第二章 思いがけない発見
蓮さんと顔を見合わせて、笑う。エドガーはコンパスに石を入れて、黒リンゴの森方面の馬車にみんなで乗り込むことにする。
朝食は軽く済ませていたが、泊まったホテルの朝食がとてもおいしいと感想を言ったら、少し話をする機会があって、なんと、コックさんが昼飯も作らせてくれたのだ!! (もちろん材料費は払いました)
久しぶりに厨房を使える喜び!! しかも、冷蔵庫の中のも使っていいとか、どんだけ気前がいいんだ! でも、持っていける物でなくてはならないから、派手な物は作れない。
でも、なるべくハッとするものを作りたいのが、元バイトの根性というもので、
ボイルしたエビを荒く切って、エルマオニオン、チェイダーチーズのすりおろし、それをマヨマヨであえて、レタスをしいた食パンにのせる。おお、美味しそう!!
後はカツサンドがあったので、それも使わせてもらう。少し温めて、粒マスタードを多めに塗って、シャキシャキのキャベジーを千切りにしてのせると、完璧だ! 二人もきっと満足してくれるだろう! あーでもなー旅の御飯ってレパートリーがパンで挟んだものばかりになるのがなあ。スープを水筒に入れて……って、俺、何考えてるんだろ……わたくし、職業、古代魔術師なわけで……
そして、馬車は走って行く。この方面に行く人が少ないのかたまたまなのか、乗客は俺ら三人だけ。俺がぼんやりと考えている時に、エドガーは未だに何か昔の事か何かを蓮さんに愚痴っている。そんなに嫌なのか……? それとも単に、俺様エドガー様が、人に使われるというのが、我慢ならないのか。
あ、あれ、あ!! アアアティファアクト!!?
「馬車止めて!! アーティファクト反応が、あった気がする!!!」
俺がそう言うと、エドガーが慌てて御者に「悪い、便所するから、止めてくれ!」と大声で言った。そして馬車が止まると、三人顔を見合わせて、外に出る。俺は念の為、無意識にではなく、感知をすると、やはりこの近くにアーティファクトがある、と三人で少し戻ると、そこにあったのは、
「あ、ごめんなさい。これアーティファクトじゃなくて、ポータルだった」
ポータルとは古代魔術師が使える、一瞬である場所と別の場所をつなぐ門のことだ。このポータルは、古代文字が書いてあるんだけど……。
「ここに書いてあるの、レヴィン ってだけなんだけど、これって人の名前? 遺跡か街の名前かな? ちょっと、地図で確認しようかな」
「レヴィンは、あのドラゴンの名前の中の一つだ。あーあ。ラッキーだな。めんどくせえ。とりあえず、御者のおっさんに帰っていいこと伝えてくるわ。そこで待ってろ」
と、エドガーはさっさと歩き出す。そっか、俺のアーティファクト感知能力も上がっているのかな。ポータルの行先も自由に選べたら、かなり冒険が楽になるけど、そんなのは無理なのかなあ。高レベルの、古代魔術師に、飛陽族の人に、会って聞いてみたいな。
「アポロ、ちょっといいか?」
「はい、蓮さん、どうかしましたか?」
そして蓮さんは少し口ごもって「あの、僕が皆に迷惑をかけた事件から、腕は、回復した。副作用みたいなこともない。ただ、右腕の一部が、明らかに固いというか。全体の血の流れが変だとは思わない。現に僕の腕は健康そのものだし。だが、僕の腕の一部は、機械やアーティファクトになっているのか?」




