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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第九巻 懐かしい人と千の夜を抱く黒夢姫
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第三十五章 前を向いて

 フォルセティさんは俺らに向けてそう告げた。エドガーが誰もいない砂漠を見つめながら返す。


「いらねーよ。罠に飛び込むしかねーんだろ。上等だよ。終わらせてやろうじゃねーか」


「私も。これ以上話しても意味がない相手な気がする」


 ジェーンがそう口にした。俺だってそうだ。だから「ないです」と小さく言った。


蓮さんは全員をちらと見まわし、リッチに向かって「大丈夫だ。それでは」と軽く告げる。その言葉を聞いて満足したのか、指輪から闇の力もリッチの姿も消え去り、辺りに静寂が戻る。


 一難去ってまた一難……なんだろう。色々話したいけれど、意見をまとめるにしても、フォルセティさんとエドガーが同行することを考えると、話がややこしくなるなあ……


「まずは、街に戻らない? コンパスがあるし、半日歩けば着くかしら? 相談はその後にしましょ。私疲れちゃった」


 ジェーンが少し明るい感じでそう提案した。その言葉はこの場の重い空気を払うかのようで、彼女の気遣いを感じる。


「そうだね! 俺も街に戻って、改めて話すのがいいと思う。今、砂漠で考えをぶつけ合うのはよくないし」


 と俺もすかさず賛同する。ここでこれ以上対立するのはよくないよな……


「そうだな」とフォルセティさんが口にする。よし、これでエノク教会の三人はとりあえず大丈夫だ。


 蓮さんが「エドガー」と声をかけた。エドガーは「ああ、分かってるよ」と少し投げやりな調子でそう言った。


 そうだよな。試練を終えたらいきなりフォルセティさんと再会して、シェヘラザードとの別れを経てリッチとも会って、おまけにフォルセティさんと同行するなんて、気持ちの整理がつかなくて当然だ。


 ホテルで休まなきゃいけない。少し時間が必要なのはエドガーもそうだし、俺達皆そうかもしれない。


 珍しくジェーンが先陣を切り、コンパスの光の方へと歩きだす。誰も何も話さず、その光の方へと歩いて行く。立ち止まっていると湧き出してくる、疑問や不安。でも、俺達は前に進むしかない。俺はそう思いながら歩いて行くのだ。


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