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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第三巻 我がまま御曹司の帰郷。 サファイアドラゴンと銀龍聖騎士の試練
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第二十章 不思議な輝き

 鉱山は割と一本道で、ひんやりとして涼し気だ。時折ジェーンが壁を指さし、そこをエドガーが大きめのナイフで削って塊を取り出してみる。それをレヴィンに見せてみるが、レヴィンは首を横に振る、その繰り返し。


「つーかよぉ、本当にここにそれがあんのかよ」とエドガーがぼやく。


「仕方ないじゃない、ここ意外にありそうな場所ってないんでしょ」とジェーン。


 俺と蓮さんは役に立てないらしい。レヴィンは元から暇つぶしと言うか、見学というか、時折手伝ってくれるというか、あ、そうだよ!


「レヴィン! 君なら調べられるんじゃないの?」


 するとレヴィンは欠伸をしながら「お前さあ、これ、俺の依頼。ここまで運んであげてるだけでも超大サービスだろ」


 う、そうでした……すっかり忘れてたこれはクエストなんだ……あ、そういえば、あの変な手紙に、何で俺の名前も載ってた、俺の名前も知ってたのか尋ねると、


「言っただろ、子分が沢山いるんだ。それにエドガーや蓮といるなんて目立つしな」とニヤリと笑う。さ、さすがですね……でも、あの滅茶苦茶な手紙は……後、あの内容の手紙を色んなギルドに配りまくったのだろうか……


 結構時間が経った。手伝えないのが歯がゆい。当たり前なのかもしれないが、その魔力を秘めたサファイアは、一向に出そうにない。ジェーンが大きく伸びをして、


「ねえ、悪いけどさ、私魔力尽きてきた。マジックポーション飲むし、ちょい休憩しよ」


 その提案を断る人はいなかった。俺には分からないけど、カンディと言う魔法は魔力を使うのかな。ああ、魔力感知みたいに一瞬ではなく、ずっと使いながらなのかなあ。レベルの高い魔法も、消耗が多いから大変だなあ。


「ジェーン、俺もマジックポーションあるけど、飲む?」ジェーンはにっこり笑って、手の平を「大丈夫」と見せ、瞳を閉じた。軽い瞑想状態に入っているらしい。ここは静かにしなきゃなあ。


 で、誰も喋らない、というのも何だか味気ないというか、俺の悪い癖、同じ所にじっとしていられなくて、何だかうずうずしてきてしまう。ふっ、と蓮さんが奥の方に歩き出して行ったので、俺はエドガーに小声で、フォルセティさんと蓮さんの恐ろしい「演習」の様子を話してみると、エドガーはさも嫌そうな顔をして、


「狂人の相手は狂人にしか務まらないんだよ。見なかったことにしろ」


 う、ジェーンと似たようなことを言う。ジョークなのか本気なのか分からないぞ……そんなこんなで蓮さんが戻って来る。


「随分ここの鉱山は広いようだ。ただ、結界があるからか、魔物が出ないだけいい」


 あれ? 蓮さんって魔物を倒すのが好きじゃないのかな? そうか、多分、強敵と戦うのが、とても好きなんだ。差はあれ、フォルセティさんやエドガーとも似てるな。俺としては、色んなモンスターを知らないから、色んなのを見てみたいって気持ちがあるけど。


 ジェーンがもう平気だって言って、ジェーンとエドガーで作業を開始する。俺も手伝えればいいんだけどなあ……さすがに魔力を帯びた特殊な宝石でも、アーティファクトや機械ではないし、むしろ、生体反応があるとも言っていたしな。生体反応? 宝石が? だからカンディの魔法で探せるのだろうけれど、不思議だなあと今更レヴィンに言うと、


「ああ、だってその当たりの宝石には、俺らの龍の魂が封じ込められているから、生体反応だってあってもいいだろ」


「龍の魂? って、なんですか?」とにかく何だか凄そうなのは分かるが、わくわくして尋ねてみると、レヴィンはたるそうに、


「色々だよ。あー飽きてきたーそろそろお前ら見つけろよ。俺帰りたくなってきた、帰ろっかなー」


 それは、移動手段という意味だけでも、まずい! 俺はどうにかしてレヴィンの気がまぎれるようなことを考えたけれども、何も思いつかないし、あの気まぐれなレヴィンが付け焼刃の芸で喜ぶとも思えない。すると蓮さんがレヴィンの前に立ち、小さな陶器の王冠を取り出した。


「君がいなかったときにもいただいたんだ。僕がガレットの当たりだ。レヴィンにあげよう」


 あ、あの夕食の時に食べていたお菓子の、当たり? あのパイの中に何か入っていたのか

? それを見るとレヴィンの顔色がみるみる変わり、


「蓮、お前は太っ腹だな! さすが修羅!」


 ニコニコ顔のレヴィンと、顔が半分ひきつっている蓮さん……修羅ってからかわれる度に、蓮さんの中の修羅が暴れ出す気がする……


「あ! ここ、見て!」とジェーンが言うと、レヴィンが素早くそちらに向かう。

「お、いいぞいいぞ、エドガー、気を付けて周囲から掘り出せよ」


 エドガーは黙ってそれに従い、今度はレヴィンの指示で、ジェーンが水の鋭いナイフのような水流で、その岩を削って行くと、あ、俺にでも感じられる魔力反応が! そして、中から、輝きこそないものの、強力な魔法石の原石が!


 と!! それをいきなりレヴィンが飲み込んだ!! 俺が口をあんぐり開けて、何も言えないでいる、何? なんとかメダイはどうなった? それともこれがドラゴンの食料で、それを食べたかったのか? でも、そうだとしても、レヴィンの依頼だからそれは、しかたがない、のか?


 俺が混乱状態になっていると、レヴィンは、なんと、自分の手に、先程口にした原石を吐き出した。それは、正に魅惑の宝石とでも言えばいいのか、不思議な魔力反応のある青色の吸い込まれそうな輝き。中央に光のようなものがある、不思議なサファイア。


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