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廃墟の上に降り立つ太陽王<アポロ>  作者: 港 トキオ
第八巻 声無しの桂冠詩人と賛美の名を持つ堕天使
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第一章 新しい地での危機

 力をふりしぼり、何度も試みていることを性懲りもなく繰り返す。でも、結果は変わらない。体力と気力の低下で、死の影がちらつく。俺はなんとかそれを追い払う。


痛かったはずの羽の痛みが消えていることに気が付いた。自分の羽の感覚を忘れてしまったような、嫌な考えが生まれる。


自分の軽率な行為が頭に浮かぶ。でも、後悔したってどうしようもない。


炎の力も使えない状態に陥り、さらに火打石すら使えないなんて。というか、もう力を得てからそんなものは持っていない。ひんやりとしたこの地で、夜を迎えるのは恐怖だ。


俺は、パーティの仲間たちと危険な旅を乗り越えてきた。並みの冒険者では、きっと体験できないことだ。それなのに、この後出会うであろう、大きな存在と対峙する前にこんなところであっけない最期を迎えるなんて。


そんな絶望的な考えが頭をよぎる。


でも、どこか現実味がなかった。今も俺は、自分が絶体絶命の状況にあるなんて信じられない。それとも、信じたくないのかな。


しかし、物音ひとつせず、変わらない状況が続いていると、何でもいいから変化が欲しい。そんな気持ちが生まれてしまう。


冷え切って、疲労の色を強く感じる身体が、俺の小さな心の灯を、あざ笑うかのようにゆらしている。




俺達は数日前、アカデミーを出発し、ロ・キュイジヌに降り立った。幸いにもコンパスの針は、闇葉の地下墓地を示してくれた。コンパスに魔力を注いでくれたのは、ルディさん。ポータルを通り、俺と蓮さんとスクルド。ロ・キュイジヌの地に立ち、早速取り出してみた。三人の持つコンパスは、同じ方向を指していた。


その地の第一印象は、密林。スフートという真っすぐな葉っぱが生い茂る地では、確かに寒さを感じた。でも、それ以上にこの地は様々な植物が繁茂していて、その印象が強かった。


オレンジ色の人の手のような形の葉っぱを垂らす、背の高い植物。丸い実の半分が赤、もう半分が金色に光る謎の植物。眼を奪う見慣れない形の植物たちの間を通ると、地面からリザードマンの尻尾のような形をしたふくらみが生えている。これも植物なのだろうか。


 俺がそんなことを思ったまま口にすると、なぜかスクルドがそれに疑問を口にした。

「この国の生態系に異変があったのかもしれない」と。


 蓮さんは喜撰が口にした奇病のことを話題に出すと、スクルドも重々しくそれに同意する。どこかの国で、人の身体が紅玉水晶のようになって絶命するという話。何かが、起こっているのかもしれない。でも、現状では調べようがないし、スクルドがこの地に実際に足を踏み入れたのは今回が初めてだ。


 俺たちはそれ以上その話題に触れず、コンパスの指し示す方へと進んで行く。スフートのせいで、足を動かしていくと膝から下が冷える、なんとも不思議な感覚。道はそこまで険しくはないのだが、その代わり樹木のせいで場所によっては完全に空が見えない。それでも、魔物らしきものに出会っていないのはよかった。


 二時間程度歩いただろうか。蓮さんが早々に休憩の提案をした。しかしスクルドが「私は平気です」と返した。俺もまだ疲れていないし、勿論蓮さんもだろう。


 スクルドが思っていた以上に体力があるのに、不思議に感じながらも、密かに感心していた。目的地まで、二日、三日程度の徒歩なら苦も無くこなせそうだ。


 そういえば闇葉の地下墓地について、どんな所なんだろう。蓮さんの話だと、闇の者の住み家とか、悪霊やゾンビがいそうだけれども。というか、元々は誰のお墓なんだろう。そんな有名なお墓なのだろうか。


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