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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
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第七章 いざ勝負! そして富豪の頼み


 するとエドガーはそこにあった木のコップを三つ、それにポケットから取り出したサイコロを三つ並べて、


「最初に一つのコップに六面ダイスを一つ入れる。それを、俺が入れ替えたり、中も入れ替えたりする。最終的に、真ん中に入っているダイスの数、その目の合計、二つで三と四なら七。それを言ってみろ。まあ、ここはカジノの街だから、気の利いた腕試しだろ。とりあえず、テストだ。さすがにわけ分からなさ過ぎる奴を同行させるのは、リーダーとしても心配だからな。いいだろ?」


 あんなひどい酔っ払い姿をしていてリーダー! と、思ったが、ゼロは簡単にそれを了解する。でも、もし、失敗したらどうなるんだ? 俺は多分一番緊張しながら、事の成り行きを見守る。


 すると、予想通り、コップの動きが全く見えない! エドガーのなめらかな、まるで「アンドロイド」のような、しなやかで音のない動き。しかも、ダイスの数だけではなく、目まで当てろとか言ってたな。俺なら一生無理な気がする。動体視力を試すにしても、酷じゃないか、と俺の心が不安でいっぱいになってくると、コップが止まった。エドガーが「出目の合計は幾つだ」とさらりと口にした。するとゼロは、


「30です」と答えた。30! は? 何を言っているんだ、と思ったら、エドガーはコップを開け、そこには、6の目のサイコロが5つ並んでいた……


「エドガー! ずるいよこんなの! それに、ゼロは何でこんなのを分かったの? 透視能力? 魔法?」


「いえ、マスター、ダイスを追加してはいけないというルールを、エドガーは口にしていませんから、ずるくありません。そして僕に透視能力はありませんが、ダイスが五個入っていたのは確認できました。そして、話しをしてエドガーはとても自信家で洒落者なので、ゾロ目にするような気がしまして、彼なら一番大きな六にすると思いました。ここは、僕の勘ですね。運が良かった」


 すると、苦笑した顔のエドガーが、ゼロの肩をばしばし叩いて、


「新参者のくせに、まあまあ分かってるじゃねえか。まあ、しゃーない。ヤローばかり増えて仕方ねーけど、まあ、良く分かんねーけど、しばらくよろしくな。あと、お前のマスターはアポロでも、このパーティのリーダーは俺だからな。そのことは忘れるなよ」


 ゼロは俺を見た。俺は慌てて首を縦に振る。


「分かりました。私を役立てて下さい。リーダーエドガー。マスターアポロ。しゅ」と言ったゼロの口を手でふさいで、


「れ、蓮さんそうだ、服を貸してもらえたらと思って! ここだと高い服の店ばかりみたいで。俺じゃ無理で、ゼロと蓮さんなら、裾をまくったりしたら、まだ大丈夫な気がして! 今度の街で俺が服を買うので、すみませんがお願いします!」


「ああ、予備はある。ゼロ、こっちに来てくれ」と言う蓮さんに従うゼロ。ふうう。修羅は禁句だって、今度言わなきゃな……


 それで、武士の恰好? 和装? の長さを、蓮さんが針と糸で直してくれた。それを着たゼロは、何ともいえない異国情緒? みたいな不思議な雰囲気。しいて言えば、富豪のおぼっちゃまが仮装パーティに出ているみたい。しかも、二人並んでいる。俺はエドガーに、


「す、すごいな。蓮さんもアーティファクトが腕にあるし、ダブル・アーティファクト侍みたいで、かっこいいなあ」

 俺が気分よくそう言うと、エドガーはなぜか俺の鼻を強くつまんで、


「おめーよー! もう仕方ねーけど! 俺、銀竜騎士、蓮は侍、ゼロは銃みたいなのを使うんだろ? それでお前が古代魔術師というか、ろくな魔法使えずに接近炎魔法とかだろうが! ほぼ全員前衛の高火力パーティ!! 馬鹿か!! ジェーンみたいな何でもフォローできる奴が一人でもいるならともかく、俺らは特攻隊かよ!! かっこいいなとか言ってる場合か!」


 い、痛い!! でも、合ってる気がする……でも、ヒーラーとかドールマスターとか吟遊詩人とかファランクス(パーティをガードする重装歩兵)とかレンジャーとか、パーティに居れようとしてないじゃん! というか、俺は運よくというかなんかここにいるけど、この二人エドガーとやっていけそうな(レベルの)人とか、ほとんどいないじゃん!


 なんてことは言えないので、エドガー様の指示に従い、身なりを整えて、今回の依頼主の元へと向かった。


 そこは、街の奥にある、何かの宮殿を模しているのだろうか? 古い図鑑で見た建造物というか、悪く言うとちょっと派手で悪趣味な色彩。赤と緑のストライプの屋根をした、大きなお屋敷というか、小城? みたいなデザイン。エドガーと蓮さんの顔パスで中に入ると、壁や床は白い大理石で、そこはきれいだなあと思う。


所々に、高そうな壺と警備員がいる。落ち着かない雰囲気だなあ。でも、やはりお金持ちの屋敷だからか、よくわからないオブジェ? もあるけれど、凄い技術の、まるで生きているかのような神様の石像もあって、目が泳いでしまう。趣味がいいんだか、微妙なんだか、俺が理解できていないだけなのか……


 そうして、ひときわ大きな扉を、両脇にいた二人の警備兵が開く。王様みたいな派手で大きな椅子に座った、青の宝石のローブを身にまとい、口とあごに豊かな髭をたくわえ、褐色の肌をした、生き生きとした表情の男性がいた。彼はにっこりと笑顔を見せるが、なんと、歯の一部が金歯だ! 金持ちのすることは分からん! 彼はそのまま立ち上がると、エドガーと蓮さんに握手をする。


「おお、久しぶりだ。わが友よ! よく来てくれた。君達二人が来てくれたら百人力だ。どんなモンスターがわいても、安心だな。はははは!!! それで、後ろにいる子は何だ? 君らの隠し子か?」


 僕がカッ、とするとそれよりも速くエドガーが言う「ちげーよ、いや、違います。この二人は古代魔術師と、銃使い。若いですがかなりの腕で、うちのパーティの成長株です。戦闘にも役に立つと思います」


 あ、そうか。面倒になるかもしれないし、万が一のことを考えて、アンドロイドって言わない方がいいよな。俺も気をつけよう。あと、エドガーのフォローに、流石リーダーと気分が良くなったが、王様は俺らには興味が無い様で、エドガーと蓮さんに語りかける。


「ギルドで話を聞いていると思うが、中々面倒なんだ。モンスターが一気にわいたり、かと思うと何週間も何もなかったり。根源は、あの逆さバベルの塔にあるはずだが、歴戦の冒険者であっても、浅い階ならともかく、あそこから生きて戻るのは難しい。私も無理を言うつもりは無い。君らの命は貴重だ。希望的観測だが、無限に敵がわき続けるとも思えない。ただ、最近はずっと敵が出てきてないから、私の勘だと、そろそろまた何か来そうな予感がするんだ」


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