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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第四巻 ジュエル・アンドロイドと憂いの戦乙女
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第二章 懐かしのガラクタウンへ


 それから、雑用品を買ったり、お土産用の、高いお菓子も買ってみる。当たり前だが、高いお菓子は、味のコクが違うというか、おいしいのだ。ガラクタウンでは売ってないだろうしね。


 そして俺らは、ナイトホルムへの直行の、すごく早いらしい(その分値段も高め)の馬車に乗り込んだ。幸い、またお客さんは俺達だけだった。エドガーに交渉してもらい、多めに料金を支払うことで、ガラクタウンに寄って、一時間少々、滞在することを許された。


 御者のおじさんによると、この足の速い馬車だとガラクタウンまで、三時間はかからないという。嬉しさと興奮、そして不安が入り混じる、変な気分。何だか、もやもやするんだ。皆どうしてるのかなあとか、一人前になるまで戻らないと思ったこととか。レキトがくれたあの龍の瞳のような、光源を発するアイテムとか。


 そんな俺の感傷を吹き飛ばすかのように、馬車は物凄いスピードで走り出して行く。これは、普通の馬車の、馬のスピードではない? でも、魔力反応なんてなかったぞ、多分。その上、早いのに、とても揺れが少なくて乗り心地が良いのだ。俺は蓮さんに聞いて見ると、


「運が良かった。この馬は後ろ足が綺麗な白色だっただろ。これはトウカイテイオーという馬で、我がジパングでも名のある馬なんだ。素早く乗り心地が良く、良質の品種だ。たまにこういう当たりの馬車がある。その分、料金が高かったりするけどな」


「へー! 今の言い方だと、蓮さんも直接この馬に乗ったことがあるんですか?」


「ああ、馬術はそれなりに心得ている。流鏑馬やぶさめと言って、疾走する馬上から的に矢を射る、ジパングの伝統的な稽古や儀式があるんだ。しかし、この刀を手にしてからは、もう、僕は他の武器が文字通り、使えなくなってしまってね。ああ、それなりに扱う、なら出来るが、それで戦いは務まらない。自分で選んだ道とはいえ、新しい武器やアイテムに目を輝かせる二人を見ると、少しだけ嫉妬してしまうな」


 蓮さんはそう言って微笑んだ。そうなんだ。あの裏・村正は、蓮さんを、縛り付けてはなしてはくれないんだ。でも、蓮さんはそれを承知で封印を解いたはずで、俺が声をかけられずにいると、エドガーが投げやりな声で、


「いいんだよ、蓮はそれで! こいつが他の武器や魔法を使いこなしてみろ。大陸最強の俺様の出番が減るだろうが」


 蓮さんは笑って「大陸最強と言えば、これから向かうナイトホルム、逆さバベルの依頼を受けた人達もかなりの腕前なんだろうな。わくわくする」


「けっ、どうせそれなりの奴らだろうが。どうでもいいけどよ」とエドガーが毒づくが、俺は「なあなあ、その冒険者たち、パーティに誘うのはどうなの? 俺が言うのも何だけど、この三人、強力な前衛二人と攻撃魔法のほぼ前衛って、バランス悪くない? ヒーラーか補助系の人がいたらいいんだけど……」


 それにエドガーは大声で反応して「俺の御眼鏡に叶う奴なんてそうそういねーぞ。かなりの強さを誇るか、美女か。あ、まあ、美女は冒険者にならねーけど!」


 う、参考にならないな……でもこの気難しい二人に、なじめる人も少ないだろうというのも事実だろうし。俺は蓮さんに聞いて見ると「今の三人でいいだろう。必要ならその時にギルドでその能力を持った者を募ろう」とクールな反応。ヒーラーとか補助の力を持ったバードとかいたらいいし、シーフがいれば俺より精度の高い罠感知ができる、と言ってみるのだが、二人は薄い反応。


 そう、か。ジェーンも言っていたが今までも上手く行かなかったし、何より、この二人だけでも、大抵の敵も罠もブチ倒して来れたんだよなあ……。俺、レア職の、アーティファクトの力を開放できる古代魔術師で、なんかわからないけど一緒にいられて良かったです……。早く、二人の力に、なりたいな。お荷物なんて、嫌なんだ。


 そんなこんなで、ついてしまった。ガラクタウン。下りてお坊ちゃまエドガーの第一声は、「存在は知っているけど、汚ねえな」だった。……おっしゃる通りです。鉄くずやジャンクをあさり、リアカーを引く子供、身なりなんて構わない労働者。建物も所々薄汚れていて、住人誰も気にしない。懐かしい街だけれど、俺だって、好きであり、嫌いな街。しかも、向かう先はスラムだ。


「臭うな」と、今度は蓮さんまで口にした。そうだ。住んでいた時はまだ耐えられたけど、久しぶりに帰ってくると、ちょっと耐えられない。問題は、きちんとしたトイレがないのと、身体を洗うきれいな水がないから……でも、少し前まで俺もここにいた。それにここにいる人達に罪なんてない。俺は二人に謝り、馬車で待っていて下さいと言ったが、二人は黙ってついて来てくれた。


 少し、緊張する。粗末な小屋の、厚い布の扉を開いてみると、小さい子をあやしている、歯の一本かけた彼がこちらを向き、その目を見開いて、


「あ、アポロ? アポロ! え! 後ろにいるのは、お侍様と、騎士様? ど、どうして?  え? それに、君は、そんな立派な鎧もつけて、は、羽もある!! アポロ? だよね?」


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