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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第十巻 凡人の為に戦争の火を灯せ
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第三十四章 誤算

「ジェーン。判断を誤った。魔法を解除してくれ」


 蓮さんの言葉に応えたのはリッチではない。声を発していたのはフォルセティさんだった。


 え? フォルセティさんが判断を誤る?


「あ、はい! 分かりました!!」


 ジェーンの声にも戸惑いが伺えたが、彼女が何かを唱えると、ふっと、先程までの妖精のいた雰囲気は完全に消え去った。それにしても、フォルセティさんが何かを間違えたって言葉が衝撃的だった。


 俺は彼が何でもできると思い込んでいた。頼り切っていた。当たり前だが、どんなに賢い人間だって誤ることはある。やはり俺も、自分の手でこの問題を解決するべきではないのだろうか?


 スクルドが心配だが、俺はどうすればいいのだろう。アーティファクト反応はない。それに、リッチが誘拐していたならば簡単に返すわけがない。でも、俺はそれを承知で叫んだ。


「スクルドを返せ!! 何が目的なんだ。それを早く言え! これ以上卑怯なことをするなら、こっちにも考えがあるぞ」


 考えなんて、奥の手なんてない。でも、どうにかして彼女を取り返さないと。


 彼女が不死身だと言った言葉に嘘はないはずだ。もしかしたら、それを信じないと俺は折れてしまいそうなだけかもしれないけど。


「アポロ。スクルドを取り返したいなら、冷静にならなきゃだめだよ。君も言っているよね。彼女は不死身だって。感情に任せて何かの力を開放してはいけない」


 ハレルヤが俺の顔を見てそう告げた。むかついて何か言い返してやろうと思って、しかし言葉が出なかった。そうだ、ハレルヤの言っている方が多分正しい。でも、悔しい。俺は何もできないのか? 俺が何かをしたら、皆に迷惑をかけてしまうのか?


「あれれ? 俺を悪者に仕立て上げて、そんな言い合いをしている場合なのかなあ? まずいことになってきやがったぜ」


 嘲るようなリッチの声。はっとして周囲を見回すと、景色が元に戻っている……?


 空のインクらしき黒い物も、妙な瘴気も無くなって、目の前に広がるのは砂漠と青空。まるで、この地に来たばかりのようだ。リッチの姿はどこだ? 声ははっきりと聞こえるのに、姿が見当たらない。


 そういえば、あの朱金の天人は?


 そう思った時、目の前に光の柱が出現していた。


 光の柱……? いや、巨大すぎる火柱と言った方が正確かもしれない。空から地面にまで達する火柱。こんな物に触れたらひとたまりもないだろう。こんな物を生みだせるのは、一人しかいないだろう。


 しかし、その姿は見えない……いや、何か変だ。空中に光の玉らしきものが幾つも出現している。見た目だけならは、光の低級精霊のウィルオーウィスプに似ている。魔力反応はあるが、今の所攻撃してくる様子はなく、浮かんでいるだけだ。


 その時、ふと、嫌なことを考えてしまった。俺の太陽の外套は、確か光のバリアを作るが、光の攻撃を防ぐ力は弱いらしい。もしかして、エノク教会の人達の生み出す結界、バリアも似たような性質なのだろうか? 


 だとしたらあの火柱だか光の柱が直撃したらひとたまりもないのでは?


「あれあれあれ? お前達が猿芝居を続けていて、怒らせちゃったかなあ? 起こしちゃったのかなあ? あーこわいこわい。お前たちがもし」


 声が途中で途切れ、目の前には新しい光と火の柱が出現していた。もしかして、姿は見えていないけれど、リッチに直撃したってことか?


あのリッチさえも強大な力でねじふせる朱金の天人、奴は、何者なんだ……


でも、嫌な予感がする。リッチの姿もさっきから見えないし、リッチと天人。二人からの攻撃に備える必要がありそうだ。


「ハレルヤ、一旦彼らを連れて後方に退避しろ。グレイはリッチの攻撃には防御陣形で迎撃。奴の攻撃はハレルヤに任せろ」


「その方がいいのかな。少しこらえてね」


 フォルセティさんの提案に、ハレルヤはすぐに返事をする。というか、一時的なのかもしれないがここから逃げなければならないって相当マズイ状況なのでは。それに、フォルセティさん一人が残るのか?


 エドガーが素早く歩き出し、何かをフォルセティさんに押し付けていた。魔力を帯びた一枚の紙切れ。それは無限のひとひらだった。


「……死ぬなよ」


「誰に口を聞いているんだ。いったん退け。お前たちのやることはまだある」


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