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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第八巻 声無しの桂冠詩人と賛美の名を持つ堕天使
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第三十四章 思いがけない再会

 ハレルヤがそう口にすると、スクルドは小さな声で「そこまではわかりません……ごめんなさい」と告げた。ったく! そんな言い方しなくてもいいだろ!


「あのさ、俺が飛んで周囲を見回してみるよ。遠くに何かの建造物とか、泉や森とかあるかもしれないし。ちょっとここで待っていてくれる?」


「ああ、お願いする」と蓮さん。「どうもありがとう」とスクルドが笑顔で返してくれる。

「迷子にならないように、遠くには行きすぎないようにねー」これはハレルヤ。あれ、彼だって飛べるよな……まあいいや、深く追求するのはよそう。


 俺は久しぶりに翼を大きく広げ、全身で太陽の陽を浴びる。羽が熱を持つ感覚が懐かしくも嬉しい。やっぱり俺は飛揚族なんだ。寒い所より、陽の光の下にいるのが性に合っている。


 翼に力をこめ、大地を蹴りはばたく、翼の上に風を感じるのが気持ちいい。このままどこまでも飛んで行きたくなる気分だ。っておっと、そんなふらふらしてると、ハレルヤの忠告通りになってしまう。俺はコンパスを手に、とりあえず北の方へとゆっくりと飛んで行くことにした。


 上空から周囲を見てみると、草だけではなく、ちらほらと背が高く幹が太い樹木らしき物が目に入る。サボテンというやつなのかなあ。少し低空へと高度を落とすと、砂ネズミの仲間みたいなのも見つけた。すぐに砂の中に隠れて見失ったけど。ともかく動植物が暮らしているってことは、人が住んでいるってことでもあるはずなんだ。


 皆の場所から離れるのは10分位がいいかなあ。すぐに戻れないかもしれないし。そんなことを思いながら北の方へ飛んで行くと、あっ! 湖がある? こんなに早く見つかるなんて運がいいな! 街ではないけれど、これだって十分ありがたい! 久しぶりに水浴びしたいぞ!! 現地の人、誰かいるかな? いたら近くにある街を教えてもらおう。


 期待に胸をふくらませ、俺は地上へと降り立つ。砂漠の地帯に湖があるなんて、これがオアシスって奴なんだなあ。水源が近くにあるからか、湖の周りにはそれなりに木々も生い茂っている。水面は暑い日の光を浴び、きらきらと光っている。俺はうっとりとしながらその光景を眺めていた。


 おっと、先ずは近くに誰かがいるか調べなきゃと周囲を見回す。ここなら誰かいるはずだし、万が一誰もいなくても、ここで皆を呼び、待機していれば、いずれ誰かに会えるはずだ。そんな楽観的な気分で湖の周りを歩いていると、木々の木陰で涼んでいるらしき人が目に入った。白と灰色のローブには銀の刺繍が施されていて、どうやら位の高い聖職者らしい。頭まですっぽりと覆われているから、表情は分からない。


あ、俺ずっとお風呂入ってないからくさくないかな……ええい、そんなこと考えてたら何もできないぞ! 俺は恐る恐るその人に声をかけた。


「すみません。僕は冒険者のアポロと言います。仲間とこちらの地方に来たのですが、迷ってしまいました。すみませんが、近くにある町の場所を教えてもらえませんか?」


 その人物はフードを脱ぐと、印象的な赤茶色の瞳を俺に向けた。髪の色は美しい紫で、綺麗にまとめられている。肌の色は砂漠には似つかわしくない白い肌で……


「ジェーン! なんでこんな所に!」

「アポロ! なんでこんな所にいるの!」


 俺とジェーンが同時にそう口にした。しかし、彼女の恰好は、派手でセクシーな衣服とは真逆の、まるでどこかの教徒になったかのようだ。


 ジェーン・R・アリアハム。エドガーの知り合い……というか彼と何度かパーティを組んでいる高位魔導士。性格は悪戯好きで結構ドライでお金に厳しい。でも、なんだかんだで結構優しい所もある。俺は彼女に水の初期呪文を教えてもらった。かなりのナイスバディで、セクシーな洋服を身に着けていたはずだが、今の恰好は、どうしたんだ?


いや、そんなことはまず置いておこう。二人共言葉が出ずに、呆けた顔でお互いを見つめ合っていた。これぞ感動の再開……なのか?


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