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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第八巻 声無しの桂冠詩人と賛美の名を持つ堕天使
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第十七章 壁画

 ぽっかりと大口を開けた真っ暗な入り口。それが俺達の光で照らされる。中に入ると、そこは俺が思っていた以上に広々とした空間だった。壁は灰色のレンガが積み重なってできており、天井の高さが4、5メートルはあるだろうか。地下墓地というか、城砦の中を歩いているような感覚がしてしまう。


「ここは、地下墓地と呼ばれるような場所なのでしょうか? とても立派な建造物のような印象を受けました」


 そう、スクルドが俺と同じような感想を告げた。すると、蓮さんが無言でカンテラの光で壁を照らし、指し示す。


 そこに描かれているのは、壁画らしきものだった。結構大きいな。横に2、3メートル位の長さの壁画だ。その画はお金持ちの家にある細密な物というのではなく、素朴なタッチで描かれている。もしかしたら俺でも描けるかも。さすがにそれは、ないか。


当然というか、アーティファクト反応も魔力反応もないようなので、俺も近寄り、それに軽く触れてみた。


触れてはみても、何も感じることはなかった。その画をよく見ると、どうやら羽の生えた人間、おそらく天使に、何人かの人間が跪いているような画だった。


連作と言うのだろうか? その画は続いていて、次は天使が高い所にいて、大勢の人々が集まっている画。その次は怪物のようなものと天使が並んで描かれている画。その次は大きな丸い物がえがかれている。その次は、うーん、画があまりうまくないから分からないなあ。俺には楽器を演奏する詩人さんに見えるんだけれど……それって、俺がテオに会ったからそう連想しているのかな? それともテオはこの闇葉の地下墓地と関係があるのか? うーん、わからない!


「不思議な場所ですね。とても地下墓地って雰囲気がしない」


「そうだな。この壁画には何か意味があるはずなのだが、アポロもスクルドも反応をしていないなら、墓地を利用する一般市民の為に作られたものなのかもしれないな」


 蓮さんはそう口にしたが、確かにそうかもしれない。意味ありげであっても、何でもかんでも魔力が込められていたり、アーティファクトの力を秘めているわけじゃないもんな。


 そんなことを考えていると、スクルドが蓮さんの横に身を乗り出し、両手を自分の胸もとで合わせると、大きな声を上げた。


「人にあらざるものよ。土にかえれ。土は土に。灰は灰に。塵は塵に」


「え?」と俺が思わず口に出していた時には、もうそれは済んでいたようだった。目の前では小さな光が生まれると同時に、消え去っていた……


「何かアンデッドかゴーストがいたの? あ、スクルドは光の魔法も使えたっけ。すごいなあ」


 スクルドは少し困ったような顔を俺に向ける。


「さまよう魂というか、小さなウィスプがいたから、念のため。強いアンデッドを浄化するほどの力はないけれど、初歩的な物なら使えるから」


「スクルドが祓ってくれたウィスプは、一般の墓地でも見かけることがあるようなレベルの物だ。危険性は低い。このまま大物には出会わずに用事を済ませたいものだな」


 蓮さんがそう言った時に、俺はふと、思ったことを口に出す「そういえば、この地下墓地に来た目的って何でしたっけ?」


蓮さんとスクルドが立ち止って、二人で俺を見る。蓮さんが無言で苦笑して、何だか恥ずかしい気持ちになる。俺がまごまごしていると、スクルドが語り出してくれた。


「預言で、『闇葉の地下墓地の祭壇で 赤き翼の天使に跪き祝福を与えよ』という言葉を受け取ったの。だから、おそらく、私かアポロが祭壇で祈りを捧げる必要があるんだと思う。普通だと祭壇って建造物の中央部や、入り口からさほど離れていない所にあるはずなの。遠かったり複雑な場所にあったりするなら、祈りを捧げるのに不便でしょ? ここは闇葉の地下墓地と言われるくらいだから、普通の考えが通用しないかもしれないけれど」


「そうか……あ! あれか! 預言の赤き翼の天使って、この壁画のことかな?」


 俺がそう口にすると、二人は何を今更って顔で俺を見ている……気がする……恥ずかしい……


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