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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
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第十八章 排除

エリザベートの言葉を確認してからすぐだろうか、エドガーがダイアモンドブレスを噴射する。俺はゼロに指示を出し、エメラルド・ガトリングガンを発射させる。この二人の攻撃が合わさったなら、どんな魔物でも形さえ残らないだろう。


轟音、距離があるのに刺すような寒さ。そして白い霧がはれ、嫌な予感はした。嫌な気分は残っているのだ。紫の瘴気をドレスのようにまとった彼女は、あれだけの攻撃を受けたのに、ほとんど傷ついていないようだった。そう、蛇が盾となり毒を吐き、再生を続けているようだった。


「マスターアポロ。この霧は全ての物、我々と敵の攻撃力をかなり減退させます。そして、この毒霧は、耐性が無い相手の体力をじわじわと削ぐでしょう。相手は防戦一方で持久戦に持ち込み、我々をじわじわとなぶり殺しにするでしょう」


「ゼロ、ありがとう。でも、エドガーとゼロの同時攻撃さえ防ぐなんて、どうすれば……」


 そう俺が言うと、すっと、呪文を詠唱しようとしたエリザベートの肩を蓮さんが叩いた。


「君だけが浄化の魔法を使える。頼む。僕が話をつける。その後は頼む」


 そう言うと、蓮さんは一人、彼女の元に向かって行く。俺とエドガーが大声で引き留めるが、聞こえていないのか、聞く気が無いのか。瘴気が、一段と強まっている気がする。この場所にいるだけで、情けないが俺なんかは気を抜くと気絶しそうだ……蓮さん!!


 蓮さんが彼女の前に立つと、無数の蛇の身体が伸び、蓮さんをまるで抱擁しているかのようだった。逃げ道が、ない。俺がぞっとしたのとは逆に、彼女は甘い声で、


「やっと、会えた。ずっと、会いたかった。貴方が私の事をどうとも思っていないのは知っている。でも、もう、ずっと一緒離さないわ」


「嫌だ。君は死ね」


 瘴気が吹き飛ぶ。蓮さんが修羅化したのが分かる。しかし、蓮さんの身体は蛇に覆われたまま、と、鳳凰の力で蛇が燃え尽きる。すると、彼女も本気を出したのか、蛇の頭が槍のごとき鋭さになり、蓮さんの身体に咲く牡丹と阿修羅をめった刺しにする。


「蓮、綺麗よ。どうしたの? もう、私の物になってくれるの?」


 血まみれの、修羅。と、瞬く間に、切り崩された。そこにはあるべきものがなかった。一瞬幻を見ているのかと思った。頭が無い人間が立っている。彼女はもうその場にはいなかった。


振り返る修羅の瞳と血は金色で煌々と輝く。彼が纏う血は光となり消え、血を吸った裏・村正は切り落とした血の紫色に染まり発光する。そしてその刀を一振り。紫の血が立ち消え、刀身には汚れ一つなく光を反射する。格が違う。俺まで身震いしてしまった。


「人殺しに惚れた罰だ。おい、そこの女。こいつを宿主にしている、魔物の巣を封印しろ」


 エリザベートは黙って、速やかにその場に立つと、小声で何かを口にする。地面にはまだ瘴気と共に、うねる蛇のような煙がたなびいている。しかしそれは宿主を失ったからか、弱々しいものになっている。


エリザベートは高々と右手をかかげる。彼女の全身が発光し、地面に金色の魔法陣が生まれ、消えた。同時に、蓮さんも元の姿に戻る。相変わらず恐ろしい力だなあ……ってか、また全裸なの! そんな蓮さんにエリザベートは、


「悪かった。嫌な役をさせた」


「お互い様だろ。気にするなと言っても無理な話だが。君は悪くない」


 和解のシーンなのに、蓮さん全裸……、と、パン! っと何かが弾ける音がした。何かと思ったら、エリザベートが、「コンパスの赤い石が破裂した」するとエドガーがだるそうな声で、


「マジか! てかよ、俺ら、ここから生きて戻れんのか?」


 それは……俺も不安になってきた……なんてったって普通のダンジョンじゃないもんなあ。あ、あれ? 普通のダンジョンじゃない、といえば。俺は自分の服の中からブラッドスターを取り出し、恐る恐る、自分のコンパスに入れてみた。赤い光が出た! 急いで引き抜くと、その光も大きさも変化がないようだ。良かったあ。


 俺はおそらくだけど、前に代用ができたように、このブラッドスターで出口までの案内ができるはずと説明した。でも、この光、天井をさしてるんですが……。天井。勿論、暗い、壁で光なんて見えない……間違い、か? でもそしたら、光なんて出るかなあ……


「マスターアポロ。天井へ波動砲を発射して、またマスターとエドガーの力で飛んで行けば良いと思います。落石、倒壊注意ではありますが」


 すると苦い顔のエドガーが、


「おい、マスターアポロ。こりゃあ、一歩間違えたら、せっかくクエストクリアしたのに、俺らぺしゃんこで全滅しねえか? かといって、このわけわからん道を上に戻るのもたりぃしなあ。他の奴らはどう思う?」


「波動砲とやらを撃ってもらおう。落ちてきたものが岩石でも、アーティファクトの力を引き出したなら、切り刻むことができる」と蓮さん


「同じ意見だな。私のバリアと雷鳴で、大体の物はカバーできる」とエリザベート。


 すると、自分も自信満々なはずのエドガーは大袈裟なため息をついた後で「そんじゃ、ゼロ君、目標に向かって発射してくれたまえ」


 なんだよ、俺には聞かないのかよ、と思ったけど。俺じゃあ炎を出すことしかできないからなあ…… でも、ゼロが俺を見てくる。俺がうなずくと、ゼロは両手を緑色に染めて高々と掲げると、ゼロの髪の毛、そして体までもが緑色になる。何か、物凄い力が集まっているのが分かる。


もっと言うと、ゼロが別のアーティファクトに変身しているかのような奇妙な感覚を受けた。アーティファクト反応が変わったような感じと言うか。初めての経験なので、自分でもよく分かってないけれど。ただ、気づけはゼロの両腕は一本の巨大な筒のようになっていて、びりびりするような不思議なエネルギーを感じる。


「セーフティーモードにて再起動中、プログラム更新の必要はなし。機器への損傷なし。砲撃モードにチェンジ……可動部の充電……良し。エネルギー体、伝導、吸気、圧縮、良し。シリンダー内の圧力良好。エネルギー装填、充填、過不足無し。ロック解除。ターゲッティング、良し。発射します」


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