第三章 新しい力の目覚め
俺も、少し言いよどんだ。でも別に、悪いことではない、と思う。アイシャの思いが、超再生を可能にしたのだから。
「はい。あの時説明しておくべきでした。すみません。アイシャのアーティファクトの力を使って、超再生を行えたので、アーティファクトの力が蓮さんにも備わったのだと思います」
「それで、僕は見ていないのだが、アイシャは、元気なのか? 僕の代わりに腕を失ってなんていないのか、正直に、教えて欲しい」
ずっと、蓮さんには引っかかっていたんだ。元気で里に帰ったなんて嘘、バレバレだった。でも、俺は、彼女の為にも、嘘をつくしかなかった。
「アイシャは、強い子で、とてもいい子でした。だから、大丈夫なんです。だから、蓮さんが、気を病むことは、ないと思います」
蓮さんは、少し間を置き、何かに気づいたようだったが、それについては追求しなかった。
「悪かった。アポロにも辛い思いをさせたようだしな。年長者として、少しはいいところを見せなとな。ところで、僕のアーティファクト能力というのは、何なんだ?」
そういえば、そうだった。俺は蓮さんの腕に触れて、軽く解き放つ、と、周囲に大量の薄ピンク色の花びらが舞った。
「これは、我がジパングの国花、サクラ。花吹雪だが、これが、戦闘の役に?」と蓮さんが半信半疑で裏・村正を抜き、その力を、自分で解放、している!? そうか、身体と同化しているからできるのか!
で、桜の花吹雪の中で刀を振るうと、周囲にあった樹木が、いとも簡単に、バターが溶けるように切り落とされて行く。
「な! なんだこれ!!」と戻って来たエドガーが大声を上げる。
「腕がアーティファクト能力を得て、人や獣の肉を切る以外にも、無機物等を切りやすい能力を得たようだ。これで僕も以前のような失態を犯さない。それに、楽しみだな、新しい強敵に会うのが」
エドガーが俺の頭を軽く叩き「どういうことだ、これ?」と不信そうに言うので、俺は言葉を選びながら、説明をする。目の前には、花吹雪を舞い散らしながら、切り倒した木をめった刺しにしたり、近くにあった半壊したレンガの建物を、恐るべき剣技で、砂状に変えている。
「相変わらず、怖いわ。マジで。俺と違って抑えがきかないからな、この鬼男は」
「聞こえているぞ、エドガー」と、刀をしまわずに、蓮さんが振り向き、エドガーがちょっとうろたえて言う。
「ま、マジ悪い。それより、戦力アップで弱点補強で助かるぜ。機械系とかゴーレムとか物質系に弱いからな、うちのパーティ。まあ、俺のお金を湯水のごとく使い俺のアーティファクトも破壊して馬車馬のごとく働く古代魔術師様もいるから、後はヒーラーがいれば完璧なんだがな。ほら、何ぼーっとしてんだ。ポータルでワープするぞ」




