第十二章 機械少女の恋
「当然里でもまともに会話できるような人はいません。というよりも、私は完全な天使になったら、私の機械の身体が高度なアーティファクトになるようなのです。その為に買って育てたようなのです。里の族長は私の身体を捧げものにするのか、お金に換えるのか」
「そんな! そんなの嫌だよ! そんなのなら俺同行しないからね!」
「はい。気が、変わりました。そのアーティファクトの力をお侍様の為に使います。私の考えを変えてくれたのは貴方のパーティ。そして、その、蓮さん、です」と、その後少し口ごもり、
「あ、その。私は初めてなので分からないのですが、私は、あの御方に、恋をしてしまったようなのです」
「え?」この展開はさすがに予想してなかった! でも、アイシャがこんな時に嘘をいう訳がないし、目の前の彼女は、白い肌を桃色に染めている。
ああ、そうか。今までずっと、生まれた場所でも、里の者にも冒険者にも道具扱いしかされなかった子に、優しさを教えてくれた人。自分の為に、逃げずに負けると分かっていて立ち向かった人。こんなにも仲間に大切にされている人。そうだなあ。俺も、アイシャの立場なら、蓮さんにドキドキしても何の不思議もない。
俺はアイシャが恥ずかしそうにうつむき加減にしている、その手をとり、
「俺も蓮さんすごい大好き。エドガーも。だからさ、二人で試練を乗り越えよう。短い間かもしれないけど、俺の事を信頼して、アイシャ。蓮さんの腕、治そう」
「はい!」と、力強い声でアイシャは言った。
二人であの山をまた歩いて登って行く。全快、ではないけれど、出てきた強くないモンスターは、俺が退治できた。アイシャに能力を聞いて見ると、ヒール系の能力や、祈り系のをいくつかもっているだけとのこと。まあ、戦うわけではない天使だし当たり前か。
山登りをしているその間、アイシャが昔売られている場所で、大人たちが話していたという色々な知識を教えてもらう
そして、半分くらい機械の身体を持つ自分は『アンドロイド』という存在だと教えてもらった。その『部品』の内容も。それは、天使の力に近いものらしい。高度な機械やアーティファクトは人間の力、自然物や魔法の力と反発しない。しかしそれはごく一部。
でもそのごく一部が例えばアイシャ。生まれながらにして機械仕掛けの天使
アンドロイドは今も少数だがいるらしい。俺みたいな、気づくことが出来る古代魔術師とかがいないから目立たないだけ。中には大金をかけて自分の身体とアーティファクトや機械を融合しようとする狂った大金持ちもいるそう。
アンドロイドは普通生殖ができないし、産まれない。でも、多種族間の性交で、ごくごくまれに生まれるそうだ。普通、アンドロイドはガラクタの山や機械やジャンクやアーティファクトなど、ゆかりの強い場所に、親もなく、突然産み落とされる。これがメジャーらしい。中には数千年も生きるアンドロイドもいると言うが、うわさの範囲だ。
色々聞けて知識欲としては嬉しい反面、アイシャのこれまでのこと、これからのことを考えると、気持ちの整理がつかないな……
「ねえ、アポロは恋したことある?」
は? へ? はああああ???? なっ! 何でこんな不意打ちに!!
「ぼ、ぼくは、冒険が恋人ってかんじかなあ、ははは!」とよく分からないことを口走っていた俺。
「そう。ロマンチストなのね」とサラリと返され、ロマンチストかどうかも分からないのだが、話しを変えたくて、
「あ、あのさ、蓮さんが言ってたこと、嘘じゃないからね。試練が終わって蓮さんを治した後、よかったらうちのパーティに来てもいいんだからさ! ね! 遠慮しなくていいからね!」
すると、なぜか少し間が空き「ありがとう」と彼女は言った。




