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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第二巻 機械仕掛けの天使と 永久の別れ
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第十五章 超再生禁断の秘術

 その、数分の沈黙、それを破ったのはアイシャだった。


「アポロ、ありがとう。蓮さんが初恋なら、アポロが私の初めての大切な友達。私、生きてきてよかったってね、今日、初めて思ったの。不謹慎なのは分かってる。でも、貴方達とのこと、絶対に忘れない」


「え? アイシャ、何? 止めてよ、そういうこと言うの」アイシャは、戸惑う俺の眼をしっかりと見て、


「アポロが強力な巨大鳥を倒すのに、アーティファクトを壊す必要があったように、アーティファクトの力を最大限引き出す、無理をするには、壊れなければならない。私の心臓がコア、アーティファクトの中心。そして後の半身で、私は失われた技術、超再生医療の『材料』になれる。そして、アポロ。アーティファクト使いの貴方だけが、それを、引き出せるの。分かって」


 分かって、いた。薄々だけど。でも、甘い考えでそれを打ち消していた。でも、


「できないよ。君が死んで、蓮さんが喜ぶと思う? もっと別のことを考えようよ」


「そんなことない。遅かれ早かれ、私は道具になり、売られる。この里に買われてきて、逃げることなんてできないの。だったら、私の命、大切な人の為に使わせて」


「そんな! 俺もエドガーもいるし、俺達強いから! 倒してあげるよ!」


「お願い! もう貴方達に迷惑をかけたくないの。相手は心を持たない天使の集団なの! 闇の組織とつながっている集団なの!! 貴方達に、これ以上、迷惑、かけられないよ……」


 そうして、アイシャはうつむくと、ゆっくりと近づき、俺の手を握り、顔をあげ、俺の瞳をしっかりと見た。


「アポロ、辛い役目をさせて本当にごめんなさい。でも、一生のお願い。好きな人の為に、私の身体を使って欲しい。それが、私の、初めての望み」


 俺は、黙ってうなずいた。アイシャは、とてもきれいな顔で微笑むと、虹色の翼を広げ、服を全てとかし、いや、人間の部分まで、少し、溶け始め、


「ここ、心臓がコアだから、ここの力を解き放って。最大限に。それに呼応して他の箇所も作動するから」


 恐る恐る触れる、鼓動が、ない、冷たい心臓。俺は、アイシャをまともに見られなかった。俺は、でも、彼女の思いにこたえられるように、超再生医療、蓮さんの腕が生まれ変わるようなイメージを、思い浮かべる、と。


 太陽の熱、血潮の熱、そんなものが小さな粒の、らせん状になって、みるみるうちに、蓮さんの腕を再生させる。奇跡だ! アーティファクトの、アイシャの!!! そう見上げると、アイシャの顔は「崩れて」いた。でも、彼女は、多分、微笑んでいた。美しく痛ましく、勇ましかった。


「アポロ、ありがと」


 そんな声が聞こえたかどうか、蓮さんの両腕は、元通りになっていたようだった。血が、通っている。あれ? 一部アーティファクト反応がある。でも、この方法でやったから、拒否反応はなさそう。あったら苦しみで蓮さん起きるだろうし。


 よかった。本当に。俺の、皆の大切な人が助かった。


 でも、でも、でも。骨は溶け皮膚はただれ、機械部分は、消失かジャンクになってしまって、あんなに、あんなに美しかった、初めて好きな人を見つけた少女の命が、ここで、終わってしまった。


 あんなにきれいだった姿、蓮さんに見せたかっただろうな。


 そう思うと、涙が止まらず、はらはらと涙を流しながら、ぼーっと、扉を開けると、神妙な顔のエドガーと出会い、俺は、超再生は成功したよと言った、すると、エドガーの顔に精気がみなぎって来たのが分かる。でも、俺は泣き顔のままエドガーに抱きついて。


「その代わりにアイシャが死んだんだ。彼女は、自分の機械の体、アーティファクトを使って、それで蓮さんを治したんだ。アイシャは良いやつなんだ。かわいいんだ。かわいそうなんだ。ひどい、ひどいよこんな。誰も悪くない、でも、里の奴は悪くて、俺! 言っちゃったんだ! アイシャ、自分が死ぬの分かってたのに、一緒に冒険しようとか、蓮さんにきれいな姿見てもらおうとか、俺! アイシャに言っちゃったんだ! アイシャに!」


 すると、がっ、とエドガーに肩をつかまれて、


「アポロ、落ち着け。とりあえず、二人で中に入ろう」



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