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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
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第二十章 good luck!


 たまには、で100万ゴートが! 流石と言うか、お金とか執着しない物への無関心っぷりはすごいというか……俺はお金持ってなかったし、ギャンブルのルール位なら多少分かるけど、ほぼしたことない。こんなの運だろ? それかイカサマじゃないのか? ギャンブルの街の大金持ちが、イカサマを見抜けないとは思えない、エドガーも彼相手にするとは思えない。男と男の真剣勝負、なのか? これ。


俺は一応エリザベートにも確認をとると、あっさりと「目的は達成された。後は私がお前たちに報酬を払う番だ」と、ほんと皆さま、貧乏性の俺と違ってどんと構えてらっしゃる……


 向かい合うエドガーとハラジャ。二人の目はギラギラとひかり、楽しそうな様子がこちらにも伝わってくる。だが、この場で一番緊張しているのは、多分俺。


「カードを配らせるぞ。私が配るより、その方いいだろう。おお、勿論、不正なんてないから、気軽に楽しんでくれたまえ!」

 

「へへ、そうさせてもらう」と、余裕顔のエドガー。カードを手にして、二枚交換だ、と口にする。しかしハラジャは「交換なしだ」と口にした。え? それってつまり、ハラジャが強い手を持っているってことだよね? 俺は生唾を飲み込む。エドガー! お願いします!! 勝って下さい!! 


 エドガーは二枚のカードを手に、確認をする。顔色は一切変わらない。そして、お互いに手札をさらす。


「勝負!」


 ハラジャは、スリーカードにワンペアだから、フルハウスって奴かな? それで、エドガーは、すごい。エースのフォーカードだ。これって、もしかするともしかして!


「へへへ。俺もまさかフォーカードが一発目で出るなんてな。悪いな」


 これ、は。エドガーが、勝ったんだよな? そうだよな! わーい!! と、ハラジャの顔を見ると、なぜかにこやかで、速やかにカードを回収さえ、エドガーの前に二枚のチップを置くと、自分で二枚のカードを置く。


「ダブルアップ。勿論するだろ? 特別に、同数なら親の勝ちではなく、ドローで仕切り直しで良い。どうかな?」


 ダブルアップ。左のカードを一枚めくって、右のカードがそれより大きいか小さいかを決めるという単純な遊び。それに勝つと、その前で賭けて勝った賞金チップが二倍になる。これは単純なルールなので俺でも知っている。


で、せっかく二倍になったお金を、エドガーはあっさりと、賭けるのか? 賭ける、よな……。エドガーは当たり前のようにハラジャの提案を受けて、ハラジャがめくったカードは、6.エドガーは迷わずに「ハイだ」と言ってめくると、そこにあった数字は、

「10だ。まずは二倍だな」と軽く笑う、し、心臓に悪い……こ、こんなんで100万が200万になっていいのか……いや、ゼロになる危険もあるのだから、いいんだよ、な?


 続けて10の札にエドガーが「ロウ」と言うと、めくった札は「7」おーここで、終わるってのはどうでしょうかねえ、とエドガーに声をかけたいのだが、そんな雰囲気ではなく、エドガーは当然のように「じゃあまたロウ」と言ってめくった札は、「9」


 一瞬意識が遠くなった。300万ゴートが、水の泡。300万? 魔法スクールを卒業したってお釣りがくるだろう。それか、高価なアーティファクトだって買えるかもしれない。小さなお家だって買えるかもしれない「へへへ……」と思わず変な笑い声がもれ、それよりも豪快なエドガーの笑い声。


「はっはは、あーあ、やっべーな。ちくしょー! でも、楽しませてもらった。また何かあったら呼んでくれよ! じゃあ、その神殿だかに行って、そっちの報酬をもらいますかね」


満面の笑みを浮かべたハラジャは「こちらも楽しませてもらった。よかったら、その目的地まで、私の馬車で送ろう。どうだね。未だ滞在するか、それともすぐに出発するかな?」


「そうだな、すぐに出発しよう。いいだろ?」とエドガーは俺らに確認をとる。エリザベートと蓮さんはそれを受け、さらりと案内のガードマンの一人とエドガーの後をついて行くのだが、行くのだが……行くんだけどさ!! 一人頭300万ゴートがなくなってるのに、何でこの人たちは平然としてられるの?? わけ分からない。でも、いざそれが手に入ったら、またあーだこーだと悩みそうな気がする、けど! 300万ゴート!! 俺はみんなみたく、いや、一人とぼとぼとエドガーの後をついて行った。


 庭に並ぶ、白や黒のたくましい馬たち。これに蹴られると一撃でどうにかなりそうな脚力の持ち主だろう。その中でも、豪華な馬車に通され、俺達一行はそこに乗り込んだ。うお、中の椅子もフカフカで、内部も広々としている。ついぽろっと、蓮さんに300万が消えましたねえとぼやいてしまうと、蓮さんはただ微笑むだけで、目ざとくそれに気づいたエドガーが、


「お前、一流の冒険者はまた稼げばいいんだよバーカ」


 俺、数か月前になった、ヒヨッコもいいとこなんですが……まあ、いいです。一流の冒険様たちと一緒に冒険が出来たから、俺の一気に色んな意味でレベルアップできたと思いますし。


 目指すのはエリザベートが依頼を受けた神殿。ここからさほど遠くはないし、この馬車の性能だと、4時間もかからないのではないか、とのこと。ヴァルキリーの神殿なんて見たことないし、がぜん興味が湧いてくる。


 車内はいつものようにだんまりで、先輩冒険者たちは体力回復なのか、こんな時の無駄話は好かないのか。俺はゼロに話しかけると、「とても調子がいいです」という返事が返って来た。が、話しが盛り上がらない……。俺も、ちょっと疲れてるし、休もうかなあと瞳を閉じる。


 結局、あの悪霊は、蓮さんやエリザベートに深く関係していたものだったけれど、二人とも、やけにドライに見えた、いや、人前でそういう姿を見せないだけなのかな。あの立場が自分だったら、と思うと、それだけでぞっとした。身内に、知り合いに刃を向けて、封印すること。それが最善のことだと分かっていても、できるか分からない。まだ、俺はやっぱり駆け出しの冒険者だって、ことなのかな。


 それなりに舗装されている道で、馬は軽やかに進む。ここら辺はあのカジノの大都市に続く道だからか、所々道が舗装されているってことだろうか。後ろにある大きな窓から景色を見ると、すぐに木々を追い越していく。脚力があっても、車体の振動は少ない優雅な旅。俺はついうとうとして、眠りに落ちる。


「助かったよ、ハラジャにもよろしくな」


 馬車から降りて、エドガーは御者のおじさんにお金を渡すと、おじさんはそれをもらわずに、頭を下げ「皆様、また、いつでもおいでください」と言うと、踵を返し、その姿は瞬く間に見えなくなった。


 代わりに見上げるは白い石で作られた、仰ぎ見る大きな宮殿。外観は太い支柱にアーチ形の大きな屋根といった簡素な作りではあるが、厳かな雰囲気と聖なる魔力を感じる。ちらほらと、市民らしき人が、そこに入っている。って、ことは、信者じゃない俺達も入っていいってことだよね? 俺が尋ねる前にエリザベートが口にする。


「ここが雷知神、トール様の為の神殿の一つ。分かっているかと思うが、神殿内では無礼な行為、特に、我らが神を蔑んだり、他の神の名を出すことは争いごとの元になる。慎むように」


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