第32章私、バイキングで焦ります。
それからしばらく経ち、結衣は食事を楽しみながら、目の前で頑張る愛美を眺めていた。
(喉につっかえない様にしっかりかみながら食べる愛美ちゃんも可愛いなー)
結衣がそんな事を考えていると愛美が言った。
「結衣って本当によく食べるよねー。それ何週目?」
結衣は愛美の質問に不敵な笑みを浮かべて言った。
「4」
その言葉に愛美は驚いた。
「4週目!いつもこれでもかっていう位に皿に載せているのにもう4週目なの。大食いとは思ってたけどここまでなんて。」
結衣は誇らしげに言った。
「私って昔から馬鹿みたいによく食べるんだよね。親にもそこだけは誇れるところだってよく言われる。」
愛美は冷静に言った。
「結衣。多分それは褒められてないよ。」
すると結衣は全てを食べ切り言った。
「さーて。それじゃあ5週目行っちゃいますか。」
愛美は言った。
「そろそろ辞めといたら?いくら結衣でも5週目は厳しいでしょ」
しかし、結衣は首を横に振った。
「いやいや。次はついにデザートだよ。デザートは別腹だから。食事だけ食べてデザートを食べないなんて二葉家の恥だよ。」
デザートは別腹説を信じていない愛美は結衣を止めようとしたが、二葉家の恥とまで言う結衣を止めることはできず、結衣を見送った。
そして10分後結衣は言った。
「駄目だ。もう食べられない。もう見たくもない。」
結衣の皿の上には未だ大量のケーキが積まれていた。
それを見た愛美は青ざめた顔で言った。
「結衣。嘘だよね。」
結衣は言った。
「本当。ごめん。もう無理。」
愛美は言った。
「結衣。ちゃんと最初の注意を聞いていたの?」
結衣は言った。
「注意?なんのこと?」
愛美は言った。
「結衣。残したらね。その分追加料金がかかるんだよ」
結衣は愛美の言葉を聞いて青ざめていった。
「追加料金?嘘でしょ。」
愛美は言った。
「本当だよ。それで結衣。私達はただ券があるから来れた訳だけど、ここの食事代を払えると思う?」
結衣は言った。
「無理だよ。お寿司にカレーに天ぷらだよ。王様だよ。私のお小遣いじゃ絶対に払えない。」
愛美は気合を入れた顔で言った。
「じゃあ食べよう。」
そう言うと愛美は結衣の皿に手を伸ばし、小さいケーキを食べ始めた。
それを見て結衣は涙ぐんだ。
「愛美ちゃん。だって愛美ちゃんはあれだけ元を採るって頑張ってたじゃん。それに愛美ちゃんだってお腹一杯でしょ」
「そんなことはどうでも良いよ。親友の結衣がピンチなのに助けられない方がずっと嫌。」
愛美はそう言うと、どこか苦しそうな様子でケーキをどんどん食べていった。
結衣は言った。
「元はといえば私が愛美ちゃんの言うことを聞かなかったせいなのに。愛美ちゃん。なんていい子なんだ。」
結衣はそう言うと、自らもさらに手を伸ばした。
そしてバイキングの終了時刻。
席に戻ってきた玲が言った。
「あら。随分、食べたじゃない。」
結衣は穏やかな顔で言った。
「そうだね」
愛美も穏やかな顔で言った。
「たしかにそうかも」
玲は二人の様子を見て不思議そうに言った。
「何か。あなた達泣いてない?」
その言葉に結衣が言った。
「当然だよ。私は今日、本当に大切なものに気付く事が出来たんだから」
玲はそんな結衣の言葉を怪訝な様子で聞いていたのだった。




