第九章 とまどい
エドガーは、いつもの強気すぎる態度は皆無で、半開きの口で、小さな声で「はい」と言った。こんなエドガー、初めて見た。何があったのかは分からないけど、でも、俺は、去って行こうとするその背に言葉を投げかけた。
「すみません! 俺が言うのは筋違いだとは思いますが、このお屋敷の守護龍の、レヴィンの頼みで、エドガーがここに招待することになりまして……」
すると、彼は振り返り、
「そんなことを知らないと思っているのか。争点が違う。部外者が口を挟むな」
う、そう言われると、俺も何て言ったらいいか分からない……、と、エドガーは立ち上がり、
「失礼致しました。今すぐ出て行きます」と出る準備をし始めて、俺はどうすればいいのか分からずにいると、やかましい足音がして、大声を出しながら現れたのは、
「おい! こいつほんと人殺しだな! わくわくした! お、フォルセティ。久しぶり!」
と、レヴィンが軽い調子でエドガーのお父さん、フォルセティに話しかける。彼は軽く頭を下げ、
「レヴィン殿、お久しぶりです。サファイア・メダイを御所望、ということでしたら、極上の物を御希望かと存じ上げます。大変恐縮ですが、レヴィン殿が満足されるような、大きな原石は今、ないのです」
と、ここで、エドガーのお父さんはエドガーを見て、
「彼をベルメール鉱山に行かせましょう。もう掘り尽くしたかもしれませんが、それでも、良質な魔力を秘めたサファイアは、あそこ以外からでは出ますまい。いいな、そこの戦士」
「わーい! それいいね! 何だか楽しそうだし!」とレヴィンが無責任に言うが、俺はいつエドガーが爆発するか冷や冷やしていて、しかしエドガーは、
「了解した。鉱山へは向かうが、あるかどうかの保証は、できない。これから専門の採掘師を捕まえるのも現実的ではないし、やるだけ、やらせてもらう」
「やるだけやる、ではない。見つかるまで一生戻るな」
俺は耳を疑った。親、だよな。そんなに、縁を切るというのは、そんなに重いことなのか? そして、いつものエドガーは、影も見せず、作業的に「了解した」と言って、素早く旅の準備をすると、部屋を後にする。
俺は、固まった。もしかしなくても、深い事情がある。はっきり言って、良く分からない、他人が立ち入ることはできないことはできないかも。でも! あの聞き慣れた足音をそのまま放っておくわけにはいかない!
俺は急いでエドガーに追いついて、「俺も一緒に行くよ!」と言うのだが、明らかに雰囲気が違う、俺の話を聞いてすらくれない。急に、大陸最強の、俺なんか近寄れない冒険者に見えてきてしまう。どう、すればいいんだ? 見送ればいいのか? でも、協力したらだめなのか? 明らかに大変そうなことなのに!
僕が無言で、少し距離を置きながら背中を追っていると、玄関近くで蓮さんに出会えた! 俺は手身近に事情を話すと、蓮さんは小走りで外に出ていたエドガーの肩をつかんだ。エドガーは無言でこちらを向いた。そして、蓮さんに、
「すぐ戻るから」と言って、門へと向かって行ってしまう。俺は蓮さんを無言で見上げる。
「エドガーは彼の意志で行くんだ。邪魔をするべきではない。ただ、帰りが遅いなら、勝手に行ってやろう。それでいいか、アポロ」
本当は、ついて行きたかった。あのわがままそうなレヴィンを満足させる鉱物を掘り出すなんて、常識的じゃない。それに、パーティってのは助け合うものじゃないのかな。それとも、出しゃばりなだけなのかな。もやもやする。答えが出ない。




