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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第十巻 凡人の為に戦争の火を灯せ
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第二十六章 それぞれの思い

 少し蒸し暑い森の中を俺達はぞろぞろと並んで歩いて行く。先頭が蓮さん。そして俺達のパーティの後ろを、エノク教会の人達がついてくる。


 ワンタイ諸島は、街の人達は活気にあふれているし、食べ物もおいしいし、すぐに離れるには惜しい場所だ。


 なんて、余計なことを考えてしまう。思えば色々あったなあ。こんなに早くこの島やジパングを訪れるなんて思ってもみなかったし。俺もアカデミーで色んなアーティファクトの力を得たが、蓮さんやエドガーだってそうだ。


 それに今はジェーンやスクルドやエノク教会の人達もいる。あ、ハレルヤもいたな。いざという時は、何か助けてくれそうな、ただ見守っているだけのような……


 って、おい! ハレルヤが僕たちの列から離れて、どこかへとふらふらと飛び始めた。


「ハレルヤ! 何やってるんだよ! 勝手な行動はするなよ!」


「アポロ、この先に民家が見えた気がしたんだけど。こっちの方が早道なんじゃない?  それか、人がいたらホテルまでの道を聞けばいいし」


「今僕たちは舗装された道を歩いているんだ。そう遠くない内にどこかに辿り着くはずだ」


 蓮さんは冷静にそう返した。なのに! 


「うーん、ちょっとだけ見てみるね」


 そう言ってハレルヤは道から外れて、森の中をゆっくりと飛んで行ってしまった。俺は慌てて彼の名前を呼んで後を追う。くっそ! この集まりは個々の能力は優れていたとしても、自分勝手な人らが多すぎるぞ!


 俺はハレルヤの名前を呼びながら、周囲の枝や根っこに注意して駆ける、と、おかしな感じがした。この感じ。まさか。


 俺は立ち止っていた。注意深く辺りを見回し、探る。


 やはり、この近くにはアーティファクト反応があった。俺はその一番強く感じる部分に立つと、葉や枝等で覆われている地面を、弱い炎の力で焼き払う。


 やはり、そこにはポータルがあった。ふと気が付くと、俺の周りにハレルヤも含めた全員が集まっていた。


「ここでアポロが力を開放したら、行けちまうってことかよ……」


 エドガーが独り言のように呟く。そうだ。入り口はこんな所にあったなんて。それに、リッチの言っていることはどうやら本当らしい。しかし、このポータルの先が変な場所だったらどうだろう。


 うーん、でも、今この状況でそれを疑っても仕方がないしなあ。でも、流石に俺が出発の確認をとるわけにはいかないよなあ。


「すみません、ここで一つ確認をしておきましょう。エドガーが持つ無限のひとひらは、この段階でフォルセティ殿に預けておく方がいいのではないでしょうか?」


 場に緊張が走る。そりゃそうだ。この先どうなるかなんて分からない。でも、エドガーがそれに応えるかはなあ……


 そんな風にやきもきしていると、フォルセティさんが口を開く。


「私は当然だが、グレイも神聖属性の防御魔法にとても長けている。ジェーンも様々な防御、補助魔法を使えるが、相手がリッチだとすると、そこまで効果はきたいできないかもしれない。私とグレイが防壁を張る。指示があるまで決してそこから動くな。その後は、臨機応変に対応すればいい」


 それは、俺にとってはとても良い作戦に思われた。怖い話だが、ワープした先で罠が用意されていて、全滅なんてことだってない話ではない。


「了解」


 一瞬耳を疑った。エドガーがそう返事をしたのだ。まともな会話と言っていいのかは分からないが、あの親子でこういうことをするなんて、妙な感動を覚えてしまっていた。


 すると、なぜかスクルドが僕らの周りの中央に立ち、辺りを見回して喋り出した。


「私もその作戦に従います。それと、エノク教会の方々には伝えていなかったのですが、私はアーティファクトの力で、今だけ不死の身体になっています。そして、私はそのリッチと言われる存在や、別の強大な存在と接触する必要があると思います。パーティの連携を崩したくはないのですが、私は、『今は』不死身です。なので、もしかしたら勝手な行動をとろうとするかもしれません。皆様の邪魔はしません。でも、やらねばならないことが起きるかもしれないのです。どうかお許しください」


 スクルドは大きく頭を下げる。しばしの沈黙の後、蓮さんが静かな声で「分かった」とだけ言った。スクルドは顔をあげると、小さく頭を下げた。


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