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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
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第十二章 逆さバベルの塔へ

 戻って来たって……自力で? それとも、亡骸で……。ともかく、この依頼は断ることはできないし、俺はやる気満々なんだけど、二人がどうもいつもと調子が違うのが、やだな。でも、二人とも一流の冒険者だし、過去に何かあったにせよ仕事はこなすだろう。余計な詮索はこの位にしよう。


「あ、そういえばゼロ、身体というか、エネルギー? 魔力? の残りは大丈夫? オリーブオイル飲む?」


「オリーブオイル?」と不審そうな声のエリザベート。まあ、流石にそうでしょうね……


「マスターアポロ。稼働値、八割以上残っております。予備のバッテリーも蓄電中です。万全を期すなら、二、三時間日向ぼっこをしたい所でありますが、このままでも十分お役に立てるかと思います」


「二、三時間、日向ぼっこするわけねーだろうが! いくぞ!」というエドガーの声イライラした声に「イエス、リーダーエドガー」と冷静に答えるから、エドガーも怒っているのだか、笑っているのか、変な顔をしている。そしてエリザベートに向かって、


「今回の依頼者はお前だ。でも、このパーティの頭は俺で、個々の能力は高くとも、俺の指示で連携をとっていける。もし戦闘になったら、俺の指示に従うこと。いいな」


「分かった」とエリザベートは口にした。これで、いいのかな? どうにかなるのかなあ、と思っていると、いきなり、何かの魔法がかかった。暖かい、日光に包まれたかのような。いや、もっと強い暖かさ。まるで肌の上に光の皮膚ができたかのような。


「ライジング・ブレスの魔法を全員にかけておいた。あの塔での、様々な状態異常から身を守ってくれるだろう。ただ、効果が強力なのだが、効果が短い時もある。その時はかけなおすから、気軽に言って欲しい」


「はい。よろしくお願いします!」と俺が手を出すと、彼女は一瞬間を置いて「よろしく」と握手をしてくれた。やっぱりこのムードで仲良く、は、難しいかな……でも、すごく役に立つ魔法だなあ。きっと高レベル何だろう。噂だけど、バリアとかなしでここに入ると、力が弱い人はすぐに気が狂うらしいし。


 すり鉢状になった洞窟に向けて、エリザーべートが手に持つコンパスの光を頼りに進んで行き、穴ぼこの一つに入った。その瞬間、この場所が普通の場所ではないのが、分かる。俺の両手の紋章の力が、弱まっているのが分かる。こんなこと今までなかった。紋章のちからなしに強い敵と渡り合えるような、まともな魔法が使えない俺は、とたんに不安になって、蓮さんにぼそっと言うと、


「能力制限がかかるエリア、魔力がきかないエリア、重力が何倍にもなるエリア、毒霧に満ちたエリア、様々な罠が待ち構えている。俺やエドガーのように体力気力だけで乗り越えられない箇所もあるだろう。補助魔法が得意らしい彼女の力を遠慮なく借りて進むんだ。でなければ、犬死することになる」


 蓮さんの言葉に身が引き締まる。今までの遺跡とかだって十分危険だったけれど、このダンジョンなんて上層部にしか行った人がいないらしいという、本当に恐ろしいダンジョンなのだ。エリザベートの依頼だけど、彼女がいなければどうなったことやら……


 そんなこんなで注意しながら進んで行く。『普通の洞窟』に行ったことがない俺は、ここの殺風景な岩肌が、やけに恐ろしいもののように思えて来る。突然何かが飛び出してきて、俺の心臓を狙っているかのような。


 あ、っと気が付いた。軽やかな足取りのエドガーが「お前の魔法便利だな」と小声で口にした。そう、毒霧らしき物が噴射されているのに、俺達はエリザベートの祝福の魔法で全く平気だったのだ。彼女がいなかったらどうしていたのだろう? エドガーは生身でこんな所を潜り抜けてきたんだよな。俺は生唾を飲み込む。


 でも「魔物がでませんね」と俺がぼそりと口にした。そう、もう十分近く、コンパスの光を頼りに歩いているのだが、魔法が封じられたり(そこから出ると、彼女がライジング・ブレスをかけなおす)とかはあるし、エリザベートの魔法のおかげで防げている場所もあるだろうが、それにしても恐ろしいくらいに、静かだ。


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