第四章 傲岸なサファイアドラゴンの難題
くうう……言ってることは間違ってないけど! 俺達三人はポータルの中に立ち、「行きますよ!」と俺が声を出して、念じると、全く違う景色、そして足元にはポータル! やった! 成功した! 魔力が上がったおかげかな?
そういえば、黒リンゴの森と言われていたように、周囲の木々には、珍しい、というか、始めて見た、真っ黒いりんごがたわわになっている。
「ねえ、これって食べられるのかな?」と俺が飛び上がり、一つもいでみる。香りは同じで結構いい香りだ。
「嘔吐や下痢をする。味も美味しくないらしい。呪術や魔物の食料らしい」
あ、そうですか……と俺ががっかりしていると、エドガーのコンパスが一点を指している。そこは、黒リンゴの大樹。でも、入口は、ない? しかしエドガーはちゅうちょせずに、その中に入って行く、蓮さんも、それに続くから、俺だって続くしかない。大丈夫だと分かっていても、木に激突するのは抵抗があるが、あったのは広々とした、周囲には明りのある階段だった。
それを無言で歩いて行くエドガー。戸惑い、周囲を見回しながら歩く俺に、蓮さんが、
「ここがサファイア・ドラゴンの住処への最短ルートなんだ。本当に遺跡から彼に会おうとすると、罠や恐ろしい敵がてんこもりの場所を通らねばならないらしい」
「らしい? エドガーもその遺跡を知らないんですか? 最初からこのルートを知ってた?」
「ちげーよ、俺は俺一人でその遺跡を突破して、サファイア・ドラゴンに会った。俺のな、家の紋章にもなっている、守護龍、それがこの、サファイア・ドラゴン様なんだよ!」
何歳かは分からないが、一人でその遺跡を突破したってのもすごい……それに、守護龍なのに、なんでこんなに面倒くさそうにしているんだ? 家を出たことと関係があるのかな?
しばらく歩いていると、扉があり、それをエドガーが開けると、とても大きな、貴族の大広間(実際見たことないけど)みたいな場所に出た。だって、上にはシャンデリア、壁には絵画、机には美味しそうなフルーツ、そして、奥の玉座には、輝かしい存在がいた。
青というよりも虹色のウロコ、金色の瞳。広げてないが、背中には大きな翼があるらしい。美しい。他のドラゴンを実際見たことがないが、彼の美しさは別格ではないだろうか。高さは十メートルといったところか。でも、ドラゴンは自由に身長や姿を変えられるという。その彼の第一声は、
「よう、久しぶりだな、愚民の諸君」
な、なんだ、この美しさと、アホな不良みたいな言葉つかいのギャップは……エドガーは慣れているのか、冷静に返す。
「今日はどこに行きたい? 何が欲しい? もうこれで終いだ。もう俺は十分借りを返した。これ以上要求するなら、相手になる。蓮も、このアーティファクト使いもいるからな。竜が最強だなんて、勘違いするなよ」
「おいおい、そんなケンカ腰は止めろよ。俺はただ、仲良しのエドガー君に頼みごとがあるだけなんだから」
「だから、それはなんだよ、早く言えよ」
「お前の家で作っている、サファイア・メダイと後ガレットも食べたいな。言っておくが、勘当されたお前への当てこすりじゃないぞ。こんなこと頼めるのお前しかいないだろ」
「俺が、勘当されていたとしても?」エドガーは押し殺した声で言った。すると蓮さんが、
「分かった。僕も彼の家には面識がある。ガレットはともかく、サファイア・メダイを譲ってくれるかは分からないが、交渉する。その代わり、今回の件でエドガーへの貸しはチャラだ。こういう強制的な依頼も。それでいいか?」
すると、サファイア・ドラゴンは、顔をひきつらせながら無理やり笑顔を作り、
「お前さ、人間のくせに人間じゃないもんな。ここにいる三人ともそうだけど。そりゃあ言葉にも自信あるよな。お前の汚れきった刀、お前自身の心を写してるぜ。その、修羅ってもんがどの位か、試してみようか?」
「お前が僕を殺したいなら、こちらも望むところだ」え! 蓮さん! そんな安い挑発に乗って!
と、エドガーが大声で言う。
「分かった! どっちももらって来る。それでいいだろ? 行こうぜ、蓮! アポロ!」




