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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第八巻 声無しの桂冠詩人と賛美の名を持つ堕天使
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第十五章 語らい

 何かの気配? がして、俺は手を離し振り返った。


 森の中で、浮かび上がるような真っ赤な髪を結い揚げた、白い肌をしだ、長身の!


 俺は、言葉を失った。いや、でもすぐその後に様々な感情が、言葉が口から飛び出しそうになって、俺は大きな声を出しながら頭を下げた。


「ごめんなさい! 俺が、あの時指示に従って大人しくしていたら! すみませんでした!」


 その言葉を口にして、少し、気が楽になった。でも、そわそわしてきて、俺はゆっくりと貌をあげた。彼の表情は、俺が好きないつものそれだった。


「無事でよかった。僕とスクルドもどうにか乗り越えてきた。近くに彼女もいるから行こう」


 穏やかな声で蓮さんは俺に告げ、しなやかな動作で歩き出した。俺はもっと聞きたいことも謝罪したい気持ちもあったが、それをどうにか抑え込む。二人が無事で、二人に会えるんだ。これだけで十分だ。


 会えたらげんきんな物で、今度は自分の喜びを隠そうと必死になっているのが、我ながら情けなくも楽しい。よかった。よかった本当に。俺はぐっと幸福をかみしめていた。


 蓮さんの後を少し歩いて、背の低い植物が生い茂る、開けた場所に出た。俺達以外の物音がした。そこで出会ったのは深海のようなブルーの瞳をした……


「アポロ……よかった……あの、お茶があるの。おいしいから……そこに座って。蓮と私の分はさっき用意したから。今用意するね」


 そう言うと、彼女はすばやく手元の食器を動かし、俺に温かい紅茶を用意してくれた。それを受け取り「ありがとう」と言った。スクルドは微笑して「うん」とだけ返した。


 湯気が立ち上るカップを手に取ると、甘い林檎の香り。一口その温かい紅茶を口にすると、先程までの緊張感は、ほとんど消え去ってしまったようだった。


 二人の静かな気遣いが身に染みる。一人で先走っていた自分のことを思うと、ひたすら恥ずかしくなる。でも、許しを求めたりはしない。俺達は仲間なんだ。ありがたく、温かい気持ちが身体中に広がってくる。


 優しい沈黙が俺達を包んでいた。静かな時間の共有。そして、ぽつぽつと、どちらともなく会話が始まる。すると、聞きたいことが色々と浮かんできてしまうが、二人から先にそれを口に出してくれていた。


 それによると、二人はあの後、また、地震のような物を体験し、あの病気か呪術に蝕まれた魔物に何度も出会ったらしい。おかしい……俺は友好的な人物しか出会わなかった。というか、普通に考えたら、地震があったなら、遠く離れていないなら俺もそれを感じるはずだよね?


 俺が軽く自分の体験を話すと、蓮さんは少し考えるような素振りをして、いつもの通り静かな様子で話し始めた。


「話を整理しようか。先ず、アポロと別れた時まで時間をさかのぼろう。パーティの行動が制限され、僕が つた だか つる の植物系のモンスターを刺殺した時、スクルドは近くで気絶していた。幸い命に別状はなさそうだったから、僕は懸命にアポロを探したが、どうしても見つからなかった。小一時間後にスクルドも目を覚まし、彼女の力も借りながらアポロを探したが、近くにいるはずなのに、見つからない。もし敵の力で倒れたなら、その身体や道具が残されているはずだ。それすらない。連れ去れたか、ワープしてしまったと考えるのが自然かもしれないと判断をしたが、ここに長く留まることは危険だった。僕たちは、アポロを信じて先に進むという判断を下したんだ」


「先ほども少し説明したのですが、俺は自分を助けてくれたっぽい? よく分からない正体不明の言葉を話す男。経験豊富らしい商人の男、昔会った……ええと、会ったらしい詩人さんと出会いましたが、モンスターとか地震とは無縁でした。蓮さんとスクルドは、普通に会話ができる人とかには出会わなかったんですか?」


「一人もいませんでした」とスクルド。


「その代わりに、モンスターを六、七体は始末した」と蓮さん。


「それは、偶然……? おかしいですよね……」


「もしかしたら、二人には申し訳ないが、僕の責任かもしれない」


「え?」


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