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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第八巻 声無しの桂冠詩人と賛美の名を持つ堕天使
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第六章 先へと進め!

 彼がその言葉を口にすると、光が、気配が消えうせた。それと同時に自分の身体が楽になったような感覚……楽になったというか……体が、動く! 俺は羽に力を込める。すると、翼はゆっくりと風をはらみ上下する。


 安堵で思わず顔がほころび、大きく息を吐く。乾いた笑い声が自然と口から出た。


 しかし、目の前は暗闇へと戻ってしまっていた。俺は慌ててライトの魔法を使い辺りを照らすが、白髪の男の姿は見当たらない。魔力感知をしても何も分からない。


ライトの魔法で辺りを照らされる森。俺は息をひそめる。薄暗い森は静かなまま。魔物の影はないようだ。


あの不思議な男のことが頭に浮かぶ。彼は誰だ?助けてくれたから敵ではないらしいのだが……それにあのつるの正体は?


俺は大きな声でお礼を口にした。もちろん、返事はなかった。彼は、いったい……人間ではないよな? もしかしてアンドロイドとか? でも、アーテイファクト反応もなかったし……色々と思いを巡らせつつ、自分の腕を見るとはっとした


千のチャイムを使えばよかった!! そうしたら会話ができたはずなのに! 虹のつまった指輪でもよかったかもしれない。


激しい後悔におそわれたが、どちらにしろあの時はアーティファクトの力は封じられていたのだ


俺は大きなため息を吐くと、自分が空腹だということに気がついた


商人の寝床から水筒を取りだし、蓋を開くと、口に流し込む。うまい。全身で水分を感じる。


すると、猛烈に何かを口にしたくなる。


俺はサラミのはさまったサンドイッチとチョコレートバーとクッキーとドライトマトをあっという間に胃の中へと収める。食べても食べても腹は満腹にならず、むしろ次の何かを口にしたくなる。


がむしゃらに、何だか分からない感情を発散するように、一気にかなりの量を口にしたが、俺には興奮状態が残っていた。


大きなげっぷを一つ、腹部には重み。でも、身体は休息を望んでいない。俺は祈るような思いでコンパスを取り出す。そこからは光が伸びていた。ありがたい! せっかく生きのびてもこれがダメになっていたら途方にくれるしかなかった。


眠気や疲労はどこかへ消えていた。でも、俺はどの位気を失って、拘束されていたのだろう。


進むしかない。蓮さんとスクルドがやられているわけがない。


俺は強くそう思うと、ライトで道の先を照らしながら、コンパスの光の方へと足を進める。


本当は夜の間は動かない方がいいのかもしれない。でも、今、立ち止まっているなんてできなかった。二人になんとしても、一秒でも早く会いたかった。


俺は無心で歩き続ける。無心というか、わきあがる様々な思いを考えないようにして、歩き続ける。ひんやりとした森の中。俺の足音が、草木を踏みしめ払う音が辺りに響く。


途中、何かの音がしたことがあったが、こちらを襲ってくることはなかった。 また、人や人の居そうな場所や、人が生活や野営をした痕跡も見つからなかった。


どれだけ歩いたのだろう。でも、俺は全然疲れていなかった。身体が疲労を覚えるまで、休まずに歩き続けようと強く思う。


やがて森の中が、少し、光を取り戻しているのに気づいた。どうやら朝を迎えたらしい。


それを知るとほっとして、俺は近くの大樹に背を任せ、ゆっくりと腰を下ろした。


少しだけ目をつぶり休むつもりだった。だけど、俺は魔法にかけられたように、すぐさま眠りに落ちる。


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