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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第五巻 存在してはならない帝國
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第九章 さくっと


 乾いたクラッカーを口に含むと一気に水分が奪われて、慌てて水筒の水を少しだけ口に含む。味気ない食事だけど仕方がない。あるだけましだ。それにもうすぐ目的地に着くということで、食料や聖水に多少余裕ができそうで嬉しい。俺はそれ以上無駄なことを考えるのをよして、先輩に倣い、とりあえず瞳を閉じた。


「おい! 敵の反応がある! 全員起きろ!!」


 蓮さんの大声で俺ははっと目が覚め、周囲を見回すと、全員が準備をしている。そしてエリザベートが小さく詠唱をしてバリアを張ると、先陣を切ってテントから外に出る。


 そこにいたのは三つの首を持った赤地に紫色のまだら模様の、気味が悪い巨人型モンスターだった。体長は四メートル位だろうか。それぞれの頭はおそらく意志を持っていて、うねうねと動いており、迂闊に近づくのも危険だと思う。


 奴は口から紫の煙を吐いていて、それには毒素があるのかもしれないし、本気でブレスをはかれると厄介なことになりそうだ。でも、どうやら人間型だから、カラグアヒュドラーではないらしい。その点は一安心なのかな? とりあえずここは遠距離からの攻撃で様子を見るのがいいかもしれない。


「ゼロ、エメラルドガトリングガンをお願いしてもいいかな」と俺は口にしながら、皆の意見を求めた。エドガーが黙ってうなずくので、ゼロにお願いをしようとすると、ふっ、と、その大蛇が黒い炎に包まれ、消えた。断末魔すら残さず、その死体すらもない。


思わず後ろを見ると、そこには赤い瞳のベルさんが悠然と立っていた。そして落ち着いた口調で、


「即死呪文への耐性が低い低級なモンスターで助かりましたよ。一応、僕も役に立つところを見せられましたかね」と微かに微笑む。でも、でもさあ! 俺は少し声を潜め


「あの、即死呪文って、かなり高レベルの魔導士しか使えないと思うのですが……」


「ん? だって僕高レベルの魔導士だよ。高レベルじゃないとこんな場所に来たりしないじゃん」う、正論だ……さらにベルさんは言葉を続け、


「それに即死呪文自体は、初心者でも使えるんだ。ただ、自分の能力、魔力以下の敵にしか効かないからさ。一応言っておくけれど、君達。特に神聖魔法のバリアを使える神官様なんかには絶対通用しないからさ、僕が君達の寝首をかくなんてことはないから安心してね。あー僕も暑いしまた夜にねー」


 用意していた台詞のように勝手にまくしたてると、ベルさんは棺桶の中に入り、俺達もテントの中に入る。ぼそりと蓮さんが「中々の曲者だな」と呟く。それに言葉で応えるものはないが、皆の意見は一致しているはずだ。少し間があって、エドガーが、


「おい、エリザベート。ヴァルキリーとして、本当にあいつを連れて行っていいと思うか?」


「ああ。奴は私が知らない情報を知っている。裏切られたとしても、やはりこちらに分があるはずだ。今回の任務は何としても遂行しなければならない」


「そうだな。しつこく言って悪かった。もう言わねえ。じゃあ、夜まで休むか」


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