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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第五巻 存在してはならない帝國
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第七章 I wish you love

 と、皆の視線が俺に集まるのが分かった。ちょっとたじろいでしまって、


「それって、かなり危険な場所というか、自己防衛システムが未だ生きているってこと? え。俺の力でその帝国というか、あ! あの、もしかしたら帝国、都市か軍隊自体が巨大なアーティファクトってことなのかな」


「その可能性は高いですね、マスター」とゼロ。


「帝国ってことは、普通は軍隊とかの部隊がいるはずで、それを考えると、機械の部隊だけでも十分脅威なのに、アーティファクト製の部隊なんていたら、幾ら俺達のパーティでも、かなりヤバいんじゃないか?」


「だとしても、私は向かう」と決意に満ちた瞳で、エリザーベトは口にした。エドガーも苦笑いをして「まあここまで来て戻れるかよ」と言う。


「まあまあ、僕が生きて帰れたらしいんですよ。つまり、危険だけれども、貴方たちがいるならば大丈夫じゃないですかね」


 うーん、そうだなあ。憶測でしか考えられない今、必要以上に弱気になるのは、良くない。ベルが戻って来たという報告だってあるから、少なくともアーティファクトの兵隊が大勢いるなんてことはないはずだ。


それに俺もエリザーベトじゃないけれど、任務のような物があるんだ。俺の肉親が、仲間があの地にいるのかもしれないのだろうから……でも、それを深く掘り下げて考えないようにはしていた。考えれば考えるほど、嫌な連想ばかりが浮かぶのが目に見えていた。


 そっと俺の肩に蓮さんが手を置く。


「大丈夫。頼りにしてるぞ」


 この人はなんで人の心が分かるんだろう。というか、俺が不安を見透かされるような顔をしていたのかな。俺は変な笑顔を作って蓮さんに返した。蓮さんは微かにうなずく。


その仕草で、俺はぱっとやる気が起きてきた。そうだ、あともう少しで目的地に着くんだ。俺が力を出さないでどうする! そう思うと「じゃあ、とにかく話はあるかもだけど、歩きながらで行きましょうか!」と先頭に立つ。


「おーおー若いのは元気でいいなー。俺の分の荷物も持つか」とエドガー。俺は仕返しのつもりで「だったらエドガー自慢の歌でも披露してよ。丁度こんなきれいな景色なんだしさあ」と軽口を叩く。叩かれるのを覚悟していたのに、俺の耳に入って来たのは、あの、甘い声だった。


「I wish you bluebirds in the spring


To give your heart a song to sing


And then a kiss, but more than this


I wish you love」


 いつもの甘い声がこの幻想的な景色に交じって、思わず足を止めてしまうと、歌も止んでしまった。そして立ち止まった俺の頭をエドガーがポカリ。


「アホ。何立ち止まってんだ!」「いや、だって聞きほれちゃって。エドガー続き歌ってよー」「バカ、金でも払え。それに綺麗なねーちゃんもいないとこでこんな甘い歌……」


 と、ここでエリザーベトが冷たい眼差しをエドガーに向ける。俺と蓮さんはちらと顔を見合わせ小さく笑う。


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