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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
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第六章 謎の青年と、マイペースな男達


「マスター、どうかされましたか?」そうマイナス・ゼロが言う。ああ、でもいつまでもこの呼び名は良くないかな。


「なあ、これからは、君の事ゼロって呼んでもいい? あと、俺のことはアポロって呼んで。マスターだと、なんか恥ずかしいし」


「勿論です、マスター」あ、まあ、いいか。もう、俺も考えが追いつかず、というか蓮さんの話も聞きたくて街に戻ろうとする、のだが! 


「ゼロ! 今俺、ズボン脱ぐから、それはいて!! 真面目な話が続いてわっすれてた!! はい、これ!!」


 俺のズボンをはいたゼロは……サイズが……ゼロ、足長い。いや、そんなことはどうでもいい。僕はパンツで歩くのか……幸い、ホテルまでの道のりはそこまで人とすれ違わないですんだ。というか、とにかく前だけを向いてさっさと進むことにする。たどり着いたホテルのフロントで追加料金を支払い、ゼロもベッドで寝かそうとする、のだが、


「マスターアポロ。先程の光景を見たはずです。僕は寝なくても、外で待機できますし、体力も休憩で回復できます」


「そんなことできないよ! ゼロもパーティに加入したいなら、ルールは守ってね」


 ゼロは納得していないようだが、ベッドで横になる。ああ、何だか急に疲れた、眠い。


 のだが、軽く肩を叩かれる。いやいや、もっと寝ていたいんだけど、え? 俺は飛び起きると、そこには蓮さんの姿があった。


「アポロ、目覚めたら、不思議な青年が寝ているのだが、知っているか? 後、自分の身体にアーティファクトが入ってからか、なんとなく分かる。寝ている彼も、もしや、アーティファクトの青年なのか? 悪いが調べてくれ」


 俺は最初に何を言えばいいのか、と悩みながらも、数時間前に会ったことを全て話した。さすがに考え込む蓮さん。


「さすがにそれは、専門家でも難しいのではないか? しかし、アーティファクトが壊れてデタラメなことを言っているというのも、考えにくい。彼は記憶に混同はあっても、嘘をついていないと思う。それで、どうだ。アポロは彼を仲間にしたいのか?」


 改めて言われると、ちょっとひるんだ。ゼロのことを僕は知らない。それにゼロが言っていることも。でも、彼をこのまま見捨てたりなんてできない。


「蓮さん、新参者の俺が言うのもおこがましいのですが、俺ができる範囲で、彼の面倒を見ます。彼はすごい能力を秘めているようですが、常識がまるでないのです。でも、おねがいします。彼を、パーティに加えても、それか、彼が独り立ちできるまで、一緒に居てもいいですか」


「いいよ。エドガーの意見も聞くべきだが、まあ、エドガーは気まぐれで返事をする時もあるし、気にするな。何より、放っておけないんだろ、その友人の事」


 蓮さん、本当に優しいなあ。そう俺が心から感謝の心で一杯になっていると、


「友人ではなく、マスターです。修羅、蓮」


 瞳を開けずに、ゼロがそう口にすると、蓮さんの顔に冷たい物が走る。こ、こいつ! せっかくフォローしてくれてるのに!


「そうか。でも、僕にとっては友人だからな。失礼。君は、どういう攻撃技を使えるんだ?」


「少し、調整が必要ですが、波動砲や分子分解、絶対零度砲、エメラルド・ガトリングガンと言ったものが現在、チャージなしで使用できると思いますが、マスター、蓮、この建物が倒壊する恐れがありますが、試し打ちを行いますか?」


「するわけないだろー! ばかー!!」と俺が怒ると、半笑いの蓮さんが、


「手合わせはしていないが、今回のクエストに心強いじゃないか。まあ、彼の実力を見るのが楽しみだ。昔はどこかの軍隊にいたんじゃないか?」


 蓮さん、相変わらず楽天家というか、と思っていると、静かな声でゼロが言う。


「そう、です。そう、そのようですね……軍。規律のある……似たような所にいたと思います。それは、嫌ではなかった。そのはずです。でも、私は、マスターといたかった」


 どういう意味だ? 本当に軍用兵器? だったのか? なんか、話しが重くなったな……でも、俺が声をかけて、ゼロが喜ぶのか、反応するのかが分からない。根気よく続ければ、彼も、分かってくれるのだろうか?


 それで、俺が朝食はどうするかたずねてみると、水と日光がいいそうだ。植物か! と思ったが、武器やらを作る時は、体内に鉱物を摂取して精製する作業が必要とのこと。自分の身体で錬金術師の能力が使えるってことなのか? それで部屋に居たいというので、蓮さんと二人、食堂で食事をとる。トーストに厚いベーコンに、スクランブルエッグの、普通だけど、結構おいしい。でも、問題はそうではなくて、


「蓮さん、あの、ゼロなんですけど。記憶喪失のアンドロイドで、俺を主人と勘違いしているか、本当に何かつながりがある存在で。本当に、彼をパーティに入れてもいいですか?」


 蓮さんはナイフを持っている手を止め、


「大丈夫。勘でしかないが、彼から邪気は感じない。だが邪気が無い故に、敵対する可能性もある。いざとなれば死ぬ気で勝負だな」とニヤリ。ほんとうに、戦うのがお好きなんですね……でも、ゼロを受け入れるというか、容認してくれているのはありがたい。問題はエドガーなんだけれど、どうしよう。まあ、なるようになるしかないけれども。だけど、見てはいないがかなり強いはずだから、エドガーも悪い反応はしないはずなんだけどなあ。


 そのエドガーは、昼近くになっても来なかった。昼前にはチェックアウトするはずなのになあと、俺が一人うろうろしているのを、じいーっと見続けるゼロ。落ち着かない。あ!

やっと来た!! 扉を開いた大男、うっ、酒臭い! おまけになんかデレデレした顔で、なんと! いきなりゼロに抱き着いてきた!!


「おーかわいいなー。君、名前なんて言うの? 俺、エドガー。メサイア大陸一の凄腕の剣士。この前なんてスゲーモンスター倒してきてさぁ、君の事も守れる自信あるぜ。ちょっと、一杯やらね。いい店知ってんだ」


「マスター、この方がエドガーですか? 龍人ですね。確かに強そうです。しかし、アンドロイドはマスターとその従者の盾となり剣となる存在です。そのようにご承知おきを」


「なあなあ、そんなかたっ苦しいこと言わないでさあ、先ずは、酒飲んで、お互いのこと話さないと、何も始まらないぜ」


「そうですか。でも、申しわけないのですが、僕は記憶の大半を失っているんです」


「そうかそうか、だったらよう、俺が、お前の記憶、埋めてやるから、安心して俺に任せろよ」


「ほう! そんな高等技術を龍人は持ち合わせていたのですか。全くデータにありませんでした」


「なんでもあるよ。今夜は君の為に、何でもしてやるよ」


「この馬鹿どもいい加減にしろ!!!」と、僕が、初めて使う魔法、水魔法の低級のヒールは使えるけど、解毒作用のあるキュア・ポイズン、みたいなのを始めて実際に人に使ってみる、と。シラフに戻ったらしいエドガー、大声を出して!


「おおおお前! 誰だ!! しかもお前、男? は? ちょっと待て、今は何時だ? ええと、最後に会ったのは……」と、そのエドガーの頭を蓮さんがポカリ!


「エドガーいい加減にしろ、彼はゼロ。アポロの従者である、高性能アーティファクト・アンドロイドだ。詳しい説明はマスターである、アポロ、頼む」


 え! 説明と言われても! とはいえ、俺が説明しなければ誰ができるんだ、という事で、ゼロと会ってからのことを、未だ酔いがさめてないのか面倒くさいのか理解しがたいのか、俺は三回も説明をした。


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