第七章 天使の里の機械少女
「じゃあ、食料だけ準備して、行くか。半日かからないんだろ。ささっとすませようぜ」というエドガーの言葉に従って、準備をすませ、三人で森の中へ行く、のだが、しぜんと十数人の冒険者が、距離はあるが一緒に歩いて行くことになる。
エドガーが露骨に「俺はこういう行列は嫌いなんだよ!」と大声で言うが、向かう先は同じでほとんど舗装されていない道だし、仕方がない。全員黙々と、進んで行く
ここの森は何か、感じる。気のせいだろうか。植物の成分? それとも魔力か何かだろうか? 俺が感知をすると、あ、反応ある、のだけど、これが何なのかいまいち分からない。
「結界があるなこの一帯は。ここが、天使の里ってことなのだろうか」
そう告げたのは、紺のローブ姿の魔法使いらしき人だった。だが、コンパスの光はその結界の中を指しているし、どうコンタクトすればいいのか分からない。
「おい! お前らの嫌いな冒険者達が来たぞ!! 扉を開けてくれ!!」
エドガー!! 何か言うにしても、もっと別の言葉があるでしょ!!
でも俺のそんな心配は杞憂だった。
「分かった。その前に適性診断がある。この里に純粋な人は入れない。仲間により近い物から優先権を得ることにしている」
だったら最初からギルドにそう伝えればいいのに! そしたら適正者だけ来るでしょ! とか思いつつ、俺は自信があって、
「最初は、そこの背の低い、飛陽族の少年だ」せ、背の低いは余計だ!! 大人たちの中にいるからそう見えるだけだ!
「次は、そうだな、巨大な銀の狼。相応しくない、が、この二人しか里に入れられる者がないな。残りの者は、この二名が不適格だった時の用に待機しておくように」
俺は蓮さんを見ると「行ってこい」と優しく言ってくれた。エドガーが小声で「天使はやっぱ、なんか感じわりぃなぁ」とぼやくが、他の冒険者の方が「ここまできてあの態度は何だ」とか「こんな話ギルドで聞いてないぞ」とか「馬鹿らしい、俺は帰る」とか非難轟轟だった。
でも、俺達は選ばれたわけで不安だけど安堵感もあり、エドガーもいるし、何もない森の中を入っていくと、景色は一変する。そこには、住居らしきものがあった。ドーム状の白い家。でも、おかしいのが、住民の姿が見えないということ。
はっ、っと気づいた。俺らは歓迎されていないか、試されている。それにしてもだれ一人いないなら、目的の家の場所も分からないんだけれど、それにしても、なんだ、いつも文句を言うエドガーが静かだなあと見上げると、苦しいような怒っているような形相で、
「悪い。ここにいると獣化する寸前みたいな気分で、ちょっと正気じゃいられねえ。抑えられるが、頭が回らねえかもしれないから、交渉頼むな」
え! どういうこと? だから普通の人間は入れないってことなの? 俺は平気なんだけど。それに当然ここに住んでいる人も平気だと思うし……
不安を抱えながらとにかく道を直進すると、不思議な時計? のある広場らしき場所にたどり着く、なり、十数名の天使が空から降りてきた。人間にすると二十代から四十代位の見た目の男性が多いが、小さな女の子も数名いる。全員白の簡素なローブを着ている。
「こんにちは。ギルドの依頼で来ました。アポロ、そしてこちらがエドガーと言います。よろしくお願いします」
俺が喋った後、沈黙と目配せが走る。何か嫌な感じだなあ、こっちにも分かるように、ちゃんと喋って欲しいよ。あ、分かった。テレパシーかそれに近いことをしているのかな? またここにきても探ったり値踏みされるのかぁ。もういい加減にして欲しいなあ。
「頼みと言うのは、ここにいるアイシャを太陽の祭壇に連れて行って欲しい。試練は簡単に終わる。それだけだ。場所は彼女が知っている」
わ! いきなり、おじさんがそう喋り出した。大丈夫なんだけど、こんな簡単な条件でここまで面倒な値踏みやらをするわけがないはずで、今はエドガーがこんな状態なんだから、俺がぐいぐい攻めていくしかない。
「俺はまだ経験が浅いですが、ここにいるエドガーはレベル69、外には50台の侍もいます。けれど、情報が少ないと依頼を失敗してしまいます。どうして祭壇に連れて行くだけでこんなにも物々しい選定をされたり、道中で何があるのか教えてくれませんか?」
また、あの無言タイムが始まった。何なんだ、もう! 俺もエドガーみたくイライラしてくると、
「それは、彼女の口から言いなさい」とおじさんは言った。そうして一歩前に出た少女は、あ!
「機械! の身体!!」




