表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第一巻 廃墟に降り立つ太陽王アポロ
5/302

第五章 対決、そして闇の中へ

「修羅道とは、見境もなく人を切り続ける地獄道。切り続け、殺されても地獄、己の修羅にのまれて狂えども地獄。俺の裏・村正は血が欲しいと泣くんだ。分かるか? これを愛刀として、修羅へと堕ちる覚悟がお前にはあるか?」


 俺の、のど元にはうっすらと赤い光をまとった、光のように輝かしい刃。そして、赤髪の下、炎に照らされた灰色の瞳が爛々(らんらん)と輝く。


 固まった。あまりの恐怖に固まった。僕は動けないし、何も口に出来なかった。あの時とは違う、心臓を捕まれ全身の血が冷え、俺は死というものを明確に意識した。

 

 目の前の修羅は、微笑んだ。


「どうした、緊張したのか。すまない。昔からエドガーに、お前のギャグはセンスがないって言われていたっけな。これで気分転換できたか? おやすみ」


 そう言いながら蓮さんは先程の位置に戻り瞳を閉じる。


 って!! レベル55の修羅に裏・村正を突き付けられギャグのセンスとかって話じゃないって!!!! この人天然なのか怒っているのかギャグなのかわかんねーよ!!!


 もう、今更今更ですけれど、レベル40、50、60代の冒険者様の頭のすごさとヤバさが俺にもようやく分かってまいりました。


 もう、ふと、疲れ、俺は眠りに落ちる。


 朝起きたのは、俺が最後で、慌てて火でお湯を沸かし、紅茶を飲みながら、クッキーをかじる。


「だからあ! お前はお嬢様かよ! 朝からティータイムしてんな! これから死ぬかもしれない遺跡に行くんだぞ!」


 エドガーが情けない声をあげる、でも、


「ちゃんと食事をとらないと力が出ないし、ちょっとでもお腹に入れておいた方がいいと思って」


「ま、そりゃ正論だ」とエドガー。え、からかわれてただけってこと? でも俺は大人なので、黙ってさっさと食事を終える。


「私も準備終わったし、そろそろ行かない? エドガーとレンは?」


 二人はうなずき、俺らは出発する。エドガーによると、一時間と少しで目的地に着くそうだ。


 昨日随分進んだんだなあと思いながらも、彼らについて行く。昨日は歩きながら多少の雑談もあったはずだが、みんな黙って歩く。多分、一度も『冒険』をしたことがない僕よりも、彼らの方が緊張しているというか、この遺跡の危険なことを肌で感じているのだろうか。


「これだ。ポータルもある」


 そう言ったのは蓮さんだった。目の前には確かにあの丸い魔法陣。そして肝心の遺跡はというと、かなり壊れていて、円柱やら何か広場らしきだったものもあるが、言われないとこれがその遺跡だと分からないだろう。


「ここに、入口がある」と蓮さんがどこかのボタンを押した? そうすると、床の一部が開いて、地下への扉が開いた。


「疲れている者はいるか? 大丈夫ならば、このまま行くぞ」


 蓮さんの言葉に全員が同意した。エドガーとレンさんを先頭にして、進んで行く。階段の幅だけでも、あの大きな二人が楽に通れるような広さで、この遺跡はかなりの規模の物ではないのだろうか?


 少し進むと広い部屋に出た。すごい! レンガ造りだと思っていた壁やら床は、全て蛍光の緑色でうっすらと、点滅している。魔力を、感じる。


 ここには扉や下り階段というものが見当たらなかった。でも、それがないことはありえないはずで、


 ジェーンが魔力のフィールド? まく? みたいなのを広げる。


「ここの、魔導士の私でも魔力を注げば、起動するみたい。そうだよね、蓮」


「ああ、それと同時に、この正面にある、あの巨大なガーディアンが侵入者を排除する。奴はとても硬く、僕の刀では不向きだ。だから鳳凰を召喚したのだが、火属性は効果的だが、暴走状態になってしまい」


「え? 鳳凰って、伝説の炎の鳥だよね? あ、あれ?」と俺が思わず口をはさむと、エドガーが、


「俺達がすごいのは今更なんだから、もういいだろ。それで、ジェーンはどういう策をとる?」


「そうね、酸系の魔法か、電気系の魔法、それでもだめなら敵の防御力を下げる軟化の呪文をかける。効果があったら、二人のいつものコンビネーションでたたんじゃって」


「おう、それが良さそうだな。まあ、今回は俺もいるしな。じゃあ、二人とも準備はいいか? あ、アポロは動くなよ。お前にも出番はあるから、今は大人しくしておけ」


 俺はうなずいた。ジェーンが小声で「いくよ」と独り言のように言って、魔力を一気に注入する。


 すると、壁全体が緑色に発光する。きれいだ。でも、そんなこと言ってられない。5、6メートル位の巨大なガーディアン。それは大きな緑色の人型の物体で、しかし目も口も鼻もない。しかし目覚めた彼はゆっくりと、こちらへ向かって来る。


むしばめ、降り注げ、酸の豪雨よ、アシッド・ヘヴィ・レイン!!」


 強力な酸の豪雨がガーディアンに降り注ぐ。しかし、彼は変色した様子もないし、動きにも変わりがない。


 と、俺は敵を見ていたはずなのに、自分の目では追いつかなかった。エドガーは恐るべき速さで、ワープしたかのようにガーディアンの足元で、大剣を振り下ろしていた。そしてすぐに距離をとり、大声で言う。


「かなりの硬さだ。物理攻撃だと厳しいかもしれない。ジェーン、頼む!」


「避けて!」とジェーンの声がして、大きな稲妻かエネルギーらしきものが、敵へと放射される。


 すると、敵の動きに乱れのようなものが出てきた。そしてその身体の色も、少し退色しているように見える。


 あ、と思う間もなく、エドガーとレンさんは両側から敵を囲み、剣と刀を振るう。それは確実にきいていて、きいているということはつまり、あのガーディアンは瞬時にボロボロの岩のかたまりになり、転がっていた。


「このパーティもやっぱ悪くねえな」とエドガーが口にする。あ、そうか。前にもパーティを組んでいたからこその、コンビネーションでもあるんだなあ。それにしてもすごいけど。


「でもさ、結局、この扉開く気配、ないみたいなんだけど」とジェーンが扉に触れて言う。

エドガーや蓮さんも扉を調査して入りみたいだが、ふと、俺は倒されたガーディアンの一部が気になった。それに触れてみる、と。岩の中から緑色の球体が出現し、それが発光すると、扉も開いていた。


「これが、古代魔術師の力ってやつか」と独り言のようにエドガーが言った。俺も正直分かってないが、そうなんだと思う。それに、何だか、懐かしいような、変な気分がする。心がざわつく。未だかつて感じたことがない気分だ。


 俺らは扉の先へと進む。階段を下り、次の部屋には、ガーディアンらしきものはなく、何かの絵? 文字が壁一面に描かれていた。その上、扉もなく、下り階段も見えている。


「なにこれ、休息所ってこと? でもみんな平気か。先行っちゃおうか?」とジェーン。


 でも俺は「ちょっと待って」と壁画に触れると、僕の触れた周囲が、ほんのりと緑色になり、映像が、言葉が、流れ込んでくる。


 最初に見えたのは鷹、だった。大空を飛ぶ鷹。それが白い頭巾をかぶり、白いローブを着た人々になって、それから大木を中心に踊る? 儀式をしている映像に、


 はっと、気づくと、僕は無意識に手を離していた。額の汗をぬぐう。ここの膨大な情報量に、身体と精神がついて行けそうになかった。僕は一呼吸おいて、三人に、今見えた物を、説明する。


「鷹、イーグル、か」とエドガーが小声でつぶやいた。


 続いて壁のへんてこな文字か模様に触れる、言葉が頭にわきあがり、俺はそれを口に出す


「えーと、我々は誇り高き鷹の民、大空と大地の間に生き、太陽と木々を愛する。我々の誇りが、この災厄で破壊されようとも、我ら一族の魂は不滅であり、不変である。願わくは、遠い子孫よ、我らが意志を継ぎ、誇り高く……そこで読めなくなってます」


「やっぱり、空を飛ぶためのアーティファクトがここにあると思って間違いなさそうだな」


 エドガーは少し真剣そうにそう口にした。


「でもさ、重要な仕掛けを起動したのは、やっぱり古代魔術師のアポロじゃん。それがあったとしても、アポロしか使えないんじゃないの?」


 ジェーンの言葉に少し苛立ち気味で、エドガーは返す。


「分かってるそんなこと。でもいいだろ。改造だって大金払えばできるし」


 そうなのだ。普通アーティファクトを使えるのはごく一部の人間だが、大金を支払えば、武器や防具にはめ込んだり、本来のアーティファクトの力を十分に発揮してはいないらしいが、できる、らしいのだ。貧乏な僕は、詳しく知らないよ!


「え、だったら、エドガーは何かアーティファクトを装備にうめ込んでるの?」


「あ? 俺の場合な、スゲー高価な伝説の武器とか使ってるわけ。マジックアイテムと似たようなもんで、そういうのはアーティファクトと相性が悪いんだよ」


 じゃあ、ますますエドガーが欲しがってるのが、少し分からなくなる。空を飛ぶためのアーティファクト。それに何でこだわってるんだろう?


 いや、別に俺もさ、空飛べたらいいなーと思うけど、このパーティを集めて挑むってのは何かの理由があるはずだ。でも、それをごちゃごちゃ言うのはやめようと思った。


「いいか? 先に行くぞ」とレンさん。


 俺らもそれに従った。そこには、三つに分かれた道があった。しかも、その先はかなり不自然に暗い。しかも狭くて、人ひとりが歩くのがやっとかな、という広さ。気が付くと、ジェーンが暗闇に何かの光を投げ込んでいた。それは闇の中に吸い込まれる。


「やっぱりこのダークゾーン、普通のランタンとかトーチの魔法じゃむりみたい。どうする? 一応さあ、敵がいる雰囲気はないみたいなんだけど…」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ