの拍手が送られた。

その拍手からはクラスメートの愛美に対する愛情が感じられた。

しかし、当の愛美には伝わらず、愛美は全てを諦め、虚ろな目で虚空を見つめていた。

(後で、愛美ちゃんの好きなチョコレートを買ってあげよう)

事の原因を作ってしまった結衣は心の中でそう思ったのだった。


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