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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第一巻 廃墟に降り立つ太陽王アポロ
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第七章 死闘の末に見る物

ジェーンもかなり魔力を使い果たしたようで、弱弱しくそうつぶやいた。僕も、小さな可能性とはいえ、それにかけていた、それはやはり、小さな可能性でしかなかった。


 突然、大きな音がして、エドガーは剣を置き、鎧を脱いだ。嫌な、予感がした。


「エドガー!!!!!」


 魔力を、感じた。禍々(まがまが)しい物。僕が何か発する間もなく、エドガーは1匹の、巨大な悪魔のような、銀色の人型の狼に姿を変えていた。


 それは、目の前の獲物にくらいつくと、蹴りを入れ、ひたすらに素手で殴り続ける。殴る、殴る、殴る。機械が獣に波動砲を発射しても構わずに、ひたすらに、殴る、殴る、殴る、


殴る殴るなぐるなぐるなぐる、殴り続ける。狂乱状態を楽しんでいるかのように、機械の反撃で獣にもダメージがきているようだ。でも、彼にはそんなことは関係ないのだ。目の前の敵を壊す、ただそれだけしか頭にないようだった。


「ボコォ!」という大きな音がした。俺には、機械が絶命したのは分かった。思わずほっとする。でも、獲物を失った獣は、ゆっくりとこちらへと歩いてくる。


「ジェーン! エドガーだよね、俺らのこと分かるよね?」


「ダメ。一度獣化してバーサク状態になると、しばらく理性がきかなくなるみたい。無駄だけど、またバリア張るから。動かないで」


「エドガー! そんな怖い顔してないで戻ってよ!! エドガー!! エドガー!」


 と、いきなり、エドガーが止まり、何かの音がした? そして膝をつき、仰向けに倒れた。え? エネルギーを使い果たしたってこと? いや、そこにいたのは蓮さんだった。蓮さんは愛刀を振るい、それからどこかから取り出した布で血をぬぐうと、


「機械は苦手だが、人や獣を殺すのはとても得意だからな。エドガーは全力で力を使ったらしいから、少し強めに刺しておいたが、じきに目を覚ますだろう」


 こ、この人は、相変わらず言葉のチョイスが……まあ、もういい。そういえば、エドガーの本当の職業って獣戦士だったんだなあ。レアな職業だって言ってたし、それにしても恐ろしく強いなあ。


 さすがにみんな疲れたようで、それぞれヒーリング・ポーションを飲んだり休憩をとる。エドガーも起き上がった。すると恨みがましそうに、


「レン、おめーいくら俺が獣化したからって裏・村正で刺しすぎだろ! この真正サディスト修羅侍」


「そうだな。久しぶりに強い相手で気兼ねもないから、思う存分刀を振るえて、楽しかったよ」


「うわー怖い怖い。人の道は外れるものじゃねーな」


「おい、ミハエル家に縁を切られた人間が言う言葉か?」


「家の名前は出すなって言ってんだろ。あんなん、こっちから縁をきってやったんだ」


「と、まあ、こんな感じなの」とジェーンが僕に言う。二人のケンカというよりも、凶暴なじゃれ合いは続いている。


「私たち三人って前にパーティ組んで、一人二人仲間に加えてクエストに挑んだりしてたけど、本当に他の人と連携がとれないのよ。あの男二人はそれぞれ別の意味で怖すぎでしょ。私の魅力で男がメロメロになって、対抗心をあの二人に燃やし返り討ちとか、その点考えると、アポロはすごいよ。レベル1のくせに、ちゃんと私たちと一緒に戦おうとしているし、怖い二人に物おじしないし」


 なるほど、確かにこの三人とのパーティは大変そうだ。あと褒めてもらって嬉しい箇所はあったが、


「俺はレベル2だって!」とギルドリングに触れると、そこにはレベル5と書いてあった。嬉しい! 5レベル! ちょっとだけ、冒険者だよ、ね! なんか緊張状態続きで気づかなかったのかな? 


「すごいじゃん! 一日で5レベル上がったなんて。でも、ここでのことを考えると、もっと欲しいね」とジェーンは微笑んだ。


「ところでよう、先、どうやって進むんだ?」エドガーがぽつり、と言った。


 確かに、ここにあるのはあの機械の残骸だけで、出入り口や階段らしきものが見つからない。ワープゾーンがあるのかと、俺とジェーンで探してみるのだが、どうやらなさそうだ。


 と、俺はあの機械の残骸が気になってきた。何か反応はないはずだけれど、どんな金属なんだろう、と僕が近づいて行くと、


「おい! まだ生きてるかもしれねーんだから、不用意に近づくなよ!」


エドガーの忠告に「何か反応があるみたいなんだ」と適当なことを言って近づいてみる。大丈夫、さすがに、もう動かないはず。俺がエドガーの攻撃でボコボコになったそこに触れると、ひんやりと冷たく、え? 


手が! 手が、あんな固いはずなのに、中にするりと入り込んでいて、慌てて引き抜くと、そこにあったのは、赤と白のマーブル模様の、宝石? 鉱石? 


だがそれを質問する時間はなかった。俺の持つ宝石は強い光を放ち、視界は完全に光によって奪われていた。


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