第15章私。数学します。
数学の時間、結衣が寝ていると教師が言った。
「じゃあ。二葉。この問題を解いてくれるか」
結衣はとっさに起き上がると言った。
「はい。分かりました」
そしてすぐに、横に座っている愛美に目で助けを求めた。
(愛美ちゃん。助けて)
すると愛美は少し悩んだ様子を見せたが目で言った。
(分かった。任せて)
その後、紙になにかを書き出した。
「おい。二葉。早くしろ」
愛美が紙を書くのに少し時間が掛かったため、二葉は教科書を落としたふりなどで何とか時間を稼いだ。
そして愛美から紙を受け取ると黒板へ向かった。
(ふー。助かったよ。愛美ちゃん)
結衣はばれないようにこっそり紙を開き中を見た。
紙には可愛い猫が書かれており、吹き出しに(X=3または5だにゃー。)と書かれていた。
(愛美ちゃん。時間掛かってたのはこの猫を書いてたからなの?あと、数学だから答えだけ教えられてもどうしようもないんだけど)
結衣は困った顔で愛美を見た。
愛美はそれを見て口パクでメッセージを送った。
(猫。可愛いでしょ。自信作なんだ)
それを見て結衣は頭を抱えた。
(愛美ちゃん。違うよ。そういう事じゃないよ)
悩む結衣の様子を見て、教師は言った。
「どうした二葉?宿題でやって来いといったはずだぞ」
結衣は追い詰められて焦った。
そして結衣の天才的な頭脳は悪魔の発想に至った。
(そうだ。答えは分かってるんだから適当に途中式を書いておけば良いんだ)
そう決意すると結衣はなんとなく適当に公式を並べた。
そして最後に書いた。
X=3または5と。
それを見て教師が言った。
「凄いじゃないか。この問題は結構難しかったから、他のクラスで正解した者は居なかったんだぞ」
結衣は誇らしげに言った。
「多分。私のポテンシャルが高いんだと思います」
それに対して教師は満面の笑みを浮かべて言った。
「途中式は完全に誤りだけどな。どうしてこの式でこの答えになるんだ?」
結衣はこの時点で自らの計画が破綻していた事を悟った。
そして開き直って言った。
「なんとなくですね。なんとなくノリやってたら、なんだかんだあってこんな感じになりました」
教師は更に笑顔になって言った。
「ノリか。それは数学で最も重要なものだ。二葉は良く勉強してるな。戻って良いぞ」
「はい。」
結衣は元気に返事をすると席に戻った。
そして横の愛美に言った。
「ありがとう。愛美ちゃんのお陰で何とかなったよ」
それに対して愛美は答えた。
「結衣。多分、何とかなってないよ」
案の上、その後結衣には追加の宿題が言い渡されたのだった。