第16章私。漫画を読みます。
授業中の休み時間、結衣が漫画を読んでいると愛美が話しかけてきた。
「結衣。何読んでるの?」
「少年漫画だよ」
愛美は意外に思いたずねた。
「珍しいね。内容はサッカー漫画とか?」
結衣は答えた。
「違うよ。バトル物だよ」
「へー。そういう漫画はよく読むの?」
「普段はあんまり。ただこの漫画は先輩が読んでたから。」
「やるじゃん。先輩と漫画の貸し借りしてるんだ」
すると結衣は平然と答えた。
「違うよ。先輩が読んで居る所を見つけたから本屋で買ったの。私。先輩と趣味を共有したいタイプなんだ」
愛美はそれを聞いて、もしかしたら結衣がやっている事は凄く恐ろしい事なのではないかと思った。
しかし、深く考えても仕方ないので考えるのを止めた。
そして言った。
「私はあんまりバトル物は読まないかも。何か、血とか出るのが苦手なんだよね」
すると結衣は笑顔を浮かべて言った。
「愛美ちゃんが読むのは古典的な少女漫画だけだもんね」
それに対して愛美は満面の笑みで答えた。
「そうだよ。そういうの大好き」
(からかおうと思ったんだけど、なんだかこっちが悪い事した気分になって来たな。)
そう思った結衣は少し話題を変えた。
「じゃあ、アクション映画とかも苦手?」
「うん。映画も、穏やかな恋愛物が好きかな」
「へー」
結衣は愛美の様子を見て少しにやけた。
すると愛美は言った。
「でも。一人じゃ行きづらいんだよね。何か恥ずかしくて。」
それを聞くと結衣が言った。
「じゃあ。今度私と行こうよ」
愛美は目を輝かせた。
「良いの?結衣はそんなにそういう映画に興味ないんじゃないの?」
結衣は笑顔で答えた。
「興味がないわけじゃないよ。それに私、映画館が好きなんだ。なんかあの雰囲気で食べるポップコーンとか好き。愛美ちゃんは映画見るとき、何食べるの?」
すると愛美は真剣な顔で答えた。
「私は食べないかな。なんか映画に集中しなきゃと思っちゃって、食べながら見るのに罪悪感を感じちゃうんだ。」
それを聞いて結衣は言った。
「愛美ちゃんって変なところでストイックだよね」
そして2人は映画に行く約束をしたのだった。