第一章 我がままサファイアドラゴンの難題
あの手紙を手にして、二人はぶつぶつ言いながらギルドの外に出てしまった。サファイア・ドラゴンからの手紙。ドラゴンがギルドに手紙を書く? しかも会ったこともない俺の名前も書いてあったし。僕らは早速シェブーストに向かうため、馬車に乗ることにして、エドガーはなんか怖い顔なので、蓮さんに聞いて見る。すると、蓮さんも苦い顔をして、
「なんというか、不思議な相手に会いに行く。危険は、無いと思うが……詳しいことは、やはりエドガーに聞いた方がいいだろう」
するとエドガーは声を張り上げ、「何で俺が! クソ! 本当に、何で俺様が!! もう、勘弁してくれよ」と嘆きなのか、諦めなのか、でも、二人ともシェブーストに向かう準備はしているようだ。
そして車内で二人はだんまり。蓮さんは自分の腕のことがあるだろうし、エドガーはそのドラゴンとのことがあるだろうから、俺も自然と黙る。
夜には、馬車はシェブーストに着くことができた。ホテルにチェックインして、そのまま寝る、のかと思いきや、エドガーが荷物を置くと無言で外に出て行って、それに続いて蓮さんも「僕もどこかで一杯ひっかけてくる」と外出してしまう。
一人取り残された部屋の中で、俺はつまらない。あーあー。なんかこういう考え事したい時に、行きつけのバーとかあったらかっこいいよね。でも、俺、別にアルコール好きでもないけど!
でもなあ、今更だけど、このパーティにいられたから、俺もレベルだけではなく、成長できたなあと思う。それも、いつかは、独り立ちというか、パーティ解散ってことになるのかな?
いかんいかん! そりゃ、来るさ。でも、その時まで、俺も精いっぱい楽しんで、先輩たちの事、学んで、記憶しておかなきゃな。なんだか、今日は俺も少し感傷的だな。でもいいか、明日からは、その良く分からないクエスト? 頑張るぞー!
「メサイア大陸の中程にある、黒リンゴの森の近く」と、あの手紙には書いてあった。俺らのいる大陸がメサイア大陸。そしてシェブーストは大陸の中央からやや西側にある。蓮さんの話によると、シェブーストからなら2,3日でつくらしい。
そして、消耗品や食料品の補充。あと武器防具の補修も行った。補修といえば、極楽鳥
のタックル! 後で気づいたが、あの高価な鎧が少しへこんでいて、改めて寒気がした。
で、こういった料金の全てをエドガーが払ってくれているわけで……
「エドガー。いつもいつもごめんなさい」
「そうだな。迷惑ばかりかけてすまない」そう、俺と蓮さんが言うと、
「おめーら、何か勘違いしてねーか? おめーらはオレサマのパーティの兵士なわけ。だからメンテナンスは当然だろ。そんなこと考えるなら、俺に合ういい女でも紹介しろや」
エドガーがなんだかんだ言っても、俺らに優しいのは知ってるけど、兵士はないだろ、と思っていると、蓮さんが、
「エドガーに合う女性となると、美しい幻獣でもないと無理だな。せっかくだし、サファイア・ドラゴンに紹介してもらえばいい」
そ、それは流石に失礼では、と思うが、蓮さんは、多分、素で言っている。さすがのエドガー様も苦虫をかみつぶしたような顔で、何か言いたそうにしているが、言葉が出ない。そう言えば、
「サファイア・ドラゴンって、何なんですか? エドガーはもちろん、蓮さんも会ったことがあるんですよね」それに、仏頂面のエドガーではなく、蓮さんが答えてくれる。
「体長は何メートルだろう。尻尾を含めると、普通のドラゴンよりも身体が長く、ウロコがやや柔らかい印象がある。その代わり、とても美しい身体をしている。物凄い知識と魔力を持っていて、確か、数千年生きているという話だ。エドガーみたくわがままだが、案外気のいい奴だよ」
「何が俺みたくワガママだ!! てめーら!! さっさとクズシナリオやっつけて、バカドラゴンに宝石せしめて、次行くぞ!! おら、さっさと店出る準備しろ!!」




