第二章 新しい旅 灼熱のカラグア大陸
水分と食料(教会内なので、簡素な乾燥させた固いパンとかだけど)の補給をする。他にも何か大きな道具の入ったバックパックを背負ったエリザベート。彼女に連れていかれて神殿を歩く。そこは神殿の裏口から歩いてすぐの開けた平地で、周囲には蝶も飛んでいるのどかな場所なのだが、ポータル!! しかも、六個もある!!!
「エリザベート!! これ、全部ポータルでしょ!! すごい!! これ、何、ヴァルキリーしか発動できないポータルなの? すごい! すごいよこれ!!」
「マスターアポロ、落ち着いて下さい。マスターは全て起動できるはずです」
うっ、ゼロにたしなめられた、と思ったら、エリザベートが補足をする。
「そうだな、古代魔術師ならポータルを起動させることが出来るだろう。だが、こういった神殿と神殿同士を繋ぐポータルであるならば、強力な力を持つ信者、聖者がいなければ発動しない。また、ここにあるポータルで現在使えているのは三つだ」
そ、そうか。やっぱりポータルでも色々種類もあるんだな。当然だ。とにかく、今回は余計なことは聞かずに、カラグア大陸の神殿へとつながるポータルがある、ということだけで感謝しよう。
「そ、そうだ。その神殿から、問題の場所へと行くのには何日くらいかかるんだっけ」
「分からない」とエリザベート。
思わず突っ込みそうになる、けれどもこれから向かうのはそういう場所なんだ……となんとか自分を納得させていると、エリザベートは俺の眼を見て、
「アポロの羽、そしてゼロの髪の毛か部品等の一部をコンパスに入れれば、道は開かれると、ヘラ様がおっしゃった。後は、戦乙女である私の雷の魔力をこめれば、きっと」
そう言って彼女は古びたコンパスらしき物を掌の上に示して見せた。俺はゼロに目配せをすると、ゼロはすぐに髪の毛をその上に落とし、俺も羽をぐっと取り、その上に置く、
すると、コンパスからは青い光が放射され、それは一つのポータルへと向けられていた。とりあえず、ほっと一安心をする。でも、これからは何が起こるか分からない。そのことはここにいる全員が分かっているはずだ。エドガーがいつもの自信溢れるのんきな声で、
「じゃあ、行くか」と口にした。皆は無言でそれに従う。
エリザベートが防御壁のような光のサークルを発生させ、俺らを包み、俺の手を握る。一瞬ドキッとした、しなやかで長くて少し冷たい手。俺はそれを優しく握り返すと、見知らぬ地に向けて意識を向ける。それが、不思議なことに初めての体験だが、エリザベートとシンクロしているような気がする。魔力が、溢れ出る。
と、思った瞬間、俺達は別の場所にいた。見渡す限りの砂景色。じりじりと肌を焼く太陽の暑さ、しかしそれを遮るような物はなく、長時間ここにいるだけでもかなり体力を消耗しそうだ。
でも、ここがカラグア大陸。俺達がこれからあてのない旅をする場所。おっと、コンパスがあったんだ。と、エリザベートに告げると、彼女が差し出したそれには、光が、無い。
俺が軽くパニック状態になっていると、エリザベートはあの聖水の瓶の一つを辺りにまく。すると瞬く間に水のバリアーのような物が発生して、ここが温暖な気候であるかのように錯覚する。しかも、弱々しいながら、コンパスからは小さな青い光が放出されていた。
「分かっていたが、予想していたよりも厳しいものだな。この大陸では、日が落ちると急激に温度が下がり、その分探索には適した物になるはずだ。日が昇っているうちは、体力や聖水を温存するために簡易テントで移動をしない方が賢明だろう」
そう言うと、エリザベートは本当に粗末なテント用具を、大きなバックパックから広げる。と、エドガーも知っている物なのか、二人で素早く簡易テントを作り上げた。でも、あくまでこれは聖水の力があるからこそ休憩所になるものだろう。




