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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第八巻 声無しの桂冠詩人と賛美の名を持つ堕天使
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第十六章 いざ、闇葉の地下墓地へ

「僕なのか僕が持つ刀のせいか、たまに物の怪、妖怪、闇の物を惹きつけていると感じることがあるんだ。最も、今回の魔物は以前話にした、紅玉水晶の奇病の線が強いと感じていた。だが、アポロだけがその魔物と遭遇しなかったことを考えると、僕に責任があるかもしれない。そうだとしたら、同行しているスクルドに迷惑をかけてしまった。すまない」


 スクルドは慌ててそれを否定する。俺も蓮さんが原因だとは考えにくいと思った。だって、俺と蓮さんがパーティを組んで、そういう魔物に出くわしたことがないと思うから。でも、俺の知らない間に蓮さんが始末しているのかもしれないけど……


「違うと思うんです」そう、スクルドが口に出した。彼女は蓮さんから視線をそらし、俺を見る。


「もしかしたら、アポロが邪悪なるものから身を守る術を持っているのかもしれないと思って」


「え?」


「アポロというか、アポロの持っているアーティファクトか、出会った光の不思議な人間、それか詩人と同行していたおかげで、魔物と会わずに済んでいた可能性があるかもしれないと感じました。」


 スクルドのその発言で、はっとした。俺を罠から解放してくれた謎の男も、詩人さんも、そういう力を持っていても不思議ではない……


「……ただ、どちらにしろ、二人共無事でよかった。本当に良かった」


 俺はそう口にすると、大きなため息をついてしまった。蓮さんが軽く笑う。


「そうだな。悪かった。今は少し休んだ方がいい。どうだろう、僕とスクルドで話をしていて、今日一晩アポロと出会わなければ、ここに長居するのは危険だから、地下墓地の探索を始めようとしていたんだ。アポロの体調次第では、あと数時間後に出発することも可能だ。地下墓地の中は暗闇だろうから、時間も関係ないだろう」


「そう、ですね。後二、三時間後に出発するのがいいかと思いますが……あ、そうだ。ここの入り口ってどうなっているんですか? コンパスの反応が変と言うか、目的地についたはずなのに、よく分からなくって」


「それは、入り口に封印が施されていたから」とスクルドが口にした。彼女はそのまま言葉を続ける。


「私でも解ける、そこまで強い力ではなかったけれど、それを開いた時、禍々しい気を感じたの。だから一応軽い封印をかけなおしているけど、入るだけなら簡単に入れるよ」


「そうなのか。俺は全然分からなかった。俺は攻撃やアーティファクトの力については少し慣れてきたつもりだけど、こういう補助の魔法はまだまだだなあ。スクルドがいて助かったよ」


 すると、彼女は少し恥ずかしそうにして顔を横に振る。でも、本当にそう思ったんだ。パーティっていうのはお互いの足りないものを補って、先へと進んで行くものだと思うんだ。


 軽い雑談もありながらも、ゆったりとした時間を過ごす。蓮さんの話で聞いたけれど、俺は出会わなかったにしろ、長居はしない方が良い場所だというのは三人とも一致していた。軽い食事と休憩をすませ、俺達は闇葉の地下墓地へと向かうことになった。


 とは言っても、少し歩いて向かった先、そこにあるのは見慣れた風景、というか自然の中。どこにも入り口らしきものは見当たらない。


 と、スクルドが何かを口にした。聞き取れない言語と言うか、何かのささやきのような小さな声。それに呼応して、緑の生えていた地面が大口を開けた。大きさは長身の蓮さんでも悠々と入れるような、いかにもダンジョンの入り口と言った大穴だった。


 そこからはスクルドが言ったような、何かの気配がする。魔力反応は感じないのだが、嫌な臭いと言うか雰囲気と言うか……うまく説明できないけれど……


「僕が簡易ランタンを持っている僕が先頭に立つ。真ん中にスクルド。しんがりはアポロが務めてほしい。二人とも常にライトの魔法で周囲を照らしていて欲しい。また、魔物を発見したら自己防衛以外の際は攻撃する前に一声かけてくれ。僕は鳳凰の加護を失しなって、この刀だと上位の不死族に決定打を与えるには、力を開放する必要があるかもしれない。その前に、できればアポロの炎や光の力に助けてもらえたら心強い。二人とも、頼んだ」


 蓮さんの言葉に俺達は深々と頷いた。緊張感と共に、心地良い刺激が俺の身体を律する。この中は狭い空間もあるだろう。俺の炎の力で二人を巻き添えにする愚行だけは避けなければならない。でも、俺だって、少しずつレベルアップしている。新しいアーティファクトの力だって使える。


 ここを探索する際に、自分が蓮さんの指示に従いながら、冷静にいられるよう、ひとり心の中で「よし」と気合を入れなおす。カンテラの光を手にした蓮さん、続いてライトで周囲を照らしながら、少し、慎重にその後に続くスクルド。


 俺もライトの魔法で周囲を照らし、自分の後ろにも目があるような意識をしながら、地下へと足を踏み出すのだ。


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