表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
68/302

第十五章 連携と過去



 この強固なバリアの中にいても、ものすごい雷鳴の音が鳴り響いて、止まない。このバリアはどの位の時間持つのだろうか? この雷を受けたら、俺やアンドロイドのゼロなんかはひとたまりもないかもしれない。でも、俺は何もできない、じれったい、


 と、雷は、止んだ。それに応じて、バリアも解かれる。「運が良かったな」とぼそりとエリザベートが言う。どういうことだ、と思うと、彼女は続けて口にする。


「神話にある、天まで届くと言われたバベルの塔は、思いあがった人間への罰に、神が雷を落とした。この『逆さバベルの塔』でも雷撃があるとはな。私が雷のバリアを使えなかったら、全員消し炭だ」


「なんだ、自慢か? それ」とエドガーが茶々を入れる。


「違う。それだけ気の抜けない場所だと再確認しただけだ。ああ、念のためライジング・ブレスをかけなおしておこう」と、俺達がまた、温かい光に包まれている、と、ゼロがいきなり。


「エリザベート。魔力、精神力等の低下が懸念されます。動力を補給するべきだと思います。これでよろしいですか、マスターアポロ」


 え! いきなり俺に話題を振るって! でも、甲冑を身にまとい、表情も分からない彼女。ゼロが言うことは正しいと思い、俺はマジック・ポーションを彼女に渡す。彼女はメットを一部外し、ゆっくりと飲み干した。


「失礼した」と歩き出そうとする彼女の肩をエドガーがつかむ。


「おいおい、ヴァルキリーさんよ。この場所で一番頼りになるのは、あんたなんだぜ。体力魔力が不十分な状態で、俺らまで犬死は御免だ。さすがに罠があった場所でまた、なんてないだろう。少しだけ進んだ場所で、また少し休んだ方がいいんじゃねえのか?」


 エリザベートは、固まったまま、でも、ゆっくりと「そう、だな。分かった。回復させる」と言った。


 彼女は、普段どういう生活をしているのだろうか。ヴァルキリーの生活ということの想像がつかない。個人的な興味、好奇心もあるけれど、人としての彼女のことをもっと知りたい気持ちもある。断られるのを覚悟で、壁に軽く背を持たれかけているエリザベートに尋ねてみた。彼女は少し間を置き、


「私達は、主神に仕える者。適性に応じて、布教に務める者、寺院を守り神託しんたくを聴く者、私のように、魔物を浄化する、そして、勇士をヴァルハラへと連れて行く者」


「エリザベート、ヴァルハラって、何? どこ? 死んだ時に行く場所?」


「そうだ。しかし、選ばれた勇士だけが赴くことができる、来るべき対戦の為の場所だ」


 それって、死んだ後も、その選ばれた勇士は休むことも許されずに戦い続けることなのか? と疑問がわいたが、さすがに口に出来ずにいると、蓮さんが、冷静に、


「それでは、君が忌み嫌う修羅道に堕ちた者と同じではないか。死後も戦い続けるというかせをはめるのが、君のさだめか」


 俺はびくり、としてしまったが、エリザベートは身動き一つせず、


「なんとでも言え。私は依頼をして、お前たちの力を借りる。それだけだ。過去の事を蒸し返すつもりはもうない」


 過去の事? それにしても、蓮さんがここまでつっかかるのは、何があったんだ? でも、これこそ絶対に聞けないし、人には聞かない方がいいことがあること位、分かる。そんな俺の服の裾を、小さな子供のようにゼロが引っ張る。


「ん、どしたの?」


すると小声で「マスターアポロ。意見の相違が起きているようなのですが、僕に発言権をいただけますか?」


何でそんな変な言い方をしているんだ? あ! 彼なりに「空気を読んで」いるのか? ツッコミたいが、あ、後にしよう……


「ゼロ、自由に喋っていいよ、どうしたの?」


「ここから三十メートル程度先に、通過すると、先端が鋭い金属が発射される、それに加えて、金属片の詰まった爆弾が破裂する罠があります。今すぐ破壊すべきだともいますが、どうしましょうか?」


「さすがゼロ!! そうか、この場所でも金属や機械とかの情報なら感知できるんだね、ありがとう! で、どうしようか。破壊って、危険はないの?」


 すると、エドガーが「ちょっと腕がなまってるし、そこで待ってろ」と先に行ってしまう。俺が彼を引き留めるのだが、聞くわけがないし、もう、勝手にしてくれと待っている、と、すさまじい音と、冷気。ここでも、分かる。ダイアモンドブレスだ。


 戻って来たエドガーはゼロに「壁や床、全体に噴射したが、反応はどうなった?」


「起爆となる反応は収まりました。感謝します。リーダーエドガー」


「おう! こう見えて、中々チームワークいいんじゃないの、俺ら」とエドガーがギャグ? を口にしたので、俺もそれに乗って元気よく「そうだよ! 龍騎士に侍に戦乙女に、アンドロイドに、飛揚族とか、すごいよ! こんな強力なパーティなんて大陸中探しても中々ないよ!!」 


そして、静かになった……いいですよ、僕がバカな役をすればいいんですよね……飛べるだけで今回も大して役に立ってないですし……


ダメだダメだ、卑屈になっちゃ。俺ができることを考えよう。それに今はゼロの力と命を預かっていると言ってもいい。緊張感をもって挑まなきゃな。うん。


 って! 


「蓮さん!! 後ろから悪霊みたいなのの反応が!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ