第八章 飛陽族の少年
気を失ったのだろうか? 少しだけ、ふらついただけなのだろうか? とにかく今度は真っ暗闇。どういうことだ? 同じ部屋とは思えない。俺は三人の名前を呼ぶが反応はない。一応魔力感知をしてみるが、ジェーンがいる反応もない。
ダークゾーンにひとりきり? 背筋に冷たい物が走る。もしここで機械でなくても、モンスターに出会ったら、ひとたまりもない。俺はとにかく、リュックの中のカンテラをだめもとで探そうとしていると、ある光に気が付いた。リュックの底から、それを拾い上げた。
緑色に発光している、旅立ちの日にレキトが渡してくれた、ドラゴンの瞳のような物。これも、アーティファクト、なのか? いや、アーティファクトだと何かの力があるはずだし、俺もそれを引き出せるはずなのだけれど……
まあいい、光るだけでも、十分。ありがとう、レキト。俺はそれを握りしめて力をこめると、なんと、ぼんやりとした光の線が暗闇の先に向かっている。これって、この光をたどれってことだよね! すごいぞ! 俺は小走りで、光の線が消えないうちに、暗闇の中を走って行った。
こだまするのは俺の足音だけ。他の皆はどこにいるんだろう。俺があんな赤白の宝石を、知らずに起動しちゃったからなあ。でも、もしかしたら、あれをしなくっちゃ、先に進めないのかもしれないしなあ。
うーん。相変わらず誰もいる様子がない。モンスターに会わないのは助かるけれど、みんなはどうしているんだろう。蓮さんやエドガーならダークゾーンでも平気だろうけど、ジェーンは大丈夫かなあ。まあ、高レベルすぎる先輩の心配をしている場合でもないのですが……
一向に、どこにもつかない。何も見えない。ずっと俺は小走りで、心なしかあの光も弱くなっているようなきがするし、同じような場所をただぐるぐるしているような気もしてきた。
だめだ! 弱気になっちゃ! とにかく俺は走るしかない。 レキトのくれたあの石を強く握り、光の方へと走った。喉がかれ、さすがに休む暇はないのに、休憩を入れるか歩くか迷い始めた時、明るい光があった。出口だ!
俺は急いでそこに入ると、荒い息をしながら、とりあえず呼吸を整え、水筒を取ろうとすると、手のひらで「パァン!」と小さく破裂する音がした。手を開くとあの石は、消し炭になっていた。
運よくここにすべりこめた幸運と、俺に道を教えてくれたレキトに感謝をして、水にくちをつけた。はーおいしいなあ。体中にしみわたるよ。
そういえば、あの瞳のような石はアーティファクトではない。アーティファクトは滅多なことでは壊れないと聞く。でも、ここの遺跡でこんなに役に立つというか、この遺跡との相性の良さというのはどういうことだろう? うーん、ちょっと分からないなあ。
そして改めてこの場所を見る。前にあった、壁画が描かれている場所に似ているようだ。俺は改めて壁画に触れようとすると、
「アポロ」
「え? だ、だれ???」 この声は、知らない声、しかも、人間のものではない変な感じで、
「アポロ」
「だから誰だよ、って!!!」
僕の足元にあったのは、き、機械? 僕の身長の半分くらいで、脚は無くて、少し浮いていて、頭には大きな赤い一つの目。
嘘、死ぬ! でも、この場所で逃げたところでどうにかなるのか? 俺の名前を呼んでるってことは、敵ではない? とにかく、戦って勝てる相手ではないだろうから、俺は質問をすることにした。
「こんにちは。俺の名前はアポロ。でも、太陽神アポロに憧れてつけた名前なんだ。だから、太陽神とは関係がないんだ」
「あります」
「え?」
「私たち古代人は死に行く代わりに、記憶や力の一部を機械の身体にたくしました。飛陽族の末裔。アポロ。私はあなたを最下層部に連れて行くのが、道案内が任務。それ以外の力はありません」