第20章私。サッカーについて語ります。
先輩が放課後に居残り練習をしていると、結衣がやって来た。
「先輩。差し入れですよ。」
そして結衣はクッキーを差し出した。
それを見て先輩は言った。
「何だこれ?真っ黒じゃないか。」
結衣は笑顔で言った。
「はい。愛情をたっぷり込めました。」
それを聞いて先輩も笑って言った。
「料理下手を隠さず、開き直って行く姿勢は少し尊敬するわ」
すると結衣は少し不安げな表情で言った。
「先輩。食べてもらえませんか」
先輩は呆れた表情で言った。
「今は練習中だからな。終わったら食べてやる。」
それを聞いて結衣は嬉しそうな表情を浮かべた。
「さすが先輩。私。愛されてますね。結婚しましょう」
「断る。おれはサッカーに集中したいんだ。」
そして先輩は練習を再開した。
結衣は先輩に言った。
「先輩。なんか元気ないですね」
先輩はそれを聞いて苦笑して言った。
「お前は変なところで鋭いな」
そして先輩は結衣に問いかけた。
「なあ。二葉。お前はどれくらい自分の理想を実現できてる?」
結衣は少し考えた後に答えた。
「そうですねー。私の理想だとこの年ではもう最後までいってると思ってました。まさかキスはおろか手すらつないでないなんて大きな誤算です。」
すると先輩は言った。
「そうじゃない。サッカーだ。」
それを聞いて結衣は笑みを浮かべて答えた。
「先輩は本当にサッカーが好きですね。サッカーでの理想ですか。それなら100パーセント実現できてますよ。」
先輩は険しい表情で聞いた。
「本当か?パス・ドリブル・シュート・ディフェンス。お前はその全てに満足できているのか?」
結衣は言った。
「違いますよ。サッカーは、走ること、ぶつかる事、蹴る事です。そしていつも私は限界まで走りますし躊躇なくぶつかってます。だからあんまり不満は無いですね。」
それを聞くと先輩はボールを置き、力任せにゴールに蹴った。
ボールはゴールポストのはるか上を越えていった。
結衣は言った。
「珍しいですね。先輩がこんなに外すなんて」
先輩は言った。
「別に。ただなんか無性に腹立たしくなった。俺が女かお前が男だったら良かったな。俺はお前と一緒に本気でサッカーしてみたかった。」
結衣は笑って言った。
「駄目ですよ。性別が一緒だったら結婚出来ないじゃないですか」
そう言って笑う結衣の様子を先輩は複雑な表情で眺めていたのだった。




