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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第九巻 懐かしい人と千の夜を抱く黒夢姫
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第三十四章 とまどい

 リッチに恐ろしい集団なんて言われると、違和感がある。ただの皮肉だろうか。


「何を早合点している。僕たちは旅の途中だ。こちらはこちらのペースで旅をさせてもらおうか」


 蓮さんが冷静に揺さぶりをかける。だが、リッチは嬉々とした感情を隠すことなく返した。


「どちらでもいいよ。ところで、ワンタイ諸島って知ってるだろ」


 蓮さんは数秒待ってから「ああ」と答えた。ワンタイ諸島って、あれか! ジパングの近くにある島々で、アカデミーにワープする時に利用した場所だ。温暖で平和そうで、特に危険な場所はなかった気がする……


「そこにこちらへのポータルが発見された。それを起動できるガキがいるだろ。奴なら探せるはずだ。いつまでも待っているぜ。もっとも、あんまりのんびりしてたら、分かるだろ?」


「え! 俺、ワンタイ諸島行ったけど、ポータルなんて分からなかったよ」


 俺は思わずそう口に出した。するとエドガーが緊張した声で尋ねてくる。


「アポロ、お前のアーテイファクト検知ってのは島全体が分かるのか? 近い範囲しか分からないのか?」


「そ、それは……きちんと調べてないけど……でも……」と俺が言いよどむと、エドガーは苦い顔をした。


「分かるぜ。話が出来過ぎているんだよ。なんでこのタイミングで、現場まで行けるポータルが見つかるんだよ。そんなのあるなら、ヘラが俺達に過酷な砂漠に行って探せなんて言うか?」


 俺は無言で頷いた。エドガーは舌打ちをすると長い足で空を蹴り、靴底に着いた砂がばらりと舞う。


 そんなエドガーとは対照的に、蓮さんはリッチに返事をした。


「了解した。準備が出来たら向かおう。ところで、こちらからお前と交信するにはどうすればいいんだ」


「何だよ。もっと喜べよ。まあ、いいか。ええと、指輪を通じて会話するのは強い闇の力、魔力がないと難しいな。まあ、お前らには無理だろう。受信専用として諦めてくれ」


「そのようだな。それで、仲間に相談したいのだが……何かリッチに質問をしたい者はいるか?」蓮さんはそう口にして俺らを見回した。見られていたとしても、そうじゃない体を装って。


 でも、質問か……したいことがあり過ぎて困るのと、奴が答えないだろうし……答えても疑いの目をむけるだろうからなあ……


 俺と同様誰もが黙り込んでいる。そう思っていたら、鋭い声がした。


「そんな奴の戯言に耳を貸してはいけない! こちらにまで瘴気が通じる! 用が済んだら即刻終わらせるべきだ!」


 そう口にしたのは、厳めしい顔つきのグレイだった。普段の優し気な物腰から一変、戦闘時のような雰囲気すら放っている。


「おい、ギルディスどうしたんだ。お前らしくないぞ」


 こちらも普段とは逆に、少し抑えたような不安そうな調子でグレイが声をかけていた。ギルディスはそんな彼の言葉にはっとしたのか「差し出がましい真似をしました。申し訳ありません」とフォルセティさんの方へと頭を下げた。


「お前はリッチと知り合いなのか?」


 フォルセティさんはいつもと変わらぬ威厳を持って、彼にそう告げた。ギルディスは少し小さな声で、しかしはっきりと「面識はありません。混乱させてしまい申し訳ありません」と告げ、再度頭を下げる。


「こちらは問題ない。後はお前達の好きにしろ」


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