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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第五巻 存在してはならない帝國
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第四章 青い旅路と赤目の男

蓮さんの声ではっと目を覚ます。テントは大体解体されていて、そして、肌の上をなぞるひんやりとした風。それは聖水のバリアによるものではない。見上げると蒼穹に星空。急激な温度と周囲の変化に少し戸惑いながらも、腰を上げる。


 砂と灼熱の世界が、わずか数時間で一面の青の世界に変わっていた。地面も青、空も青。しかも空だけではなく、地面も所々発光している。何かの植物、コケか? 昆虫か? 


「おい、いつまでぼさっとしてんだ。お前がこれ持てよ」とエドガーのチョップが飛んできた。ついでに、テントが入った大きなデイバッグ。ゼロが自分が持つと言ったけれど、さすがにそれは遠慮して、自分のリュックを前に背負い、デイバッグを背中にしょう。う、それなりに重いな。まあ、それよりも……もしかして、寒い?


 そう俺が思った瞬間、目の前に鳳凰が現れた。流石蓮さん! 力を制限しているからか、少しその鳳凰の姿がぼやけて見えるのは気のせいか。でも、確実に寒さは無くなった。そして、エリザベートが掲げたコンパスから力強い青の光。


「一安心という所か。行こう」


 星空の中のような景色、代わり映えのないその世界を俺達はひたすら進む。不安感よりもまだまだ好奇心が勝っている。コンパスがある限り、いや、俺たちのパーティが元気だという安心感から、この目印もない道をただ歩き進めることができる。


「ったくよー。昼夜逆転して、この何もねー所をひたすら歩くしかねーのか」とエドガーが愚痴る。それはみんな思っていることだろう。でも、俺らは歩くしかないのだ。


「私も幸運にも出会ってないが、夜にはカラグアヒュドラーという多頭蛇龍が徘徊するらしい。その時は冷気攻撃が有効らしいから、エドガーよろしく頼む」


「お、お前が頼みごとをするなんて珍しいな」と俺と同じ意見を簡単に口に出すエドガー。エリザベートは割と穏やかな口調で「頼りにしているからな」と言った。


 一瞬皮肉めいた言葉にも聞こえたが、多分、彼女なりに俺達を信頼してきてくれているような気がした。そう思うと、俺は何だか少し嬉しくなってくる。


 結果、この日は小休憩を挟んだが、とにかくコンパスの通りに歩くだけ。朝日が昇ってきたら、聖水のバリアーを作り出し、テントを作りその中で座ったまま仮眠を取る。俺は瞑想を忘れないようにする。そして、また夜が来る。


 これがいつまで続くのかなあと二日目にして思ってしまうダメな俺。でもこの辛くて退屈な進軍は何日も続いた。さすが歴戦の冒険者達は文句一つ言わないのだから、俺だってわがままは言えない。


 それでも、こうも同じ景色が続いていると、コンパスが反応しているとはいえ時折不安に襲われることもある。でもこの仲間たちの中にいると、それもすぐにふりはらえるんだけれどもね。


 ただ、やっぱり、退屈だなあーと大きく伸びをしながらあくびをする。そして、何か、変な気がした。「ねえ!」と言うと、エリザベートは気が付いているらしかった。


「不浄の物がいる。正体が分かるまで私のそばを離れるな。防壁を展開する」と暖かい、聖なるバリアで俺らを包んでくれる。


「そうだな、来やがったな」となにやら嬉しそうにエドガーが口にする。そして、現れたのは、二人の黒いローブを着た男。二人? 彼らは、戦っている? そう、片方は明らかに悪霊かモンスターの類だが、もう一人の方は分からない。


「おい、お前が戦っているのはサンドヒューネストか?」とエリザベートが大声で尋ねる。そのサンドヒューネストらしいモンスターは、立派な黒の魔導士のローブを着てはいるが、顔が骸骨でその眼は赤く輝いている。


もう一人の男も似た格好なのだが、まぎらわしいことに瞳は同じ赤でも、顔は白い肌で明らかに人間に見えた。彼はこの場にそぐわない朗らかな声で、


「助かったよ、神官様。僕じゃあこいつの相手は困難でね、助けてくれないか?」


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