表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
58/302

第五章 エメラルドの青年

それにしても、街の入り口の電灯は消えているはずなのに、お店の光はちらほら灯っているようだし、人波も少しだけある。さすが眠らない大歓楽街といったところなのかな? 俺は何だかむずむずして、羽を広げると、飛翔し、上空からこの街を見てみた。


「綺麗だ」と思わずつぶやく。何だか少しだけ、数千年前の高度な機械の技術の街を見た気がした。何の根拠もないけれども。でも、高度な魔法技術を手に入れた俺達は、失われた機械文明と同じような暮らしや戦闘技術を持っているのかもしれない。


 そんな風にぼんやりと思いながら、街の周りを軽く飛んでいると、あ、あれ? 何でガラクタウンみたいなスクラップの山がここにもあるんだ? 俺はそこに下りたってみる。ライトを使い辺りを照らすと、見慣れた光景。


 クズ鉄に機械らしき物の化石。モンスターや食料のゴミの放つ腐臭と独特の金属臭が混ざり合うにおい。それを食料とするたくましい金属虫が、俺の登場でカサカサと音を立てて逃げ出す。 


 いや、違う! 変だ! 感じる強いアーティファクト反応。それを発しているのは、と、俺はその小山の周りを歩くと、いた! それを放っているのは、全裸で寝ている青年だった。と、とにかくこんな所に全裸で寝ているのは、おかしい、まずい。俺は彼の頬を軽く叩いて、


「ちょっと、こんな所で服も着てないのはまずいよ、どうかしたの?」


 すると彼はだるそうに瞳を開けて、立ち上がった。彼、銀水晶の髪、エメラルドグリーンの瞳。少し優男っぽい甘いマスクに、長身。一見吟遊詩人か、妖精のようだ、が、そんなわけがない! だってこんなに強いアーティファクト反応があるんだもん!


「どうもしてない。ただ、数十年、位、色んな魔導士がいたけど、僕に気づいたのは君だけだ。君は何だ?」


 逆に質問されてしまって、こっちが質問したいよと思いながらも答える「僕は古代魔術師で飛陽族のアポロ。今回はパーティのリーダーのエドガーと蓮さんの依頼で、この街に来たんだよ」


 すると、彼はいきなり俺の髪の毛を一本抜いた。いてっ! そしてそれを、食べた! は? あのサファイア・ドラゴンのレヴィンみたいじゃないか。そう、だ、彼は、アンドロイドってことなんだよな? 


 なんて俺が唖然としていると、彼は俺にひざまずいて、俺の手の甲に口づけた。


「やっと会えました。マイロード、アポロ。僕、マイナス・ゼロは、マイロードに生涯の忠誠を誓います」


 えええええ!!? は初めてのキス、は、女の子が、良かった、ぞ……で、でも、唇にしてないからセーフか。って! 違う! 彼は、おかしい!!


「ねえ、マイナス・ゼロ。俺はただの17歳くらいの青年だから、俺より見た目が年上の、君の師匠? みたいな立場ってのは難しい話だよ。それに俺は昔から今までの記憶もあるし」


 そう、言いながら、少しだけ、引っかかった。俺が、捨て子だということ。遺跡での父さんの記憶は嘘ではない。だって力も宝石も記憶もある。でも、彼の言葉を、どこかで否定しきれずにいる。俺の知らない俺。ダメだ、考え過ぎだ! しかし彼は綺麗な落ち着いた声で、


「DNA、塩基配列が一致しました。これでマスターでないというのは、ありえません。おまけに言うと、名前も同じなのです。こんな偶然はありえないと断言できます」


「え、塩基配列?」


「塩基配列とは、DNA、RNAなどの核酸において、それを構成しているヌクレオチドの結合順を、ヌクレオチドの一部をなす有機塩基類の種類に注目して記述する方法、あるいは記述したもののこと。です」


 あ、頭が痛い……さっぱり分からない……何を彼に言えばいいのかも分からない……そんな困った顔の俺を見て察してくれたのか、彼は、


「マスター、補足します。DNA はデオキシリボース(五炭糖)とリン酸、塩基 から構成される……」


「いや、もうそこはいい!! 俺全然分からないもん!! 多分君は古代の高度な知識を使って喋っているんだと思う。俺も古代魔術師だし、アーティファクトの力がどの位凄いか位の差は分かる。君は、凄いよ。君は、アンドロイドだよね。前に仲良くしていた、虹色の天使でアーティファクトの少女も物凄かったけど、君は、それ以上かもしれない」


「でしたらマスター。僕を従者として迎え入れてくれますね。僕は必ず役に立ちます。よろしくお願いいたします」と、マイナス・ゼロは。一礼。くっ! こいつこういう所だけ人間臭くて抜け目ないな! でも放っておくこともできないし。でも、パーティに入るなら、蓮さんとエドガーの許可が必要だし。そう、彼のことを全然知らない。教えてもらわないと!


「分かりません」


「は?」


「僕は、マスターに仕えるために、訓練を受けています。なので、番号がマイナス・ゼロ。それ以外の記憶は、断片的にしか残っていません」


「その、マスターは、さっき言ってた、難しい技術を研究していた魔導士みたいなものなの?」


「はい。そして前マスターは言いました『私の命はお前と違い必ず枯れる。その時、新しいマスターに仕えろ』と」


 ちょっと、頭が混乱してきたぞ。整理しよう。マイナス・ゼロは、数千年前の存在か、或いはその技術や知識を受け継ぐ者。そして、前マスターはその技術を絶やさないように試みていた。ここで俺が出てくるのが謎なんだよなあ。俺が会った父さんの幻影が、そういう特殊な魔導士? みたいな機械を学んでいる人ならまだわかるけど……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ